【BARKS編集部レビュー】BOSS、あの名機の歪みを再現するコンボ・ドライブBC-2&多彩な音作りを可能にするフィードバッカー/ブースターFB-2
この秋、BOSSから2つのコンパクト・エフェクター、Combo Drive BC-2とFeedbacker/Booster FB-2が登場した。まずBC-2は、コンボ・アンプの歪みサウンドを再現できるオーバードライブ。2010年に発売され話題を呼んだスタック・アンプを再現するPower Stack ST-2とは対照的に、コンボ・アンプならではのあたたかみのある歪みを生み出せるエフェクターだ。そしてFB-2はブースター。音のキャラクターを変えずにレベルをアップするクリーン・ブースターや、中域を押し出すミッド・ブースターとして使えるだけでなく、ペダルを踏むだけで自然なフィードバックを簡単に生み出せる機能も持っている。どちらも、シンプルな機能のアンプでも、組み合わせれば多彩な音作りができることで注目を集めている製品だ。
【ブリティッシュ・コンボの名機を再現するBC-2】
BC-2は、Combo Drive(コンボ・ドライブ)と名付けられた歪み系のエフェクター。製品名の“BC”からもわかるように、ブリティッシュ・コンボ・アンプのサウンドの再現を狙ったもので、60年代から現在まで多彩なジャンルで使われ続けている定番中の定番、VOXのAC30のサウンドが再現できる。60年代リバプール・サウンドに代表されるあのサウンドを手持ちのアンプで出せるとなれば、食指が動いてしまう読者も多いだろう。
BC-2のボディは、AC30のスピーカーグリルを思い起こさせるような、赤っぽい茶色。そこに4つのつまみが並んでいる。左からLEVEL(レベル)、BASS(ベース)、TREBLE(トレブル)、そしてSOUND(サウンド)だ。一般的なエフェクターと同様に、LEVELでエフェクトがオンのときの音量、TREBLEとBASSで、それぞれ高域と低域の増減を設定することができる。そして特徴的なのがSOUNDつまみ。歪みの強さと音のキャラクターをコントロールするものだ。時計で言う7時くらいの位置にCLEAN、12時の位置にCRUNCH、そして5時の位置にDRIVEという表示があるが、左から右へとこのつまみを回していくと、最初は歪みのないクリーンな音で、そこから徐々に歪みが増し、クランチサウンドからドライブサウンドへと変化していくという仕組みなのだ。
■まさに“60年代リバプール”なCLEANサウンド
まずはクリーンサウンドから試してみよう。SOUNDつまみを左いっぱい、BASSとTREBLEを12時の位置にして弾いてみると、ほぼ歪みのないまさにクリーンな音。といっても、JC-120(ローランドの名機と称されるギターアンプ)のようにギターの素の音そのままのクリーンサウンドではなくて、少し太さがあってあたたかみを感じる音だ。一音一音の粒立ちもいい。原音とどのくらい違うのか、オフにして比べてみると、低域が思いのほか増幅されているのがわかる。音が太くなっているだけではなく、中域~高域も力強さが増すことで、アタックが強調されて歯切れがよくなり、中域のもっとも大事なところが前に出て音程がしっかりと聴こえてくるのだ。さらにトーンコントロールでBASSを上げれば、アコースティック・ギターの胴鳴りのような迫力ある低音が出てくるし、TREBLEを上げると、ブリッジ寄りを弾いたときのようなジャリっとしたアタックが強調される。どんなセッティングでも音程感と太さが損なわれないのもいい。だから単音リードでも十分に使えるし、ジャカジャカとコードストロークをかき鳴らすととても心地いい。ビートルズの「All My Loving」のような曲はすごくハマるだろう。
■ナチュラルなCRUNCHサウンド、ピッキングニュアンスで歪みも変化
SOUNDつまみはゲインのような働きをするので、上げていくと徐々にレベルが上がり、歪みも増していく。そして9時くらいの位置からは一段と歪みが強くなるが、ここからがCRUNCHサウンドということになる。BC-2のCRUNCHサウンドは、いわゆる“クランチ・サウンド”の典型的な音。アタックはジャキッと明瞭、音圧があって抜けがいい。歪みは比較的粗めだが明るい音、サスティンもかなり伸びる。このCRUNCHでは、ギターのボリュームはもちろん、ピッキングのニュアンスにも反応して微妙に歪み方が変わるのも特徴だ。ギターのボリュームを絞ると、SOUNDつまみをCLEANにしたときと同じような音になるが、ボリュームを上げていくと徐々にアタックが鋭くなり抜けがよくなってくる。また弱めのピッキングでは歪みは軽く低音も出るが、強く弾けばアタックがより強く、ガツンと来る音になる。弾き方できちんとメリハリを出すことができるわけだ。逆にいえば、ピッキングのニュアンスが強調されることになるから、そこを意識して演奏する必要もありそうだ。
SOUNDつまみの位置によって、BASSとTREBLEのトーンコントロールの効き方が変わってくるところも面白い。SOUNDを9時から11時くらい、軽めの歪みにした場合は、BASSでは輪郭の太さを、TREBLEでは音の明るさを変えられる。この場合トーンの効きは控え目で、基本的な音質を保ったまま雰囲気を変えるのにちょうどよいくらいの感じ。これに対し、SOUNDつまみを12時から2時くらいの強めの歪みにした場合は、もっと過激に効くようになり、キャラクターを大きく変化させることができるようになる。BASSを上げると中域に近い低域が出て迫力が増してくるし、TREBLEを上げるとアタックがより強調されて力強くなり、ピッキングの強弱にもより反応するようになってくる。エフェクターで強く歪ませると、音がつぶれて微妙なニュアンスが伝わりにくくなることも多いのだが、このBC-2のCRUNCHサウンドでは、強く歪ませてもピッキングの強弱で音色に表情をつけることができる。グランジやハードロックはもちろんだが、ブルースやジャズであえて強く歪ませて使っても面白そうだ。
■本家コンボ・アンプ以上に歪むDRIVEサウンド
SOUNDつまみをさらに左に回し、DRIVEサウンドになると、歪みはかなり激しくなる。本家AC30ではここまで歪ませられないだろうというくらいの歪みだ。といっても、スタック・アンプのように全体がつぶれた歪みではなく、(CLEANやCRUNCHのときと同じように)粒立ちがよくアタックも明瞭に出てくるきめ細かい歪みになっている。このあたりは、“コンボ・ドライブ”たる所以だろう。基本的には中域が強調された図太くパンチあるオーバードライブ・サウンド。あえて例えるなら、ブライアン・メイがファズを使ったときのような音、と言ったらいいだろうか。トーンコントロールについては、BASSを上げるとあたたかみが増して弦が太くなったような音になり、下げると歯切れよくスッキリした音になる。またTREBLEはアンプにあるブライトスイッチのような働きになり、上げると高音弦の響きが強調され、ノイジーな歪みになる。個人的には、BASSを少し上げ、TREBLEを下げ気味にした設定がQUEEN初期のブライアン・メイみたいですっかり気に入ってしまった。
【いよいよBOSSから登場した人気上昇中のブースター FB-2】
もうひとつのFB-2は、フィードバック機能を持ったブースターだ。ブースターといえば、音量をかせいだり、より強く歪ませたりするために、イコライザーやオーバードライブなどをアンプ直前に入れ、これらをブースターとして使う手法も一般的だ。レベルを上げ、より強く歪ませるにはこれが一番だ。ヴァン・ヘイレンがBOSSコンパクトのオーバードライブOD-1を使っていたのはそのもっとも有名な例だろう。
ただこの方法ではどうしても歪みが生じてしまう。それを解決するのが、音のキャラクターを変えずにレベルを上げられるブースター、“クリーン・ブースター”と呼ばれるものだ。クリーン・ブースターを使う第一の利点は、もちろん音のキャラクターが変わらないこと。お気に入りのアンプやドライブ系エフェクターで作った歪みサウンドも、ブースターの歪みで邪魔されることがないのだ。また、1ch仕様のアンプでは、2chのアンプのようにクリーンチャンネルとドライブチャンネルを切り替えることはできないが、ブースターがあればペダルひと踏みでアンプに入力するレベルを切り替えられる。つまりアンプのゲインを2パターン設定しておけるのと同じで、アンプのチャンネルを切り替えるように使うことができるのだ。
■クリーン・ブースター、ミッド・ブースター、トレブルブースターの一台三役
このようにブースターといっても使い方によって様々な役割があるのだが、FB-2はそういった複数の役割を1台で実現してしまう。その秘密はCHARACTER(キャラクター)つまみにある。このつまみをもっとも左、7時の位置にするとフラット特性、つまり音を変えないクリーン・ブーストになるのだが、右に回すにしたがって高域と低域が抑えられ、もっとも右まで回すと中域を強調したミッド・ブーストになる。
まずはCHARACTERつまみをもっとも左、クリーン・ブーストの状態で試してみよう。BOOST LEVEL(ブースト・レベル)を徐々に上げていくと、音量が上がっていく。音質は変わらず音量だけが変わるので、まるでCDのボリュームを操作しているかのようだ。オフのときに比べ粒立ちもよくなっている。次にCHARACTERを12時の位置まで上げてみると、高音弦のきらびやかな感じと低音弦の太い音が薄くなり、かなりスッキリした軽快な音になる。さらにCHARACTERつまみを右に回し、ミッド・ブーストにすると、アタックがもっと強調され、音にパンチが加わってくる。中域がかなりブーストされているので、(アンプの設定にもよるが)軽く歪みも生じるが、乾いた感じのナチュラルな歪みだ。またTONEつまみで高音の調整ができるので、バリッとしたハリのある明るい音はファンク系のカッティングに似合いそうだし、甘めのあたたかい音はリードにもよさそうだ。もちろん高音を強調してトレブル・ブースターとして使うことも可能だ。
■ドライブ系エフェクターと組み合わせて歪みをブースト
FB-2単体でもかなり使えるのだが、歪み系エフェクターといっしょに使うことも多いだろう。そこで先ほど紹介したBC-2と組み合わせて使ってみることにした。まずは、BC-2→FB-2の順でつなぎ、BC-2で歪ませた音をブーストしてみた。予想通りだが、FB-2のBOOST LEVELを上げると、BC-2の歪んだ音のキャラクターはまったく変わらず、音量だけを上げることができた。ただし、CHARACTERの設定によっては歪み方が少し変わってくる。中域のレベルを上げると歪みがより強くなるため、ミッド・ブーストまで回すとかなりパワフルな歪みサウンドになるのだ。
次はもっともよく使われるであろうパターン、FB-2の後ろにBC-2を置き、FB-2でブーストした音をBC-2に送るというつなぎ方で試してみた。BC-2のSOUNDつまみは11時くらい、軽く歪むCRUNCHサウンドに設定。そしてFB-2をオンにすると、歪みはかなり強くなる。BC-2のSOUNDつまみを90度ほど右に回したのと同じくらい歪みが足される印象。そして歪み方もBC-2単体のときよりきめ細かくなった。全体の音のキャラクターは、FB-2のCHARACTERの設定によって変わる。フラットから右に回していくと、徐々に低音が減ってスッキリした感じになり、さらにミッド・ブーストまで回すと音圧のあるドライブ・サウンドになる。このドライブ・サウンドは迫力があってカッコいい。単音のリフなどでもかなり存在感が出てくるだろう。また、この組み合わせの場合は、BOOST LEVELをうまく調整すれば、音量を変えずに歪みだけをプラスすることもできる。まさにアンプのチャンネル切り替えのように使えるわけだ。
■小さいアンプでもクリーンサウンドでもフィードバック!
音を変えずにレベルを上げるというのは便利だが、地味な機能と言えなくもない。しかしFB-2には派手な機能も搭載されている。それはペダル一発でフィードバックを得られるという機能だ。普通は、フィードバックはまず大音量で弾いていることが前提となるし、さらに音色やアンプとの位置など様々な条件に左右されてなかなかうまくいかないもの。キッスのエース・フレーリーやヴァン・ヘイレンに憧れたものの、心地よいフィードバックを得られず悔しい思いをしたギタリストも多いだろう。しかしFB-2があれば、簡単にあのサウンドを出せるのだ。
フィードバックを生成するエフェクターといえば、オシレータ(発振器)を使って疑似的なフィードバックを鳴らすものを思い出すギタリストも多いかもしれないが、このFB-2はそれとはまったく違う仕組みを取り入れている。実際に鳴っている音から、フィードバックを起こしやすい帯域を自動的に検出し、その帯域をピンポイントでブーストすることで、リアルなフィードバックを誘発するのだ。だから自然なフィードバックを得られるという仕組み。なお、こうした方式であるため、ヘッドフォン使用時など、アンプで音を鳴らしていないときにはフィードバックは起きない。
さっそく試してみたが、これが本当に簡単なのだ。音を鳴らしている間にFB-2のペダルを踏み続けると、インジケータが点滅して、フィードバックが鳴り始める。FB-2が誘発した“リアル”なフィードバックなのだから当たり前だが、始まりのフェードインのしかたも、音の伸び方も本当にリアルで気持ちいい。そして、小さなアンプで小さい音でも、歪んでいないクリーンサウンドでもフィードバックが起きる。これは相当に面白い。
FEEDBACKのつまみは、フィードバックのしやすさ、つまりフィードバックの立ち上がりの速さを調整できる。弾いてしばらくしてからすうっと立ち上がってくるフィードバックも、ハウリングのようにキーンとすばやく来るフィードバックも自由自在に作れるというわけだ。このFEEDBACKと、CHARACTERの設定によって、フィードバックの音程や音質は変わってくる。また、ギターとアンプの位置関係、ギターの音色によっても変わるから、色々試してみて、フレーズや曲、演奏位置などにマッチするベストな設定を探しておくといいだろう。
■シンプルな機能のアンプでも多彩な音作りができる2製品
ブリティッシュ・コンボ・アンプの音を手に入れられるBC-2、そしてアンプやエフェクターとの組み合わせで様々な使い方ができるFB-2。どちらも、シンプルな機能のアンプでも、多彩な音作りを可能にしてくれるエフェクターだ。そしてこの2製品の組み合わせもとても面白い。BC-2とFB-2をギターケースに入れておけば、スタジオやライヴハウス、どこへ行っても、どんなアンプでも自分の音が作れるだろう。小さくても頼りになるエフェクターだ。
text by BARKS編集部 森本
◆BC-2
価格:オープン(予想実売価格 11,000円前後)
発売日:発売中
◆FB-2
価格:オープン(予想実売価格 11,000円前後)
発売日:発売中
◆BC-2 製品詳細ページ
◆FB-2 製品詳細ページ
◆ローランド
◆ボス
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
【ブリティッシュ・コンボの名機を再現するBC-2】
BC-2は、Combo Drive(コンボ・ドライブ)と名付けられた歪み系のエフェクター。製品名の“BC”からもわかるように、ブリティッシュ・コンボ・アンプのサウンドの再現を狙ったもので、60年代から現在まで多彩なジャンルで使われ続けている定番中の定番、VOXのAC30のサウンドが再現できる。60年代リバプール・サウンドに代表されるあのサウンドを手持ちのアンプで出せるとなれば、食指が動いてしまう読者も多いだろう。
BC-2のボディは、AC30のスピーカーグリルを思い起こさせるような、赤っぽい茶色。そこに4つのつまみが並んでいる。左からLEVEL(レベル)、BASS(ベース)、TREBLE(トレブル)、そしてSOUND(サウンド)だ。一般的なエフェクターと同様に、LEVELでエフェクトがオンのときの音量、TREBLEとBASSで、それぞれ高域と低域の増減を設定することができる。そして特徴的なのがSOUNDつまみ。歪みの強さと音のキャラクターをコントロールするものだ。時計で言う7時くらいの位置にCLEAN、12時の位置にCRUNCH、そして5時の位置にDRIVEという表示があるが、左から右へとこのつまみを回していくと、最初は歪みのないクリーンな音で、そこから徐々に歪みが増し、クランチサウンドからドライブサウンドへと変化していくという仕組みなのだ。
■まさに“60年代リバプール”なCLEANサウンド
まずはクリーンサウンドから試してみよう。SOUNDつまみを左いっぱい、BASSとTREBLEを12時の位置にして弾いてみると、ほぼ歪みのないまさにクリーンな音。といっても、JC-120(ローランドの名機と称されるギターアンプ)のようにギターの素の音そのままのクリーンサウンドではなくて、少し太さがあってあたたかみを感じる音だ。一音一音の粒立ちもいい。原音とどのくらい違うのか、オフにして比べてみると、低域が思いのほか増幅されているのがわかる。音が太くなっているだけではなく、中域~高域も力強さが増すことで、アタックが強調されて歯切れがよくなり、中域のもっとも大事なところが前に出て音程がしっかりと聴こえてくるのだ。さらにトーンコントロールでBASSを上げれば、アコースティック・ギターの胴鳴りのような迫力ある低音が出てくるし、TREBLEを上げると、ブリッジ寄りを弾いたときのようなジャリっとしたアタックが強調される。どんなセッティングでも音程感と太さが損なわれないのもいい。だから単音リードでも十分に使えるし、ジャカジャカとコードストロークをかき鳴らすととても心地いい。ビートルズの「All My Loving」のような曲はすごくハマるだろう。
■ナチュラルなCRUNCHサウンド、ピッキングニュアンスで歪みも変化
SOUNDつまみはゲインのような働きをするので、上げていくと徐々にレベルが上がり、歪みも増していく。そして9時くらいの位置からは一段と歪みが強くなるが、ここからがCRUNCHサウンドということになる。BC-2のCRUNCHサウンドは、いわゆる“クランチ・サウンド”の典型的な音。アタックはジャキッと明瞭、音圧があって抜けがいい。歪みは比較的粗めだが明るい音、サスティンもかなり伸びる。このCRUNCHでは、ギターのボリュームはもちろん、ピッキングのニュアンスにも反応して微妙に歪み方が変わるのも特徴だ。ギターのボリュームを絞ると、SOUNDつまみをCLEANにしたときと同じような音になるが、ボリュームを上げていくと徐々にアタックが鋭くなり抜けがよくなってくる。また弱めのピッキングでは歪みは軽く低音も出るが、強く弾けばアタックがより強く、ガツンと来る音になる。弾き方できちんとメリハリを出すことができるわけだ。逆にいえば、ピッキングのニュアンスが強調されることになるから、そこを意識して演奏する必要もありそうだ。
SOUNDつまみの位置によって、BASSとTREBLEのトーンコントロールの効き方が変わってくるところも面白い。SOUNDを9時から11時くらい、軽めの歪みにした場合は、BASSでは輪郭の太さを、TREBLEでは音の明るさを変えられる。この場合トーンの効きは控え目で、基本的な音質を保ったまま雰囲気を変えるのにちょうどよいくらいの感じ。これに対し、SOUNDつまみを12時から2時くらいの強めの歪みにした場合は、もっと過激に効くようになり、キャラクターを大きく変化させることができるようになる。BASSを上げると中域に近い低域が出て迫力が増してくるし、TREBLEを上げるとアタックがより強調されて力強くなり、ピッキングの強弱にもより反応するようになってくる。エフェクターで強く歪ませると、音がつぶれて微妙なニュアンスが伝わりにくくなることも多いのだが、このBC-2のCRUNCHサウンドでは、強く歪ませてもピッキングの強弱で音色に表情をつけることができる。グランジやハードロックはもちろんだが、ブルースやジャズであえて強く歪ませて使っても面白そうだ。
■本家コンボ・アンプ以上に歪むDRIVEサウンド
SOUNDつまみをさらに左に回し、DRIVEサウンドになると、歪みはかなり激しくなる。本家AC30ではここまで歪ませられないだろうというくらいの歪みだ。といっても、スタック・アンプのように全体がつぶれた歪みではなく、(CLEANやCRUNCHのときと同じように)粒立ちがよくアタックも明瞭に出てくるきめ細かい歪みになっている。このあたりは、“コンボ・ドライブ”たる所以だろう。基本的には中域が強調された図太くパンチあるオーバードライブ・サウンド。あえて例えるなら、ブライアン・メイがファズを使ったときのような音、と言ったらいいだろうか。トーンコントロールについては、BASSを上げるとあたたかみが増して弦が太くなったような音になり、下げると歯切れよくスッキリした音になる。またTREBLEはアンプにあるブライトスイッチのような働きになり、上げると高音弦の響きが強調され、ノイジーな歪みになる。個人的には、BASSを少し上げ、TREBLEを下げ気味にした設定がQUEEN初期のブライアン・メイみたいですっかり気に入ってしまった。
【いよいよBOSSから登場した人気上昇中のブースター FB-2】
もうひとつのFB-2は、フィードバック機能を持ったブースターだ。ブースターといえば、音量をかせいだり、より強く歪ませたりするために、イコライザーやオーバードライブなどをアンプ直前に入れ、これらをブースターとして使う手法も一般的だ。レベルを上げ、より強く歪ませるにはこれが一番だ。ヴァン・ヘイレンがBOSSコンパクトのオーバードライブOD-1を使っていたのはそのもっとも有名な例だろう。
ただこの方法ではどうしても歪みが生じてしまう。それを解決するのが、音のキャラクターを変えずにレベルを上げられるブースター、“クリーン・ブースター”と呼ばれるものだ。クリーン・ブースターを使う第一の利点は、もちろん音のキャラクターが変わらないこと。お気に入りのアンプやドライブ系エフェクターで作った歪みサウンドも、ブースターの歪みで邪魔されることがないのだ。また、1ch仕様のアンプでは、2chのアンプのようにクリーンチャンネルとドライブチャンネルを切り替えることはできないが、ブースターがあればペダルひと踏みでアンプに入力するレベルを切り替えられる。つまりアンプのゲインを2パターン設定しておけるのと同じで、アンプのチャンネルを切り替えるように使うことができるのだ。
■クリーン・ブースター、ミッド・ブースター、トレブルブースターの一台三役
このようにブースターといっても使い方によって様々な役割があるのだが、FB-2はそういった複数の役割を1台で実現してしまう。その秘密はCHARACTER(キャラクター)つまみにある。このつまみをもっとも左、7時の位置にするとフラット特性、つまり音を変えないクリーン・ブーストになるのだが、右に回すにしたがって高域と低域が抑えられ、もっとも右まで回すと中域を強調したミッド・ブーストになる。
まずはCHARACTERつまみをもっとも左、クリーン・ブーストの状態で試してみよう。BOOST LEVEL(ブースト・レベル)を徐々に上げていくと、音量が上がっていく。音質は変わらず音量だけが変わるので、まるでCDのボリュームを操作しているかのようだ。オフのときに比べ粒立ちもよくなっている。次にCHARACTERを12時の位置まで上げてみると、高音弦のきらびやかな感じと低音弦の太い音が薄くなり、かなりスッキリした軽快な音になる。さらにCHARACTERつまみを右に回し、ミッド・ブーストにすると、アタックがもっと強調され、音にパンチが加わってくる。中域がかなりブーストされているので、(アンプの設定にもよるが)軽く歪みも生じるが、乾いた感じのナチュラルな歪みだ。またTONEつまみで高音の調整ができるので、バリッとしたハリのある明るい音はファンク系のカッティングに似合いそうだし、甘めのあたたかい音はリードにもよさそうだ。もちろん高音を強調してトレブル・ブースターとして使うことも可能だ。
■ドライブ系エフェクターと組み合わせて歪みをブースト
FB-2単体でもかなり使えるのだが、歪み系エフェクターといっしょに使うことも多いだろう。そこで先ほど紹介したBC-2と組み合わせて使ってみることにした。まずは、BC-2→FB-2の順でつなぎ、BC-2で歪ませた音をブーストしてみた。予想通りだが、FB-2のBOOST LEVELを上げると、BC-2の歪んだ音のキャラクターはまったく変わらず、音量だけを上げることができた。ただし、CHARACTERの設定によっては歪み方が少し変わってくる。中域のレベルを上げると歪みがより強くなるため、ミッド・ブーストまで回すとかなりパワフルな歪みサウンドになるのだ。
次はもっともよく使われるであろうパターン、FB-2の後ろにBC-2を置き、FB-2でブーストした音をBC-2に送るというつなぎ方で試してみた。BC-2のSOUNDつまみは11時くらい、軽く歪むCRUNCHサウンドに設定。そしてFB-2をオンにすると、歪みはかなり強くなる。BC-2のSOUNDつまみを90度ほど右に回したのと同じくらい歪みが足される印象。そして歪み方もBC-2単体のときよりきめ細かくなった。全体の音のキャラクターは、FB-2のCHARACTERの設定によって変わる。フラットから右に回していくと、徐々に低音が減ってスッキリした感じになり、さらにミッド・ブーストまで回すと音圧のあるドライブ・サウンドになる。このドライブ・サウンドは迫力があってカッコいい。単音のリフなどでもかなり存在感が出てくるだろう。また、この組み合わせの場合は、BOOST LEVELをうまく調整すれば、音量を変えずに歪みだけをプラスすることもできる。まさにアンプのチャンネル切り替えのように使えるわけだ。
■小さいアンプでもクリーンサウンドでもフィードバック!
音を変えずにレベルを上げるというのは便利だが、地味な機能と言えなくもない。しかしFB-2には派手な機能も搭載されている。それはペダル一発でフィードバックを得られるという機能だ。普通は、フィードバックはまず大音量で弾いていることが前提となるし、さらに音色やアンプとの位置など様々な条件に左右されてなかなかうまくいかないもの。キッスのエース・フレーリーやヴァン・ヘイレンに憧れたものの、心地よいフィードバックを得られず悔しい思いをしたギタリストも多いだろう。しかしFB-2があれば、簡単にあのサウンドを出せるのだ。
フィードバックを生成するエフェクターといえば、オシレータ(発振器)を使って疑似的なフィードバックを鳴らすものを思い出すギタリストも多いかもしれないが、このFB-2はそれとはまったく違う仕組みを取り入れている。実際に鳴っている音から、フィードバックを起こしやすい帯域を自動的に検出し、その帯域をピンポイントでブーストすることで、リアルなフィードバックを誘発するのだ。だから自然なフィードバックを得られるという仕組み。なお、こうした方式であるため、ヘッドフォン使用時など、アンプで音を鳴らしていないときにはフィードバックは起きない。
さっそく試してみたが、これが本当に簡単なのだ。音を鳴らしている間にFB-2のペダルを踏み続けると、インジケータが点滅して、フィードバックが鳴り始める。FB-2が誘発した“リアル”なフィードバックなのだから当たり前だが、始まりのフェードインのしかたも、音の伸び方も本当にリアルで気持ちいい。そして、小さなアンプで小さい音でも、歪んでいないクリーンサウンドでもフィードバックが起きる。これは相当に面白い。
FEEDBACKのつまみは、フィードバックのしやすさ、つまりフィードバックの立ち上がりの速さを調整できる。弾いてしばらくしてからすうっと立ち上がってくるフィードバックも、ハウリングのようにキーンとすばやく来るフィードバックも自由自在に作れるというわけだ。このFEEDBACKと、CHARACTERの設定によって、フィードバックの音程や音質は変わってくる。また、ギターとアンプの位置関係、ギターの音色によっても変わるから、色々試してみて、フレーズや曲、演奏位置などにマッチするベストな設定を探しておくといいだろう。
■シンプルな機能のアンプでも多彩な音作りができる2製品
ブリティッシュ・コンボ・アンプの音を手に入れられるBC-2、そしてアンプやエフェクターとの組み合わせで様々な使い方ができるFB-2。どちらも、シンプルな機能のアンプでも、多彩な音作りを可能にしてくれるエフェクターだ。そしてこの2製品の組み合わせもとても面白い。BC-2とFB-2をギターケースに入れておけば、スタジオやライヴハウス、どこへ行っても、どんなアンプでも自分の音が作れるだろう。小さくても頼りになるエフェクターだ。
text by BARKS編集部 森本
◆BC-2
価格:オープン(予想実売価格 11,000円前後)
発売日:発売中
◆FB-2
価格:オープン(予想実売価格 11,000円前後)
発売日:発売中
◆BC-2 製品詳細ページ
◆FB-2 製品詳細ページ
◆ローランド
◆ボス
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
この記事の関連情報
BOSS、豊かな低域を実現するギターアンプ「KATANA-MINI」の上位モデルを発売
BOSS、上質なサウンドと機能性を備えたポータブルなマルチ・エフェクターを発売
ローランド、KDJ Recordsとのコラボによるサンプラー「SP-404MKII」の限定モデルを発売
打撃音と振動の発生を75%軽減したローランド史上最も静かな電子ドラムを発売
ローランド、いい音、軽量、簡単操作のライブ用シンセサイザー 3機種を発売
ローランド、ポケットサイズの電子楽器「AIRA Compactシリーズ」に本格的機能のサンプラーが登場
BOSS、ユニークなサウンドと新機能を搭載したディレイ・ペダルを発売
ローランド、プロ・ミュージシャン愛用のステージピアノ新モデル2機種を発売
BOSS、磨き抜かれた「Tube Logic」により表現力が大きく向上した「KATANA」の新モデル7機種を発売