【BARKS編集部レビュー】図太くド迫力の音圧・ペダルで歪み量のコントロールも可能な新ギターアンプGA-212

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このところ、アンプやエフェクターなど、ローランドのギター関連製品は面白いものばかりだ。これらの製品に共通しているのは、ローランド独自の“COSM技術”が搭載されていることだ(COSMとは、楽器の素材や回路、さらに電気的、電子的な影響、そして空間特性も含め、考えられる様々な要素をDSP処理し再現するローランド独自の技術)。アンプやギターの音色のカギを握る物理的な特性をモデリングするCOSMは、ローランドが長い年月をかけて熟成してきたもの。それだけに、非常に完成度が高い。ギターアンプのCUBEシリーズやエフェクターのGT-100では、ビンテージからモダンなハイゲインまで様々な著名アンプの音が出せるし、フェンダーと共同開発したギターのG-5では、色々な定番ギターの音が出せる。どれもサウンドはとてもリアル、弾いていて心地よいものばかりだから、人気が出るのもうなずける。


今回登場した新しいギターアンプのGAシリーズにも、もちろんこのCOSM技術が搭載されている。しかし、その方向性はこれまでのCOSM搭載製品とはちょっと違う。特定のアンプやギターの音をモデリングしたものではない。内蔵DSP(デジタル処理を行なうプロセッサ)のパワーのすべてを、アンプの性能を追求するためにフルに使用したという。言ってみれば、ローランドが現在理想とするアンプをモデリングした、オリジナルのデジタルアンプなのだ。

心臓部には、歪みや音色などの特性を連続的に変化させることができる“プログレッシブ・アンプ”を搭載し、クリーンから過激な歪みサウンドまで、幅広い音を作り出せる。また、つまみには設定位置が瞬時にわかるLED指標がついていることや、音色の設定を保存できるチャンネルが4つ装備され、ボタンで切り替え可能になっていることなど、音色の作成や切り替えはとても素早く行なえるよう工夫されている。さらに2系統のエフェクトループや、複数台のGAシリーズを連携させるリンク接続も可能になっている。“ギタリストの感性に響くサウンドと直観的な操作性”という設計コンセプトのとおり、音作りの幅広さと操作性が両立されていて、レコーディングでもライヴでも使えるオールラウンドな新しいアンプといえる。

GAシリーズには、出力100W、30cmスピーカー1発のGA-112と、出力200W、30cmスピーカー2発のGA-212がラインナップされているが、今回は出力200WのGA-212を試奏してみた。

■シンプルながら使い勝手に優れたフロントパネル


▲2ボリューム、3トーン、PRESENCE、REVERB、MASTERというシンプルな構成。より強く歪ませるBOOSTボタン、中域ブーストのMID BOOSTボタンもある。つまみに装備されているLEDでセッティングが一目瞭然。

それほど大型のアンプではないGA-212だが、CUBEシリーズと同様にがっちりとした堅牢な造りで、重さは32kgとずっしり重い。ただし底面に取り付けられるキャスターも付属しているので、移動はそれほど苦にはならないだろう。フロントパネルに集約されたつまみ類は全部で8つ。2ボリューム、3トーン、それにPRESENCE(プレゼンス)とREVERB(リバーブ)、MASTER(マスター)という、とてもシンプルな構成だ。とはいえ、つまみのそばには音のキャラクターを変化させるVOICEボタンや、より強く歪ませるBOOSTボタン、中域をブーストできるMID BOOSTボタンもあるので、音のバリエーションにも期待できそうだ。

一見シンプルで普通そうに見えるフロントパネルだが、実は使い勝手がすごく良い。その目玉が各つまみに装備されているLED指標。つまみの周りにLEDが設けられていて、現在のつまみの設定位置を赤く光って示してくれるというものだ。つまみを回せばもちろんLEDの光もリアルタイムにクルクルと動く。アンプのつまみの位置は、ちょっと見ただけではわかりにくいのだが、これなら一目瞭然。暗いステージでも一瞬でつまみの位置を把握できる。コレは便利だ!

■連続して滑らかに歪み量を変えられるDRIVEつまみ


▲PROGRESSIVE AMPにあるDRIVEとVOLUMEの2つのつまみ。DRIVEつまみで歪みを調整できる。
前述のとおりGA-212には、モデリングしたアンプのタイプを選ぶような機能はない。音のキャラクターの基本的な部分、歪み方を決めるのは、PROGRESSIVE AMPと表記されたエリアにあるDRIVEとVOLUMEの2つのつまみだ。“プログレッシブ・アンプ”と呼ばれるオリジナルアンプ1つが搭載されているだけなので、操作はとてもシンプル。普通の2ボリュームのアナログアンプと同じだ。

まずはDRIVEのつまみを控え目に設定して、クリーン・サウンドを試してみると、これが本当にクリーンでちょっとびっくり。そんなの当たり前だと思うかもしれないが、強く歪むタイプのアンプでちゃんとしたクリーンサウンドが出せるアンプはそれほど多くない。クリーンにしてもちょっと歪んでいたり、音がヤセていたりすることもあるのだが、このGA-212のクリーン・サウンドはかなり使える音だ。同じローランドの名機“ジャズコーラス”JC-120もクリーン・サウンドに魅力のあるアンプだが、それよりは若干力強く、コシがあるクリーン・サウンドという印象だ。

このプログレッシブ・アンプの特徴は、DRIVEつまみで歪みを調整し、様々な音を作り出せること。といってもこのつまみ、ちょっと回すと過激に歪むというタイプではなく、歪みの変化は穏やかで、微調整もやりやすい。ではクリーンから徐々にDRIVEを上げてみよう。時計で言う12時くらいまでは、ほんのわずかにしか歪まないが、そこから先は徐々に軽い歪みがわかるようになってきて、右いっぱい、5時くらいになるといわゆるクランチサウンドになる。乾いた雰囲気であたたかみもあり、とてもナチュラルな感じの音だ。

DRIVEつまみを右いっぱいまで回しても、これで終わりではない。左側にあるBOOSTボタンを押すと、つまみを左いっぱいの位置からその続き、つまりさらに歪んだサウンドに進むことができるのだ。BOOSTボタンを押した状態では、7時の位置で先ほどのクランチサウンド。12時くらいまで回すといわゆるディストーションサウンドで、かなり歪みは強くなるが、どことなく丸みがあるマイルドな歪み方で、とてもまとまりのあるサウンドだ。ピッキングのニュアンスにもよく追従して、歪み方や音色が微妙に変化するのがとても自然でいい。そしてDRIVEを右いっぱい、5時くらいまで回すとスーパー・エクストリーム。かなり荒っぽく歪んだ音になる。

■歪み具合を色で示してくれるサウンド・インジケーター


▲BOOSTボタンを押した状態では、クランチでオレンジ色、ディストーションで赤、さらにピンク~紫に変化。右いっぱいでは明るい白い光のスーパー・エクストリームになる。
DRIVEの調整で面白いのが、つまみのすぐそばにあるサウンド・インジケーターだ。これは現在の設定での歪み量を色で示すもの。歪み具合はインジケーターの色で一目瞭然だ。歪み方の変化に応じて色が連続的に変わっていくところは、今までにない感覚でとても面白い。どんなふうに光るのかというと、つまみの位置が7時くらいのクリーン・サウンドのときは緑。そしてつまみを回すと色が徐々に黄緑に変わり、12時くらいまで回すと黄色、さらにいっぱいまで右に回していくとオレンジになって、クランチサウンドになったことを示す。


▲BOOST時とNO BOOST時のインジケータ色の移り変わり。
BOOSTボタンを押した状態では、7時のオレンジ色のクランチから始まり、12時くらいのディストーションで赤、さらにピンク~紫に変化。右いっぱいに回すと明るい白い光を放って、スーパー・エクストリームになったことがわかる、という具合だ。音作りの際に、歪み具合の目安としてわかりやすいだけでなく、ステージでも瞬時に確認できるのでとても便利だ。なお、このインジケーターはとても明るいのでステージでも目立つが、それが気になる場合は表示しないように設定することもできる。

■まとまりのあるあたたかい音、でも音圧はド迫力

このように歪み方を色々と変えられるのがGA-212のプログレッシブ・アンプの面白いところだが、オリジナルアンプの音を追求したというだけあって、どんな歪み方でもその音のキャラクターは一貫しているように感じた。クリーンからスーパー・エクストリームまで、どの音でも自然でまとまりがあり、音の輪郭が明瞭で音程感も十分。モダンなハイゲインのスタック・アンプに比べれば、歪みは若干抑え目で、ノイジーで激しくつぶれたような過激な歪み、というわけにはいかないが、図太く荒々しく歪んでくれるし、あたたかみがあるところは本当によくできたコンボ・アンプという感じ。音の過激さで圧倒するというより、音の表情を楽しむためのアンプという印象だ。

ただし、力強さはかなりのもの。軽めの歪みでもガツンと来るパワーがある。出力は200Wあるからハードロックのライヴでもまったく不満のない音量が出るし、大音量のときには音圧もスゴい。鋭く突き刺さるという感じではなくて、むしろ分厚く重いコンクリートの壁がドーンとぶち当たってくるような感じだ。この音圧感は、普通のコンボ・アンプにはない迫力だ。


▲MID BOOSTボタンを押すとグッとパワフルに。VOICEボタンは高域、中域、低域それぞれが持ち上がり、図太く、艶やかな音になる。
音作りにはこのほかに、3つのトーンコントロールとPRESENCE、VOICEボタンも使える。トーンには変なクセがなく自然で、効きもよいから自在の好みの音を作ることができる。MID BOOSTボタンは中域を増幅するものだが、これを押すとグッとパワフルになるから、クランチからディストーションなどの歪み系サウンドでは積極的に使いたくなる。またVOICEボタンは、高域、中域、低域それぞれのおいしい部分がグッと持ち上がる感じで、図太く、艶やかな音になる。エフェクターとしては、リバーブのみを搭載する。効果は控え目だが、デジタルっぽくない自然な残響は利用価値が高そうだ。

■音色は4つのチャンネルに自動的に保存される

これらの設定により色々なサウンドを作り出せるGA-212だが、作った音は、4種類まで保存しておくことができる。その際に使うのが、フロントパネル下部にあるCH1~CH4のボタンだ。各チャンネルのボタンを押せば、保存されている設定を一瞬で呼び出すことができる。


▲フロントパネル下部にあるCH1~CH4のボタンで4種類の設定を切り替える。最後に動かしたつまみの設定を自動的に保存してくれるのだ。

ここで面白いのは、設定を保存するためのボタンがないことだ。ではどうすれば保存できるのかというと、実はこのGA-212は、最後に動かしたつまみの設定を自動的に保存してくれるのだ。だから自分で保存の操作を行なう必要がないというわけだ。初めてこの機能を使ってみようとしたときにはちょっと戸惑ったが、使ってみれば実に便利。チャンネルを切り替えて聴き比べながら音を作っていく場合にも、いちいち保存操作をしなくてすむのはたいへんありがたい。チャンネルを切り替えれば、設定に合わせてつまみのLED指標も変更されるので、各つまみの設定もひと目でわかる。このストレスフリーの設計は、余計なことに煩わされたくないレコーディングのときに、とくに威力を発揮しそうだ。

■2系統のエフェクト・ループで外部エフェクターの使用もバッチリ


▲外部エフェクターに音を送る場合は、フロントパネルのAとBのボタンで使うループを選択する。
GA-212にはリバーブ以外のエフェクトはない。したがって、外部エフェクターを使う機会も多いはずだが、その際の使い勝手も考慮されている。背面にはEFFECT LOOP(エフェクト・ループ)端子が2系統用意されていて、ここに外部エフェクターを接続することができる。

外部エフェクターに音を送る場合は、フロントパネルのAとBのボタンで使うループを選択すればOKだ。背面には、エフェクターの音とGA-212の音をミックスするかどうかを選択するLOOPスイッチもある。これをPARALLELにすると、外部エフェクターとダイレクト音がミックスされ、SERIESにするとダイレクト音がオフ、エフェクターの音のみを出せるようになる。せっかく基本的な音が良いGA-212なのだから、ダイレクト音をオフにするのはもったいない気もするが、モデリング・アンプ内蔵のエフェクターなどを使って、劇的に音を変えたいときなどには便利だろう。また、エフェクト・ループのレベルを-10dBuまたは+4dBuに切り替えられるスイッチもある。外部エフェクターの入出力レベルが高すぎたり低すぎたりしてエフェクト・ループが使いにくい、ということもよくあるのだが、GA-212ではそんな心配も不要というわけだ。

■飛躍的に操作性が向上するフット・コントローラー、ペダルで歪みをコントロール

そのままでも十分に使い勝手のよいGA-212だが、もっと飛躍的に操作性を向上させる方法がある。それはGA-212の背面にあるFOOT CONTROL/LINK IN端子に、オプションの専用フット・コントローラー「GA-FC」を接続することだ。このGA-FCを使うと、フロントパネルにあるボタンを押すのと同じことを足元のスイッチで操作できるようになる。たとえば、CH1~CH4のスイッチを踏めば、音色を保存したチャンネルを呼び出すことができる。また、左端のFUNCTIONスイッチを踏んでファンクション・モードにすれば、BOOST、MID BOOST、EFX LOOP A、EFX LOOP B、REVERBのオン/オフの切り替えを行なうことができる。手でボタンを操作するより圧倒的にすばやく簡単に操作できるし、もちろん手をギターから離さずにすむのでとても快適だ。


▲専用フット・コントローラーGA-FC(別売)。エクスプレッション・ペダルを接続すれば、ドライブ・レベルのリアルタイム・コントロールも可能。
このGA-FCには、エクスプレッション・ペダル(BOSS EV-5、BOSS FV-500L、BOSS FV-500H)を接続することもできる。エクスプレッション・ペダルは、VOLUMEとDRIVEの2つの端子に接続可能で、VOLUMEに接続した場合は音量を、DRIVEではフロントパネルのDRIVEと同様に歪み量をコントロールできる。

とくにDRIVEに接続して使ってみると、弾きながら連続して歪み量を変化させられるのがすごく面白い。ボリュームペダルで歪みをコントロールするときとは異なり、下げたときに音ヤセすることもないし、上げていって音がつぶれすぎることもない。また、フロントパネルのつまみでは、一度の操作でクリーンからクランチまで、その先はBOOSTを押してクランチからスーパー・エクストリームまでと、2段階の動作だったのに対し、エクスプレッションペダルではクリーンからスーパー・エクストリームまで、すべての範囲を一度にコントロールできる(BOOSTが押してある場合)。また、ペダル側のMINIMUM VOLUMEの設定で、ペダルを戻したときの最下限値を決めておけるし、DRIVEつまみを少し絞っておけばそれが最上限値になるので、ペダルで操作する範囲を狭く限定することもできる。


▲背面のTHRU/TUNER OUTからもう一台のGAシリーズのINPUTに接続すれば、複数台を連携できる。
このほか、複数台のGAシリーズを連携させるリンク機能も搭載されている。背面のTHRU/TUNER OUTからギターのダイレクト音が出力されるので、これをもう一台のGAシリーズのアンプのINPUTに接続すればいい。フット・コントローラーを使っている場合は、背面のGA FOOT CONTROLも接続しておけば、フット・コントローラーでのチャンネル切り替え、エクスプレッション・ペダルの操作などをリンクしたすべてのアンプに反映させることができる。もちろんアンプ本体もスタックできるように設計されているから、GA-212の2段積みだって簡単にできるのだ。ただでさえド迫力の音圧のGA-212なのだから、スタックして使ったらいったいどんな音になるのか、ぜひ大きいスタジオで使ってみたいものだ。

DRIVEで歪み量を連続して変えられ、それを演奏しながら足元で操作可能、歪み量はサウンド・インジケーターの色で視認でき、音色切り替えは自動保存でボタン一発と、GA-212には面白くて便利な機能が満載だ。そんな多彩な機能にばかり目が行ってしまうが、最大の魅力は図太くパワフルなサウンドだ。読者のギタリスト諸氏も、機会があればとにかく一度大音量で鳴らしてみてほしい。重心が低く、密度の高そうなこの音には、何度も言うようだがスゴい迫力がある。きっとノックアウトされるに違いない。

<GA-212 主な仕様>

定格出力:200W
規定入力レベル:INPUT HIGH=-10dBu、INPUT LOW=0dBu、MAIN IN A、B=-10dBu、EFX LOOP A、B RETURN=-10dBu、+4dBu(選択可)
規定出力レベル:LINE OUT=-10dBu、EFX LOOP A、B SEND=-10dBu、+4dBu(選択可)、THRU/TUNER OUT=-10dBu
スピーカー:30cm (12インチ)×2
コントロール:ONスイッチ、AUTO OFFスイッチ、VOICEボタン、BOOSTボタン、MID BOOSTボタン、EFX LOOP A、Bボタン、EFX LOOP A、B LOOPスイッチ、EFX LOOP A、B LEVELスイッチ、MANUALボタン、CH1~CH4ボタン、MASTERつまみ、DRIVEつまみ、VOLUMEつまみ、BASSつまみ、MIDDLEつまみ、TREBLEつまみ、PRESENCEつまみ、REVERBつまみ
インジケーター:SOUND INDICATOR、LEDつまみ×7(MASTERつまみを除く)、VOICE、BOOST、MID BOOST、EFX LOOP A、B、MANUAL、CH1~CH4
接続端子:AC IN端子、INPUT HIGH/LOW端子(標準タイプ)、MAIN IN A、B端子(標準タイプ)、LINE OUT端子(標準タイプ)、FOOT CONTROL/LINK IN端子(TRS標準タイプ)、LINK OUT端子(TRS標準タイプ)、THRU/TUNER OUT端子(標準タイプ)、EFX LOOP A、B SEND端子(標準タイプ)、EFX LOOP A、B RETURN端子(標準タイプ)
電源:AC100V(50/60Hz)
消費電力:75W
付属品: 取扱説明書、保証書、キャスター×4、電源コード、2P-3P変換器、ローランド ユーザー登録カード
別売品:GA FOOT CONTROLLER(GA-FC)
外形寸法:715(W)×337(D)×560(H)mm
質量:32 kg

text by BARKS編集部 森本

◆GA-212
価格:オープン(予想実売価格 10万円前後)
◆GA-112
価格:オープン(予想実売価格 8万円前後)
発売日:2012年6月22日

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