THE BOHEMIANS、メジャー1st全国ツアー開幕。“もっと早くに出逢えば良かった”と後悔する前に参戦すべし

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THE BOHEMIANSの音と出逢ったのは、メジャー1stアルバム『憧れられたい』(2011年8月31日発売)がリリースされるちょうど1ヵ月ほど前に行なわれた取材のときだった。家に届けられた取材用のアルバム音源をいつものようにデッキに入れ、ソファに腰かけた。

◆THE BOHEMIANS 画像

相当主張の強いギターのハウリングから始まった、チャック・ベリーの「メイビリーン」に釘付けになった。

うわっ。なに、これ。最高にカッコイイんだけど。

思わず姿勢をただし、無意識に身を乗り出していた。様々な自分たちらしさを散りばめながらも、とにかくロックン・ロールをとことん楽しんでいるのが伝わってくる演奏と、いくつもの声色を使い分けて音の中で遊ぶ平田ぱんだのヴォーカルに一瞬にして引き込まれた。

それが彼らとの一方的な出逢いだった。こんなにもロックン・ロールを愛して止まないゴキゲンな奴らって、いったいどんな奴らなんだろ?

取材で顔を合わせた5人は至って普通の男子だった。どちらかと言うと全員人見知り。いや、星川ドントレットミーダウン(B)だけは人見知りの4人をフォローするように率先して積極的に話してくれていたっけ。しかし。デッキから溢れんばかりにぶつかって来た“あの”勢いが嘘のようにもの静かな5人だった……。

「ホント、普段メンバー同士5人の会話もないくらいなんですよ……」(本間ドミノ先生/Key)

と、キーボードの本間ドミノ先生が申し訳なさそうにボソッとつぶやく。楽曲が作られていった経緯に話が移ると、徐々にビートりょう(G)がロック・キッズのように興奮気味に話し始め、ヴィンテージな音色へのこだわりや聴き所などをチバ・オライリー(と無法の世界)a.k.aジャン(Dr)が丁寧に語ってくれた。

そんな中、極度な人見知りを感じたのはヴォーカルの平田ぱんだだ。音の中であんなに自由に手放しで楽しんで、音楽バカなイメージを抱かせたくせに、おいおい、どうした? 様子を伺うような目つきで慣れない空間を、とにかく居心地悪そうにしていた彼に俄然興味が沸いた。そう。天才は、こういうタイプに多い。

これが初めての彼らとの本当の出逢いだった。それから数日後、彼らがホームとする新宿紅布へ彼らのライヴを見に行った。目を疑った。え? これが、あの人見知り小僧ども!? いや。きっと、音源を聴いてすぐにライヴを見ていたら、音源のイメージどおりのロックな印象とその姿が合致していたのだろう。が、しかし、ライヴを見る前に、普段の音楽好きなごくごく普通の男子像と接してしまったがゆえに、ステージの上でキラキラと輝く最高にロックな野郎とのギャップに振り回されたのだ。

ヤバイわ。やっぱり。コイツら天才かも――。完全にスイッチが入った。ライヴを見た瞬間、彼らのことを初めてちゃんと知れた気がした。そう思うと、彼らとの初めての出逢いは、この日、新宿紅布でライヴを見た瞬間だったということになるのかもしれない。

とにかく、彼らのライヴには“好き”が溢れているのだ。とことんロックン・ロールを愛しているその愛が、止めどなく溢れ出ているのである。

彼らのライヴを見ていると、そんな“好き”が羨ましく思え、自分も彼らの“好き”な中にどっぷりと身を置いて、手放しで音を楽しみたくなるのである。彼らの音と歌にはそんな力がある。恐るべし。THE BOHEMIANS。

2011年10月30日。千葉LOOK。彼らは1stアルバム『憧れられたい』を引っさげ、初ツアーの初日のステージに立った。

19時28分。ツアー初日を一緒に盛り上げてくれたTHE WAYBARK(※1バンド目はザ・シャロウズ)からバトンを受け取る形で彼らの初ツアーの幕は開いた。

気だるさを纏う傷心的な歌声が印象的なシャンソンをSEに、THE BOHEMIANSはそのステージにゆっくりと姿を現わした。スポーツ観戦のときに聞くサポーターたちの熱い声に似た、彼らを渇望する声がフロアから沸き上がり、オーディエンスは一気に前へと押し寄せた。

りょうがアルバムの1曲目を飾る「メイビリーン」を、音源のド頭と同じくギターのハウリングからスタートさせると、オーディエンスはその音に応えるかのように右手を高く上げ、さらに前へと押し寄せた。4人が音を重ねると、ステージ上手から、初っ端から最高にご機嫌なぱんだが飛び出して来た。既にボルテージはゲージの針を遥かに振り切った状態だ。形式ばることなく、作り込まれた感のない、最高にロックな始まりにゾクゾクした。安定したボトムの上で鍵盤とギターが躊躇なく暴れまくるサウンドに、感情そのものがぶつけられるぱんだのヴォーカルが乗せられる。

全身でロックン・ロールを楽しむ彼らから放たれる音は、楽しくない訳がない。会場は後ろの方まで最高のノリが伝染していた。

このツアー前までのライヴでは、インディーズ時代にやりなれた『I WAS JAPANESE KINKS』(インディーズ・アルバム)の楽曲が中心に届けられていたこともあり、ニュー・アルバムの曲たちがオーディエンスとの間でどのように育まれていくのかを見るのも、このツアーを見る楽しみのひとつだったのだが、ナント、ツアー初日にして既に、彼らが音源の中で声を重ねているところや、掛け合いっぽい間を持たせてあるところなどが、5人とオーディエンスとで生み出される絶妙なライヴ感となっていたのだ。

「太陽ロールバンド」のサビでの掛け合いや「ガール女モーターサイクル」での息の合ったハンドクラップは、きっと彼らがこの曲を作ったときに想像していた景色以上の景色を生み出していたに違いない。

インディーズ時代の「お気にのチェルシー」での息の合ったオーディエンスの手拍子も最高の景色だった。

ライヴで聴きたいと思っていたルーズなロック感が魅力の「パーフェクトライフ」も、ライヴならではのテンポ感で届けられ、ぱんだはそこにしか乗らないこの日だけの言葉を歌詞として乗せて届けたのだった。

ジャジーなインストを4人が描き出す中、200%のニッコリとした笑顔を見せながらぱんだが話し始めた。

「これが、みんなが2,500円払って見に来たTHE BOHEMIANSだぜ! これがみんなが楽しみにしてたTHE BOHEMIANSのライヴだぜ!」(平田ぱんだ)

ここまで屈託のない笑顔を見せるのはステージの上だけ。本当に5人が裸になれる瞬間はここなのだ。届ける側としてとにかくこの空間を誰よりも楽しみ、その楽しさを抱え込むことなく、自分もオーディエンス目線でこの空間を受け取る側の立場としても楽しもうという彼らの気持ちは、より深くオーディエンスを引き寄せていたように思う。

「これな~んだ?」(平田ぱんだ)

ぱんだのヤツ、いきなりクイズか!? 気取らないぱんだのMCに場が和む。ぱんだが手に持っていたのはスレイベル。「憧れられたい」のイントロの始まりで使われているクリスマスを思わすベルである。

「これね、千葉くんが9,800円も出してこの曲のためだけに買ってきたんだよ。いいドラマーを入れたもんだぜ! この音から始まるTHE BOHEMIANSの曲ってなぁ~んだ?」(平田ぱんだ)

おいおい、またクイズかよ!? そんな問いにフロアからは「憧れられたい」の曲名が上がる。さすがである。ここに集まったオーディエンスたちが、この日まで何度も繰り返しCDを聴き、この日をどんなにか待ち遠しく思っていただろうことが伝わってきた。

「この鈴鳴らすの結構大変なんだよ。やってみる? やってみたい人~」(平田ぱんだ)

ぱんだは1人のオーディエンスにスレイベルを託し、ビートりょう、星川ドントレットミーダウン、本間ドミノ先生、チバ・オライリー(と無法の世界)a.k.aジャンは、その音から「憧れられたい」をスタートさせたのだった。この瞬間、我慢できないくらい胸が熱くなった。自分たちが憧れた時代があるからこそ、こんなにもあたたかく、一緒に楽しめる空間が作れるのだろう。そう思った。慣れない手つきで一所懸命に鳴らされたちょっぴり頼りなく弱々しいスレイベルの音は、冬っぽくも夏の風を感じる彼ららしいクリスマスな空気を運んでくれた。

最高にカッコイイ、ロックン・ロールなノリだけじゃない。彼らの音にはハートがある。どこかに置き忘れてきた、忘れかけていた感情が、彼らの曲と歌詞によって掻き立てられるのだ。本当にいいバンドだ。出逢えて良かった。改めてそう感じた。

後半ではアルバムのリード曲である「THE ROBELETS」を届け、ラストはいつものように「ロックンロール」で締めくくられたのだが、40分ほどのライヴでは満足しきれなかったのだろう、彼らが去ったステージに、オーディエンスからのアンコールの声が向けられた。

【本編を「ロックンロール」で締めくくった後は、自分たちのオリジナル曲はやらない】というのが、彼らのインディーズ時代からのルール。そう。彼らはいつも、アンコールはカヴァー曲で応えるのだ。この日は、山形時代にチャック・ベリーの曲に勝手に歌詞を乗せて歌っていたという「僕のバズーカ」を1曲目に届けた。この曲を届ける彼らは、もはやロックン・ロール・キッズ。あまりにも楽しそうに音を届けて叫びまくる5人の姿に、思わず吹き出してしまった。

彼らは、その曲終わりでこのツアーの初日を一緒に盛り上げてくれたTHE WAYBARKとザ・シャロウズをステージに呼び込み、彼らが憧れてやまないTHE HIGH-LOWSの「ロックンロール黄金時代」を、次にロックンロールを担うであろう新進ロックバンド3組で一緒に騒ぎ、ステージを降りた。

しかし。それでも更にアンコールは鳴り止まなかった。彼らはその声に、2回目のアンコールに応えてくれたのだ。

「リクエストある?」(平田ぱんだ)

そんなぱんだの声にオーディエンスから、THE BOHEMIANSのいろんな曲名が飛び交う。けれどもアンコールではオリジナル曲をやらないのが彼らのルール。しかし、彼らはこの日、そのルールを破ったのだ。

「ルール破ってまでやんだから、ちゃんと盛り上がってくんなきゃダメだよ!」(平田ぱんだ)

予定になかった展開だったが、客席からの声が多かった「明るい村」を彼らは急遽届けてくれた。

「あ~、ロックン・ロール好きで良かったぁ。あ~、ロックン・ロールやってて良かったぁ」

そんな本心と200%の笑顔を残して5人はツアー初日のステージを終えたのだった。

最高のライヴから幕を開けたツアーは現在続行中。11月23日には大阪・アメリカ村FANJtwice、11月29日には東京・shibuya wwwでワンマンも行なわれることになっている。

彼らの音とまだ出逢っていない人は、ぜひ彼らの音と出逢ってほしい。きっと、出逢って良かったと思うはず。きっと、もっと早くに出逢えば良かったと思うはず。でも、きっと、彼らは何処から出逢っても、出逢っていなかった時間の分までの楽しさもくれるはず。

最高のロックン・ロールバンドTHE BOHEMIANS。
彼らの未来に、眠れないデカめの夢を見るとしよう。

取材・文●武市尚子


<THE BOHEMIANS 憧れられられられたいツアー 2011>
10月30日(日) 千葉 LOOK
11月1日(火) 仙台 PARK SQUARE
11月2日(水) 青森 SUNSHINE
11月4日(金) 京都 KYOTO MUSE
11月6日(日) 岡山 CRAZYMAMA 2ndROOM
11月7日(月) 広島 ナミキジャンクション
11月11日(金) 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
11月13日(日) 福岡 graf
11月15日(火) 高松 DIME
11月16日(水) 金沢 vanvan V4
11月19日(土) 札幌 KRAPS HALL
11月22日(火) 浜松 MESCALIN DRIVE
11月23日(祝) 大阪・アメリカ村FANJtwice(大阪初ワンマン)
11月29日(火) 東京・Shibuya WWW(ワンマン)
◆チケット詳細&購入ページ

メジャー1stアルバム
『憧れられたい』
2011年8月31日発売
FLCF-4397 ¥2,500(tax in)
1. メイビリーン
2. 夢と理想のフェスティバルに行きたい
3. パーフェクトライフ
4. ガール女モーターサイクル
5. THE ROBELETS
6. Goodmusictime !!
7. 太陽ロールバンド
8. 私のシンフォニー
9. 王国の謎
10. 憧れられたい
11. FaFaFa(素敵じゃないか)
12. 五人の若者劇場『タイムマシーン秘話』

◆THE BOHEMIANSオフィシャル・サイト

  
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