後藤真希、活動休止前最後の公演を開催。「後藤真希のコンサートは、みんな仲間なんだよ。」

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ステージ中央のスクリーンには、そのままステージ裏の中継映像が映し出される。後藤は、ダンサーズに感謝の気持ちを示してから、設置されたブースに入る。どうやら“影アナ”も自ら務める様子だ。

「いやいや。ちょっと最後だから、影アナ読んじゃうよ。みんな聴いててね。よし。“以上を持ちまして、コンサートはすべて終了させていただきます。どなたさまも、足元にお気をつけの上、お忘れもののないよう、お帰りください。”」

これで本当に後藤真希の<G-Emotion FINAL>は終わってしまったのか、と誰もが思った。しかし、影アナの後藤からは、さらに言葉が続く。

「と……言いたいとこですが、いやー、まだもうちょい盛り上がりたいんだよね。みんなが盛り上がる気があるなら、私、やっちゃうよって思うけど。でも、行くか行かないかはみんな次第だからね。まだまだ行ける? ほんとにいける?」

再び地鳴りのように湧き上がる会場。そして後藤は、「オーケー、盛り上がるしかー?」と呼びかけると、それはまさに記憶としては忘れかけていたが身体が覚えていたでも言うような、もしくは脊髄反射とでも言うような、そんなとっさの判断と瞬発力で、会場一丸となって「ないでしょ!」の声。そう、まさかのもう1曲。そして泣いても笑っても本当に最後の1曲は、過去の後藤真希のライヴなどにおいて起爆剤的に使われた鉄板のアッパーチューン「盛り上がるしかないでしょ!」だったのだ。<HEY! HEY! どうだ / 気にせず DO DA>のコールアンドレスポンス。後藤真希とオーディエンスは、江戸の花火ようなドデカイスケールで会場をブチ上げてみせた。

センタステージに足を進めて、「もっとみんなの声が聴きたい、みんなの顔が見たい」と、会場のBGMを下げて客電をつけるよう、ステージからスタッフに指示を出す後藤真希。沸き返るごっちんコールを受け、ファンひとりひとりの顔をゆっくりと目に焼き付けると、後藤真希は、「ほんとにどうもありがとう!」と絶叫。

「また会う日まで。今日まで、とりあえずね。今日まで、ほんとにありがとう。また、こうやってみんなに出会える日を楽しみに。毎日毎日、休憩もしつつね。頑張っていきたいと思うから。……みんなのことは、絶対、忘れないから。みんなも、忘れるのも浮気するのもぜーんぶダメだから! よろしくね。ほんとにほんとに、ありがと。後藤真希でした。バイバイ!」

後藤真希は、ゆっくりと降りていくポップアップに乗りながら、思いっきり手を振り続けて、ステージから消えていった。最後の最後まで「どうもありがとう」と、口元が揺れていた。そして、とても綺麗な笑顔だった。

  ◆  ◆  ◆

あらためて言うまでもないが、後藤真希の無期限活動休止は、引退ではない。昼の公演で彼女はこんな感じでファンに語っていた。

「昼あって、夜公演でほんとにラストになるけれど、後藤真希が消えてなくなるわけじゃないんだから。そうでしょ? 消えないし。私もそうだけど、みんなが私の事を考えているのもすごい伝わるし、ファンレターとかイベントとかで、みんなの言葉をラスト前に聞けて、ほんとに嬉しかったし。まぁ、そうだなー。いつ出てくるかなんてわかんないけど、みんなが思っている以上に、私もみんなのこと、倍くらい思ってるから、少なくともね。こういうこと言うと、どっかのインターネットで“ごっちん盛ってるな”とか言われたりするんだけど(会場 爆笑)、これは盛ってませんから。ほんとにあんたたちのこと考えてるんだから! (中略) 今日終わって、明日からは私のこと“一般人”だと思っているかもしれませんが、そんなことはございません(笑)。ちゃんとavexには所属しておりますから、そこのところはよろしくお願い致します(笑)」── 後藤真希(昼公演MCより)

各インタビューや、夜公演のMCからもわかるように、彼女は確かに引退を考えた。一度は歌を捨てようとした。しかし、最後の最後でそれをすることができなかったのは、ほかでもない、ファンやスタッフ、後藤真希に関わるすべての人からの愛、だったのだろう。手を離そうとしても、それでも自分のことを変わらず愛してくれる多くの気持ち、ブレることのない想いがそこにはあった。

<愛が無ければ迷わない / こんな弱さも知らぬまま> ── 「YOU」より

結局のところ、手を離してしまおうと思ってしまったのは、自分自身が弱かった(弱っていた)から、だろう。そして今回の無期限活動休止は、決して逃げることでも隠れることでもなく、もちろん別れを意味するものではないことがわかる。たとえばその決断は、多くのファンや周りの人たちの、ブレることのない大きな愛情をあらためて知ったことで、自分自身がもっと強くなるため。「みんなが思ってくれている、その倍くらいは私はみんなことを想っている。」と話す後藤真希だが、同時に、もっともっと大きな愛を、歌という形で返していきたい、とも考えているはずだ。そのために必要なのは、ここで一旦リセットして少し休んだのち、表現者としてもっと成長すること。違う世界でいろんな経験をすること。そして、誰かのための後藤真希でなく、自分のための後藤真希を精一杯生きてみること。捨てるのではなく、少し離れてみて、内なる声に耳を傾けること。いつか自分自身が“歌いたい”と、心の奥底から強く想い、決してブレない気持ちで、再び歌と、“後藤真希”と向き合える日まで。

我々は、2012年以降も後藤真希を信じ、愛し、大きな期待とともに活動再開を待ち続ける。決してその想いが消えることはない。そして、いろんなものをひとりで抱え込んで、今は傷だらけかもしれないが、いつの日か必ず、大きな愛で結ばれた後藤真希は、音楽シーンへと戻ってくる。

その時、彼女はこれまで以上に魅力的で、圧倒的で、強い輝きを放つ。そう、断言しておく。

最後にインフォメーションを。この日の模様を収録したライヴDVD『G-Emotion FINAL』が、2012年3月7日にエイベックスよりリリースされる予定だ。これは、本編のライヴに、当日の後藤真希の一日を身近なスタッフが密着カメラで撮影したドキュメンタリー映像、さらにエイベックス移籍後に毎年出演してきた<a-nation>の過去のパフォーマンスを網羅した3枚組となる。

text by ytsuji a.k.a.編集部(つ)

◆後藤真希 オフィシャルサイト
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