nano.RIPE【インタビュー】扉を開き壁を壊した先にあるものを詰め込んだアルバム『プラスとマイナスのしくみ』
アニメ「花咲くいろは」「人類は衰退しました」などの主題歌を手掛けていることでも知られている三人組のバンドnano.RIPE。2ndアルバム『プラスとマイナスのしくみ』は、ライヴバンドであることを自負する三人らしい作品に仕上がった。特に悩み多き思春期を過ごしている人は、きみコの歌詞に共感必至の会心作だ。バンドを代表して、ヴォーカル&ギターのきみコにアルバムについての話を聞いた。
◆nano.RIPE『プラスとマイナスのしくみ』~拡大画像~
きみコ(Vox & Gtr)
ササキジュン(Gtr)
アベノブユキ(Bass)
■決めつけてしまうような歌詞は書けない
■聴いた人が考えるスペースを残しておきたい
――結成当初はきみコさんとササキジュンくんの二人だったんですね。
きみコ:2004年からnano.RIPEとして活動を始めたんですが、もともとは高校時代に組んでいたバンドで、最初は4人だったんです。でも、進学や就職のためにバンドを抜けたりして、メンバーチェンジが何回かあって。それが前身のバンドですね。3年前にベースのアベノブユキが加入して、去年、ドラムが脱退して、今の3人になりました。
――じゃあ、音楽遍歴にはどんな変遷があるの?
きみコ:音楽が好きになったきっかけはスピッツなんです。そこからインディーズのギターロックバンドを聴くようになって。下北系というか。
――LOST IN TIMEとか?
きみコ:そうですね。LOST IN TIMEはすごく聴きました。nano.RIPEが今のスタイルに転換するときに、LOST IN TIMEを聴いていて、「こういうのがやりたい!」って思ったんですよ。その前まではハンドマイクで唄っていたので、ポップで飛び跳ねながら、クルクル回りながら唄うような曲が多かったんだけど、だんだんエモーショナルなものに変わって行ったきっかけがLOST IN TIMEだった、っていうくらい聴いていました。あと、去年リリースした1stフルアルバム『星の夜の脈の音の』でスピッツの草野マサムネさん、LUNKHEADの小高芳太朗さん、メレンゲのクボケンジさんにコメントをいただいたんですけど、この3人があたしの中で一番影響を受けて来た三大アーティストですね。
――アルバム『プラスとマイナスのしくみ』を聴いていると、そういうルーツも見えるし、ルーツを咀嚼して出て来たオリジナリティもあって。曲調もいろいろありますね。
きみコ:今回は特に広がっていますね。いろんなことに挑戦したので。1stは、インディーズ時代の曲で、ライヴでも演っていたものをもう一度今のメンバーで新たに録り直したベストアルバムのような一枚だったのに対して、今回は、この一年間で、新たにnano.RIPEとして開いた扉というか、壊せた壁みたいな、その先のものも詰め込めた一枚になってるんじゃないかなと思います。
――それを、この「プラスとマイナスのしくみ」というタイトルでまとめたのはどうして?
きみコ:アルバムタイトルは一番最後に決めたんですけど、その前に「ナンバーゼロ」っていう曲があって。収録曲の中で一番最後に書いたのが「ナンバーゼロ」だったんですが、アルバムの肝となる曲だなぁと思ったので、アルバムタイトルも、この曲にまつわる言葉にしたいなぁと。最初は「ナンバーゼロ」っていうタイトルを、そのままアルバムのタイトルにしようかって話も出たんですが、やっぱり違うタイトルをつけたいってことで考えて。ゼロにまつわる言葉を探していったら、プラスとマイナスっていう言葉が出て来て。さらにいろんな風に捉えてもらいたいということで「しくみ」という言葉をつけて。『プラスとマイナスのしくみ』っていう、ちょっと不思議な感じなんですけど、どんな風にでもとっていただいていいんです。
――哲学的な感じですよね。
きみコ:そういうのが好きなんです(笑)。
――本を読むのが好きでしょ?
きみコ:大好きです。
――歌詞を見ていると、そういうのが伝わりますよね。「ナンバーゼロ」の一行目とか「3回転じゃ足りなくて 4回転目に入る夜」とか、歌詞というよりも詩的で。
きみコ:もともと音楽を始める前は、音楽とはまったく関係なく、誰に見せるわけでもなく、ずっと詩を書いてたんですよ。小学校の時から詩集を出したいと思っていて。今もまだ夢の一つなんです。その辺りは歌詞にもかなり反映されているというか。
――聴いた人の感性にゆだねるものが多いですよね。
きみコ:決めつけてしまうというか、言い切ってしまうような歌詞が書けなくて。自分の中でも人生の答えは見つけていないし、寝て起きたら、昨日思ってたことが変わってしまったりすることがすごくあるので。「こうだ!」とか、「頑張れ!」とか、「大丈夫!」とか、そういう歌詞は書けないんですよ。「憶測が多いよね」って言われるんですが、自分自身もまだわからないから憶測っていう感じの表現になるんですよね。あとは聴いてくれる人に対して、考えるスペースを作りたい。その人なりに捉えてもらえるような、そういうスペースを残しておきたいっていうのは意識して書いています。
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