ヤマハがエルトン・ジョンのライブをアメリカから世界11カ国に配信、RemoteLive技術で現地の演奏を目の前のピアノがリアルタイムに再現

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ヤマハは、1月26日(土)、Elton John(エルトン・ジョン)によるコンサート「Live Around the World」の模様を、RemoteLive(リモートライブ)技術とDisklavier(ディスクラビア)を使った生中継で、米国カリフォルニア州アナハイム市より世界11カ国23会場への配信を行った。日本国内では3カ所で中継されたが、本稿では東京・六本木テレビ朝日の多目的スペース「umu」で行われた中継の模様をお伝えする。


▲RemoteLiveは、音楽と映像と鍵盤の動きを、同時に遠隔地に届ける技術。今回はカリフォルニア州アナハイムから東京へ映像と演奏データなどが届けられた。
ヤマハの創業125周年記念事業の一環としてアメリカ・カリフォルニア州で行われたコンサートに、スペシャルゲストとして世界的アーティストであるエルトン・ジョンが出演。この模様を「Elton John‘Live’ Around the World」と題して生中継を行ったのが今回のイベントだ。世界11カ国23会場のうち、日本国内はヤマハの浜松本社、ヤマハ銀座ビルの1Fポータル、そして六本木のumuで実施。銀座と六本木は一般の来場者にも公開された。

今回の中継に使われたRemoteLiveは、実際にライヴを行っている会場からインターネットを介して、映像・音声・演奏情報(MIDI)を同時に多拠点に配信するヤマハの技術。遠隔地に置かれたピアノの鍵盤やペダルは、ライヴ会場で演奏されたとおりに動き、まるで目の前でライブが行われているようなピアノの生演奏を楽しむことができるというものだ。

この演奏情報を受けて実際に音を出すのがディスクラビア。ヤマハ独自の高精度デジタル制御システムで鍵盤やペダルの動きを正確に再現することで、演奏情報の忠実な録音・再生ができる自動演奏機能付きアコースティックピアノだ。会場のステージにはこのディスクラビアがセッティング。開演を待つ間、時折テストと思われる音がポロポロと鳴り、鍵盤が沈む様子に来場者は真剣に見入っていた。

開始予定時刻の15時20分には六本木会場には事前申込みで整理券を入手した100名以上の一般観覧者が着席。現地のコンサートの進行状況により、中継の開始が遅れる可能性が事前にアナウンスされた。現地でのコンサートはTOTOをはじめ多数のアーティストが出演するもので、エルトン・ジョンはその最後を務める。中継開始を待つ間、会場のスクリーンには以前のライヴ映像やミュージックビデオが流された。そして、予定より約50分押しでスクリーンの映像が切り替わり、アナハイムでのライブの模様が映し出される。いよいよエルトン・ジョンの登場だ。


▲Hyperion Theaterの模様。
エルトン・ジョンがピアノを弾き出す。1曲めは「Your Song」。イントロが鳴ると同時に会場のピアノ=ディスクラビアの鍵盤が沈み、ペダルが踏み込まれる。エルトン・ジョンが現地で弾いているとおりに、目の前のピアノが動き、音が鳴っているのだ。その様子はまるで透明人間が弾いているかのよう。会場で実際に聴ける音は、現地で歌うエルトン・ジョンの声とバックを務めるオーケストラの音。そして、目の前のピアノ。スクリーンに映し出される映像と音とのずれはいっさいなく、ディスクラビアの動きが完全に同期しているのがわかる。


▲ステージ上のディスクラビアには鍵盤とペダルの動きがわかるよう2台のカメラが向けられている(写真左)。現地の演奏に合わせて鍵盤が動くのがわかる(写真右)。

▲ステージ脇の2台のモニターには、鍵盤とペダルの動きが確認できる映像が映し出されている(写真左)。ディスクラビアは自動演奏機能付きのアコースティックピアノで、見た目はピアノと変わらない(写真右)。
会場のステージ横には2台のディスプレイモニターが用意され、ディスクラビアの鍵盤とペダルが大きく映しだされる。これは会場後方の席ではディスクラビアが見にくいことからの配慮。どのようなタッチでエルトン・ジョンが弾いているかがしっかりと確認できる。スクリーンのエルトン・ジョンの演奏と、鍵盤&ペダルの映像を交互に見比べる人が多かったのが印象的。「Tiny Dancer」、「Sorry Seems To Be The Hardest World」、「I Guess That’s Why Call It The Blues」と曲が終わるたび、現地での熱狂的な盛り上がりと対照的に日本の会場では演奏をかみしめるように静かに拍手が起こる。圧巻はラストの「Rocket Man」。ピアノとボーカルのみながら熱いプレイが終わると、会場には「おー」という歓声と大きな拍手が巻き起こった。


▲ディスクラビアの鍵盤左側下のディスプレイには「Remote Live」「Recieve」の文字が表示されている(写真左)。写真右は会場内に掲示されたポスター。「Celebrating Yamaha's 125th Anniversary ELTON JOHN LIVER AROUND THE WORLD History will be made」「『リモートライブ』グローバル配信」と書かれている。
現地の都合により開演こそ遅れたものの、予定どおり全5曲、約35分の演奏が日本の会場にも確実に届けられた。演奏のすばらしさとともに、RemoteLive技術にも感動させられた今回のライブイベント。ヤマハでは、今後も同様の企画を続けたいとのことなので楽しみにしたい。

なお、今回の中継が一般の観覧者向けに公開されたのは日本と韓国で、そのほかのオーストラリア、マレーシア、シンガポール、ロシア、イギリス、ドイツ、カナダ、アメリカなどは現地のヤマハ、楽器店の関係者などに公開されたという。また、パリのディズニーランドは開催時刻が開演前ということで、ヤマハの現地法人とディズニーランドのスタッフがライヴの模様を観覧したと紹介された。このほか、アメリカのディスクラビアユーザーの一部に向けてベータテストとして数百人単位で配信が行われたという。今後の展開については、ヤマハの現地法人である「ヤマハ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Yamaha Corporation of America)」では、2013年4月よりアメリカ国内向けに、今回のライブ配信と同様のRemoteLive技術とDisklavierを使った有料配信サービスを開始する予定としている。

◆プレスリリース
◆ヤマハ創業125周年記念コンサート エルトン・ジョン 「Live Around the World」
◆ヤマハ
◆BARKS 楽器チャンネル
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