【ライブレポート】m.o.v.e、走り続けたことで到達したゴール

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3月16日(土)赤坂ブリッツで開催になった<m.o.v.e The Last Show ~Champagne Fight~>。この日を持って、m.o.v.eは15年に渡る歴史へピリオドを打った。いや、その言葉は相応しくない。1997年10月のデビュー以来m.o.v.eは、激変してゆく音楽シーンの最前線へ立ち、つねに"刺激的な音楽"を提示しながら、トップギア状態のまま走り続けてきた。そんな彼らの走り続けたレースのゴールが、この日だったと言ったほうが正しいだろう。

◆m.o.v.e画像

今宵のライブに足を運んだのは、m.o.v.e最後の作品となったベスト・アルバム『Best moves. ~and move goes on~』購入者の中から抽選で選ばれた人たち。これも、「m.o.v.eのことを本当に愛してくれた人たちと共に、最高のパーティを開催しながら有終の美を飾ろう」という、2人の想いのもと取られたスタイルだった。その姿勢が嬉しいじゃない。

ライブは、デジロック+ヒップホップという激しさと躍動性をミックスアップした「GHETTO BLASTER」からスタート!「攻め」な姿勢を打ち出し続けたm.o.v.eらしい荒ぶるパーティ・ナンバーに、会場中の誰もが拳を振り上げ、共に熱狂を作り始めていた。

「解散に対してのいろんな想いを何処まで燃やし尽くすことが出来るか?何時ものm.o.v.eらしく派手に演りたいと思います。最後までパーッと騒ごうぜ!」

最初のMCで語ったmotsuの言葉通り、この日のライブの軸に据えていたのが「パーティしようぜ!」という姿勢。時代の風潮を反映した楽曲を15年間届け続けてきたm.o.v.eらしく、その姿勢や歴史の変遷を、多彩な音楽の引き出しを次々と開け放つスタイルで構成。

m.o.v.eと言えば、「頭文字 D」作品と15年に渡りコラボレートを続けてきた間柄。この日も、「Raise Up」のよう激しさと疾走性を揃えた楽曲を突き付け、観客たちの感情をヒートアップせてゆく魅力を、随所に投影。軽快なディスコビート作「DISCO TIME」や、ゆったりとしたメロディアスな歌と性急なトランスビートを掛け合わせた「DIVE INTO STREAM」のような、身体も感情もハイな状態へ導くグルーヴ・ナンバーの数々も描き出せ、「Blast My Desire」や「It's Only Love」「PastDays-Strings Remix-」に描き出した、哀愁さを魅力にしたメロウな表情も今宵のメニューには組み込んでいた。
「今夜は、m.o.v.eの描いてきたいろんな時代を遡りながら、ダンス・ミュージックで踊ろうぜ」

motsuの発言を投影するように、スペイシー/トランシーな「words of the mind-brandnew journey-」や「come toghter」、アタックの強いリズムが体感的な高揚を与えた「blue jewel」と続いたブロックでは、m.o.v.eの大きな魅力となっていたClub Styleな音楽を繋げ、会場中を大箱Clubに変えてゆく様を描き出していった。

それまでのバンドを軸に据えた演奏から一転、DJ Remo-conを迎えたコーナーでも、「FLY HIGH」や「PLANET☆ROCK」などのトランス/ハウス系ナンバーを魅力に、観客たちをHIGHな気分へ導きながら踊らせていた。このブロックでは、yuriが着替えてる最中、yuriの声を元にしたボーカロイドLilyにmotsuが絡む形で、1st~2ndシングルの楽曲「ROCK IT DOWN」と「around the world」をメドレー披露する場面も。m.o.v.eの歴史の中にある側面を、こんな遊び心を持って見せてくれるとは…。

いつもmotsuがMCを担当してきたm.o.v.eだが。この日は、yuriも胸の内に秘めた想いを告白。「m.o.v.eを演ってきて一番嬉しかったのが、応援してくれるみんなも含め、たくさんの出会いがあったこと。15年間やってきた中、つらいこともいっぱいあったけど、応援してくれるみんながm.o.v.eの歌を待っててくれました。みんながm.o.v.eを支えてくれたからこそ、ここまで進んでこれました。みんなの存在が、わたしの勇気です。この15年間、本当に素晴らしい景色を見せていただきました。今日も、最高の景色を見ることができて胸がいっぱいです」

当初は2人とも、終始アゲアゲな状態のまま、笑顔で幕を閉じてゆく意識で臨んでいた。でも、本気でm.o.v.eの歌を愛し、熱狂してくれる仲間たちを前に、2人とも、心の涙を抑えることは出来なかった。事実、この日のyuriは、込み上げゆく想いから何度も声が震える場面があった。しかし、ファンとともに熱狂を分かち合ってこそがm.o.v.eらしさ。その姿勢を証明するように…。

終盤「Ignite The Fire」を通し、ふたたびm.o.v.eは、アクセル全開で過激に攻めだした。会場中から熱狂的なコールが飛び交った「Blazin'Beat」では、観客たちが一斉に飛び跳ねれば、ソニックビートが炸裂した「SUPER SONIC DANCE」が流れる頃には、場内はすっかり熱狂的なパーティ会場へと染め上げられていた。

最初のアンコールでは、2人の気持ちを、メロウな歌を通して代弁。「KEEP ON MOVIN'」を通し、旅立つ気持ちを宣言すれば、m.o.v.eとした最後のレコーディング楽曲となった「夕愁想花」では、応援してくれた人たちへの感謝の想いを、歌を通し感情たっぷりに届けていった2人。

でも、しんみり終わるのは"らしくない"。やはり、最後までパーティ気分を心底楽しんでこそが"m.o.v.eらしさ"。感情を武者震い立たせる「DOGFIGHT」を通し、最終コースをアクセル全開で爆走し出したm.o.v.eは、最後の最後に、m.o.v.eの人気を決定づけたハイエナジーな和製ユーロナンバー「Gamble Rumble」を披露。観客たちも一緒にサビを唄いながら、歓喜の想いを胸に熱狂した。舞台上では、ダンサーの2人が大きなチェッカーフラッグを振り続けていた。もちろん、motsuのモモ上げダンスも何時も以上に上がっていた。

15年間走り続けたm.o.v.eのレースは、熱狂と興奮の歓声を全身に浴びながら、最高の形でゴールを迎えられた。最後に「頭文字 D」ナンバーを立て続けに演奏したことや、チェッカーフラッグを受けフィニッシュを飾った姿などは、まさにm.o.v.eらしい姿だったと言える。締めくくりとして、motsuが頭からシャンパンをかぶるシャンパンファイトを実施。この15年間、「走り」「攻め」に徹したm.o.v.eらしい最後の飾り方じゃないか。

この日の模様は、DVD『m.o.v.e The Last Show ~Champagne Fight~』として6月5日(水)に発売されることも決定。m.o.v.eという最高のアーティストの最高のライブを、ぜひ、生涯の宝物にしてもらえたら幸いだ。

そして最後に。彼らが選んだ答えに対して、僕らが言うべきことは何もない。2人が選んだ意志を真摯に受け止めながら、m.o.v.eが築き続けてきた結成からの15年半という歴史の歩みを一生記憶に刻み続け、その想いを、事あるごとに後世へ伝えてゆくことも、きっと大事なことなんだと思う。motsuは「この日のことを一生ネチネチと覚えててやる」と舞台上で語っていたが、その想いは、この日、会場に足を運んだ人たちの誰もが思っていたこと。

約3時間、次々と舞台上から放たれる時代を彩った歌の数々に、様々な記憶を巡らせ、想いと想い出を噛みしめながら熱狂し続けたライブだった。この日披露した27曲でm.o.v.eの15年間を語り尽くせたとは思っていないが。しかし、本気で感情をぶつけあいながら走り続けた15年間の証を、27個の想いから感じ取れたのは間違いない。

m.o.v.eとしてのレースは、ひとまずチェッカーフラッグを受けたわけだが。しかし、motsuとyuriのアーティストとしてのレースは、けっしてゴールを迎えたわけではない。次に2人が、どんなレースに参戦していくのか?!その転戦先を楽しみにしながらも。ひとまず、この言葉を送りたい。「15年間の無謀なレース、最高に刺激的だったよ」と。

TEXT:長澤智典
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