巨匠たちを称える<フジロック> Fuji Rocks gives respect to the Masters
イギリス出身の大御所ヘッドライナーが一堂に会する2012年のフジロック。毎年ヘッドライナーが話題の中心となる一方で常に関心を集めるのは、Red Marqueeに出る新人エレクトロニカ・バンドや、Rookie-A-Go-Goに出演することが多い新進気鋭のバンド。そして冒険的なノージャンル・ミュージックが好きな人にはOrange Courtである。新しいアーティストに興味が湧くのは自然なことで、2012年のラインアップが素晴らしいだけに、ベテラン・ミュージシャンの音楽に触れてみる事をおすすめしたい。若い人たちのために、2012年のフジロックに登場する伝説的な大御所ベテラン・ミュージシャン達を紹介しよう。
●トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ(Toots & the Maytals)
1960年代にジャマイカで結成されたレゲエ界の大御所バンド。リーダーは66歳のフレデリック・トゥーツ・ヒバート。オーティス・レディングのようなR&B、ゴスペル、スカのテイストをミックスさせたソウルフルな声で知られる。バンドはこれらの音楽ジャンルの影響から独自の音楽性を生み出し、「レゲエ」という音楽ジャンルの名称は彼らの楽曲「DO THE REGGAY」のタイトルから引用されたと言われている。1972年発表の同名のアルバムに収録されている「ファンキー・キングストン」をはじめ、ジミー・クリフ主演のレゲエ映画『ハーダー・ゼイ・カム』のサントラに収録されている「Sweet And Dandy」の2曲は、バンド史上最大となる世界的ヒットとなった。他にもクラッシュ、ロバート・パルマー、イジー・ストラドリン、ザ・スペシャルズ、キース・リチャーズなど多くのアーティストにカバーされてきた「プレッシャー・ドロップ」や、大ヒットの名曲「モンキー・マン」はエイミー・ワインハウス、ノー・ダウト、アダム・アント、ザ・スペシャルズなど多数のアーティストにカバーされている。
●アーネスト・ラングリン(Ernest Ranglin)
ジャマイカを代表するギター奏者であり、ジャマイカが誇る国宝級ミュージシャン。彼を師匠として仰ぎ、敬意を払い続けているミュージシャンも多く、ジャマイカ音楽の初期からスカやレゲエなどジャマイカ固有の音楽を確立させ、スカの創始者のひとりにも数えられている。御年 80歳。ボブ・マーリー、ジミー・クリフ、リー・ペリーといったレゲエ界伝説・屈指の大物アーティストらとも演奏活動を行なっている。1964年にリリースされ、ジャマイカ人として初めて世界的ヒットを達成したミリー・スモールの曲「マイ・ボーイ・ロリポップ」にも参加。現在も精力的な活動を続けている。昨年11月にはブルーノート東京にてスライ&ロビーとモンティー・アレクサンダーと出演、素晴らしいパフォーマンスを披露し大絶賛を受けた。
●バディ・ガイ(Buddy Guy)
フジロック明けの7月30日には76歳を迎える偉大なギタリストでシカゴ・ブルースの第一人者であるバディ・ガイ。個性的なサウンドを確立しており、曲のイントロ部分を聴いただけでもすぐに彼の演奏だとわかってしまう。予測不可能で力強い演奏テクニックも特徴の一つだ。ハウリン・ウルフの「キリング・フロア」、ココ・テイラーの「ワン・ダン・ドゥードル」、ジュニア・ウェルズの「メッシン・ウィズ・ザ・キッド」と「スナッチ・バック・アンド・ホールド・イット」といった歴史的名曲にも参加している。ジミ・ヘンドリックス、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジといったギターの神様のような大御所達が、影響を受けたアーティストとしてバディの名を挙げている。エリック・クラプトンは「僕にとってバディ・ガイとは、みんなにとってのエルヴィスのような存在だ」と発言している。
●エルヴィン・ビショップ(Elvin Bishop)
もうひとりの偉大なギタリストはブルース・レジェンドのエルヴィン・ビショップ、69歳。ブルース、R&B、カントリー、ロックの要素に爽快なユーモアーを取り入れたユニークなサウンドを展開している。1960年代にポール・バターフィールド・ブルース・バンドのギタリストとして活動を始め、1969年にソロ活動をスタート。R&Bに傾倒した演奏スタイルで成功を収め、カプリコーン・レコードのアーティストとしてサザン・ロック・ムーヴメントの一端を担った。サザン・ロックがテーマのチャーリー・ダニエルズの曲の歌詞に“干し草の俵の上に座っているエルヴィン・ビショップ。ハンサムな男じゃないが、演奏の腕前はピカイチさ(原文:“There's Elvin Bishop sitting on a bale of hay, He ain't good lookin' but he sure can play”)”とある。
●レイ・デイヴィス(Ray Davies)
キンクスのリード・ヴォーカルおよび作曲家として知られる68歳の天才シンガーソングライター。英国4大バンドはビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクスと言われているが、その一つであるキンクスのソングライターとして活躍、2004年にはエリザベス2世より大英帝国勲章を受勲した。巧みな言葉の表現に、ウィットや洞察力、大胆さに富んだ彼の文学性は、どこかオスカー・ワイルドを彷彿させる。リアルタイムでオリジナル曲を聴いたことがないような若い人でも、キンクスの代表曲である「ユー・リアリー・ガット・ミー」、「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」、「ウェア・ハヴ・オール・ザ・グッド・タイムス・ゴーン」、「サニー・アフタヌーン」、「ウォータールー・サンセット」をカバー・バージョンで聴いたことのある人は多いだろう。レイ・デイヴィスの書いた曲は、デヴィッド・ボウイやポール・ウェラー、ヴァン・ヘイレン、プリテンダーズ、少年ナイフ、イギー・ポップなど数多くのビッグ・アーティストをはじめ、世界中の数え切れない程多くのバンドにカバーされている。
キース・カフーン(Hotwire)
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