SEAMO【インタビュー】この歌は「みにくいままで飛ぼうと思っている」

レーベル移籍第二弾シングル「汚れた翼で」は、プロデュースに初顔合わせのジョルジョ・カンチェーミを起用。ゆったりとしたビートからアッパーなエレクトロ・サウンドへ、さわやかな疾走感と浮遊感覚がリスナーを誘うのは、5分30秒のめくるめく空中遊泳体験だ。SEAMOの王道メッセージソングでありながら新しさをたっぷり詰め込んだ、ドラマティックなサマー・チューンの代表作がまた一つ生まれ落ちた。

◆SEAMO「汚れた翼で」～拡大画像～

──レーベル移籍のタイミングではお会いできなかったので、ここであらためて聞いてもいいですか？　移籍して、心機一転となった今の心境を…。

SEAMO：今朝(7月24日)、イチローがヤンキースに移籍したニュースを見て、「もしかしたら僕と近いことを考えてるんじゃないかな？」って思ったんですよ。「若い奴らのために、僕がここにいないほうがいいと思った」というようなことを言っていて、「わかるぞ、その気持ち」と。僕も、ずっと一緒にやってきたスタッフたちは今や偉い人になっていて、若い子たちが僕の担当になるんですけど、その子たちは僕を目上の人として接してくるんですよね。それが嫌だというわけじゃないんですけど、もっと対等に言い合える立場にならないと、お互いのためにも良くないと思うし、それが環境を変えたいと思った理由の一つです。だからイチローの発言を聞いて、すごく感慨深かったんですよね。

──SEAMOさん、守りに入るタイプじゃないですからね。常に攻めの姿勢だから、今回の移籍もきっと前向きな理由があるんだろうなと思ってたんですよ。

SEAMO：イチローは常にバッティング･フォームを微妙に変えて、年をとって少しずつ体力が衰えた自分に適応するために、細かい調整をしていると思うんですよ。それで毎年挑戦し続けることによって、あれだけの成績を維持できている。僕も年を重ねていくなかで、毎日バットを振り続けて、あがいて、やっと今の状況を維持できている。もしもバットを振らなくなったらすぐに落ちて行くと思うし、チャージし続けてやっとキープできるということを、ものすごくリアルに感じます。実はイチローはあまり好きなタイプの野球選手ではなかったんですが、今回のことをきっかけに、本当の腹の底を聞いてみたいと思いましたね。

──移籍して第一弾のシングル「君に1日1回「好き」と言う」から、制作スタッフもガラリと変わりました。

SEAMO：ビートメイカーに関しては、今までやった人とやらないということではないです。ただこのままでは終わりたくないし、新しいノウハウや新しいパターンを見てみたいので、「とりあえずいろんなものに乗っかってみよう」というのがテーマなんですよ。「僕をどう料理してくれるんですか？」というものが見てみたいという、新しいレーベルと新しいスタッフに期待したのはそういうところで、「これやるの？」と思うこともとりあえずやってみてから答えを出そうということですね。

──前作はSEAMOさんらしい、大人のラブソングでしたね。

SEAMO：1日1回「好き」と言う、その行為だけ見ると若い行為に思えるし、「大人になるとムリでしょ」と思うなかで、もう一回りすると、僕も考え方が変わったんですよね。去年は震災もあったし、車の事故も多かったし、まさか自分の大切な人が明日いなくなるとは誰も思わないなかで、毎日悔いのないようにしておかないと後悔するだろうなと思ったので。僕が若い子たちのラブソングを聴くと、「好きだ、愛してる」ということを歌った歌がすごく売れてるんですけど、なんで好きなのか？という理由まで歌詞に落とし込んでるものはなかなか無いんですよ。フックはわかりやすいし、タイトルもキャッチーだけど、理由が書いてない。だから僕の前の曲は、わかりやすいタイトルですけど、なぜ1日1回「好き」と言わなければいけないのか、ちゃんと理由を書こうということは心がけましたね。

──あの曲はきっと、これからじんわりと広がってゆくタイプの曲だと思ってます。

SEAMO：ビートメイカーも新しい人だったので、自分の引き出しにない譜割りやメロディ感をやらされた…というとおかしいけど、最初は全然自分のものにできなくて大変でしたけど、すごく新しいものができたと思ってます。

──そして移籍第二弾シングル「汚れた翼で」。これも新しさをすごく感じました。

SEAMO：これも、全然自分の引き出しになかったですね(笑)。最初に彼（ジョルジョ・カンチェーミ）と仕事をする時に、いくつかビートを上げてくれたんですけど、なぜこの曲を選んだかというと、ブレイクビーツみたいに全然違う曲が3つも4つも入っている展開が素晴しくて、「これがいい」と言ってやらせてもらったんですね。

──ジョルジョさんとは、以前から？

SEAMO：昔から知ってはいたんですけど、DELiGHTED MINTやSo’Flyでの活動を通して、ビートメイカーよりもラッパーとしての印象が圧倒的に強かったですね。会えば挨拶するぐらいの知り合いではあったんですが、周りの人に「一回一緒にやってみたほうがいいよ」ってすごく薦められて。拒否していたわけではないんですけど…本音を言うと、ラッパーの人にディレクションされるのは、僕のプライドが許さないところがちょっとあったんですね。同業者にディレクションされることで、自分が自分ではなくなってしまうんじゃないか？という気持ちがあったんですけど、彼も同じレーベル所属で、スタッフも近くて、「まずは会うところから始めてみない？」と言われて、会ってみたら…百聞は一見に如かずじゃないですけど、会ってみないとわからないことがいっぱいあって、すごく、しっくりきたんですよね。中身は日本人で、音楽的な部分は外国人ぽくて、すごく良かったです。お互い野球好きで、テレビでメジャーリーグ中継をつけっぱなしというところも似ていたし(笑)。

──このトラックを聴いた時に、リリックのテーマがパッと浮かんだんですか。

SEAMO：すごいざっくりしたものですけど、彼が最初に歌を入れていたんですよ。それがラブソングっぽいもので、スタッフも僕がラブソングを書いてくると思ったらしいんですけど、僕がこのトラックに感じたのはラブソングじゃなかったんですよね。なぜこのテーマになったのかというと、最近のラップをやる子はすごくオシャレですけど、昔は「ラップする人」って一目でわかるようなファッションだったじゃないですか。でも今はセレブリティがあって、スタイリッシュで、優男（やさおとこ）で、髪型がアシメだったりとか(笑)。そんなのがすごく増えててるけど、僕らの時代はアウトローが多くて、楽器も弾けないし音楽理論もわからないけど、生き様をラップしてやるみたいな、ダイナミックな人たちが多かったから。今は楽器も弾ける、歌もうまい、音楽的キャリアのある人たちがラップやヒップホップをチョイスするケースが増えているなと思って、「オレたちの時代はもっと泥にまみれた雑草だったよな」ということを僕なりに言葉にしてみたら、こういう感じの歌になりました。ちょうど移籍のタイミングでもあったし、オレはまだチャレンジャーだという気持ちもこもってます。音的にも、夏フェスで歌うことを想定して、突き抜けた感覚を意識して作りました。

──リリックにも出てきますけど、「みにくいアヒルの子」という裏テーマもあって。

SEAMO：そうですね。「みにくいアヒルの子」は実は白鳥だった、ということになるんですけど、この歌は「みにくいままで飛ぼうと思っている」という歌ですね。

──そのへんのニュアンスは、ミュージック・ビデオをチェックすればばっちり伝わると思います。

SEAMO：バレリーナを出すという案が出てきた時に、映画『フラッシュダンス』の練習風景を想像して、それを監督に話したりもしました。

──これはSEAMOさんがずっと歌ってきたテーマの一つだと思うんですけど、今だからこその説得力があると思います。

SEAMO:このぐらいの年になると、同じようなテーマ…たとえばラブソングや「まだまだ頑張るぞ」という曲は何度となく歌ってきてるんですが、ラブソングでもただ「大好きだ」と言うのと、「1日1回「好き」と言う」のとでは焦点の絞り方が違うし。「オレは上がっていくぞ」という曲でも、「みにくいままで飛んでやる」というふうに焦点を絞ってみる。たくさん同じようなテーマで書いているなかで、ピンポイントでテーマを絞って書くのが今のやり方なんですね。それはたくさん書いてきたからこそできることだし、やらなきゃいけないことだと思ってます。焦点を絞って書くと、また違う見え方になるんですよね。

──この夏は6回目の＜TOKAI SUMMIT＞開催、そして夏フェス出演。その後の予定は？

SEAMO：次のリリースはまだ決まってないですけど、11月にはツアーをスタートさせます。年をまたいで１月末まで、全国ツアーを行います。ぜひ、沢山の方に来て頂きたいと思っています。

──SEAMOさんもイチローもこれからが面白い…という締めでいいでしょうか(笑)。

SEAMO：そうですね(笑)。ほんとにね、「僕と同じこと言ってるな」って思ったんですよね。馬鹿ですけど(笑)。でもまだまだ、僕も頑張りますよ。

取材・文●宮本英夫


「汚れた翼で」
8月8日(水)リリース
初回限定盤（CD＋DVD）：UPCH-9762 \1,680（tax in）
通常盤（CD）：UPCH-5760 \1,260（tax in）
1.汚れた翼で
2.GET A CHANCE feat. BRIDGET, あぬえぬえ∞ぶれいん
※初回限定盤DVD内容：「汚れた翼で」Music Video収録

＜SEAMO LIVE TOUR 2012(仮)＞
11月23日(祝・金) 宮崎WEATHER KING
[問]GAKUONユニティ・フェイス 0985-20-7111
11月25日(日) 鹿児島CAPARVO Hall
[問]K&Mコーポレーション 099-223-7710
12月 1日(土) 長野 CLUB JUNK BOX
[問]サウンドソニック 076-291-7800
12月 2日(日) 金沢EIGHT HALL
[問]サウンドソニック 076-291-7800
12月 8日(土) 仙台Rensa
[問]ノースロードミュージック 022-256-1000
12月15日(土) 高松オリーブホール
[問]DUKE高松 087-822-2520
12月16日(日) 松山 SALONKITTY
[問]DUKE松山 089-947-3535
12月22日(土) 福岡DRUM LOGOS
[問]キョードー西日本 092-714-0159
12月23日(日) 広島クラブクアトロ
[問]ユニオン音楽事務所 082-247-6111
2013年 1月13日(日) 品川ステラボール
[問]キョｰドー東京 0570-064-708
2013年 1月19日(土) なんばHatch
[問]夢番地大阪 06-6341-3525
2013年 1月25日(金) Zepp Nagoya
[問]ZOOMenterprise 052-290-0909

＜"真夏の3番勝負"2012【Road to 武道館】＞
8月9日(木)渋谷CLUB QUATTRO
出演：SPYAIR vs SEAMO
[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

＜『汚れた翼で』発売記念スペシャルライブ＆握手会＞
8月10日（金）トレッサ横浜南棟1Fイベント広場
19:00イベント start
8月12日（日）イオンモール岡崎 1Fセントラルコート
13:00 イベント start
8月12日（日）アスナル金山 明日なる！広場
18:00 イベント start
※詳しくはオフィシャルHPへ

＜HOME MADE 家族 presents HOTな家族の夏祭り!～水着なの?浴衣なの?ねぇどっちが好きなの?!～＞
8月11日(土)日比谷野音 東京都千代田区日比谷公園1-5
http://hibiya-kokaido.com/yaon_flame.html
出演：SEAMO / HOME MADE 家族 / 九州男 and more...
[問]HOT STUFF PROMOTION TEL:03-5720-9999

＜FM FUKUI BEAT PHOENIX 2012＞
8月18日(金)福井フェニックスプラザ(福井県福井市)
出演：SEAMO / JASMINE / Def Tech / BRIDGET / BENI / Ms.OOJA(50音順)
[問]FM福井 0776-21-2100(平日9:30～17:00)
website:http://www.fmfukui.jp

＜SOUND MARINA '12＞
9月1日(土)/2日(日) ※2Days開催
広島グリーンアリーナ(広島市中区基町4番1号)
http://www.sports.pref.hiroshima.jp/
出演：
9月1日(土)
SEAMO / 加藤ミリヤ / 九州男 / 小泉今日子 / SCANDAL / back number / MEGARYU / 持田香織 / SHUN(オープニングアクト) ※五十音順
9月2日(日)
アンジェラ・アキ / 小田和正 / さかいゆう / スキマスイッチ / スターダスト・レビュー ※五十音順
公式HP：http://sunmari.jp
[問]TSS事業部 TEL:082-253-1010 (平日10:00～18:00 土・日・祝日休み)

＜JUPITER MUSIC FES 2012 ～Is Back in KIJIMA～＞
9月23日(日)別府・城島高原パーク(ジュピターウッドパワースタジアム)
大分県別府市城島高 原123番地
出演：SEAMO / GILLE[NEW] / SM☆SH[NEW] / ソナーポケット
TSUYOSHI[NEW] / Ms.OOJA and more!!
[問]GAKUON ユニティ・フェイス 0985-20-7111 (平日:10:00～19:00)

＜(エフエム鹿児島開局20周年イベント)20th ANNIVERSARY μFM presents 音力祭 2012＞
9月28日(金)鹿児島アリーナ
出演：SEAMO / AI / 中孝介 / カサリンチュ / Civilian SkunK / ソナーポケット and more (順不同)
[問]K&Mコーポレーション TEL:099-223-7710

＜家族 Fes. 2012＞
10月13日(土)ラグーナ蒲郡 ラグーナビーチ(大塚海浜緑地)
〒443-0014 愛知県蒲郡市海陽町2丁目39番
http://www.laguna-gamagori.co.jp/park/top.html
出演者：SEAMO / 九州男 / つるの剛士 / HOME MADE 家族 / Ms.OOJA / lecca 他(50音順)
[問]メ～テレ イベント事業部
052-331-9966(祝日を除く月～金10:00～18:00)
家族 Fes. 2012 オフィシャルサイト
http://kazoku-fes.com/

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