【連載】nano.RIPE きみコの「恋だの愛だの」#1

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ご無沙汰しています。
nano.RIPEのきみコです。

しばらく空いていたあいだにイロイロなことがありました。
何かを辞めたり、何かを始めたり、何かを疑ったり、何かを信じたり。

せっかくあいだが空いたのだから、という言い方は言い訳じみていて情けないのですが、心機一転、テーマを変えてみようと思います。

テーマはなんと…

「恋だの愛だの」

2月3月に仲の良いバンドと2マンツアーをしました。
そこで、きみコには男っ気がなさ過ぎるとあちらこちらで言われました。
7年、8年の付き合いのバンドマンにもそんな風に思われていたなんて。
いや、そりゃあ、平均よりはだいぶ男勝りかもしれない。それでも性は女の子。
恋のヒトツやフタツはしてきました。いや、もっとしてきました。
そこから生まれたウタだってたくさんあります。

あたしはアイドルじゃない。
「初恋は幼稚園の先生ですっ♡」なんて答えるキャラでもない。
ならば赤裸々に語ってしまおうじゃないか。
「いや、きみコのそういう部分なんて知りたくない」という方はココまでにしていただいて、何はともあれ始めたからにはしばらくこの方向性で突き進みます。
コラムというよりはエッセイに近くなるのかな。何事も挑戦。


ということで、初回のテーマは「失恋」


初めて失恋をしたのは高校1年生の頃。
こんなにもツライものなのか、と、実家のトイレにこもってひたすら泣き続けたキオクがあります。
今でこそ当たり前に自分だけのスペースがあるけれど、あのときは泣く場所を探すのもひと苦労だったっけ。
今、世界でイチバン不幸なのは絶対にあたしだろうって思っていた。
「死にたい」ではない。でも「生きているのがツライ」ではあった。

失恋って、ただただ大切な人を失うのではなく、自分の存在価値をも否定されている気分になってしまう。
「おまえなんか要らねえよ」って、そういう声が何日も何日も耳元で聞こえて離れない。
好きだった人だけでなく、もう誰からも、というかこの世界から必要とされてないんじゃないかって被害妄想にさえ囚われる。

何をしても楽しくない。何を食べても美味しくない。何も感じない。何も。
そんな日々がしばらく続いた後、ふと思うのです。

「こんな思いをしている人が自分以外にもいるのかもしれない」
「こんな思いを乗り越えて笑えている人がいるのかもしれない」
「こんな思いをせずに大人になる人の方が少ないのかもしれない」

だったらあたしも乗り越えられるのか。
いや、あたしのココロの傷は他人のそれとは比べられない。
あの人に嫌われたのならもう生きている意味なんてない。

という、いわゆる「重たいオンナ」。
このあたりも、みなさんのイメージとだいぶ違うのでしょうか。
それでも、今こうしてこんなコラムを書いているということは、つまりは乗り越えてきたということになるわけなのですが。

失恋は風邪とよく似ている。
真っ只中にいるとこんなにツライものだったっけ、と思うのに、時が経てばそんなキモチは消えてしまう。
実際、失恋したトモダチのハナシを聞いて自分もココロを痛めているつもりでいたって、他人の痛みなんて本当にわかるわけがない。
そんなことはもう、恋愛に限ったハナシではないんだけれど。

と言いつつも、消えてしまうまでの道のりがとにかく長く険しい。
荒れ果てた広野を1人歩き続けたり、あり得ないほどの天変地異でも起きたんじゃないかっていうような明けない夜があったり、まさに崖っぷちを絵に描いたような場所で足が竦んで動けない日もある。
せめて導いてくれる人の手があれば、と思うときに浮かぶのは、ついこの間まで繋いでいた大きな手。

失恋にイチバン効くクスリは新たな恋だなんてよく言うけれど、そううまくいくもんか。
どこへ行ったってその人の影や香りが残っていて、忘れかけていた出来事をあっという間に思い出したりする。いや、強制的に思い出させられる。
五感をすべてシャットアウトして無心で歩いているつもりなのに、思い出とやらは器用に姿形を変えて、何もかもをくぐり抜けてカラダの中に入り込んでくる。
そして、大抵の場合、それは元よりずっとずっと美しい。
美しいからこそ受け入れてしまう。入り込んでくる、なんて言いながらも、実は少しだけどこかに隙間をあけているのは自分自身。
忘れないようにっていうのはすごく難しいことだと思っていたのに、こういう瞬間に気が付く。忘れることの方がずっとずっと難しいんだってこと。
その根本には、本当は忘れたくないっていう気持ちが潜んでいるということ。

それでも、生き抜くしかない。
流れている景色に流されて、世界の色が少しずつ変わるのを眺めたり眺めなかったりしながら、待つしかない。時が過ぎるのを。もしくは、新たな恋とやらを。

忘れなくてもちゃんと消える。すっかり消えなくても段々と薄くなる。
カラダもココロも、傷の仕組みはきっとおんなじだ。

このコラムを書きながら、あたしは6年前に亡くなったおじいちゃんのことをずっと思い出している。

nano.RIPE Vo.きみコ

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