ロバート・グラスパー、「その場で生まれた“奇跡”を僕自身も楽しみたい」

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ジャズピアニストのロバート・グラスパーが9月24、25日、ビルボードライブ東京で来日公演を開いた。24日の1部のステージではアルバム『ダブル・ブックド』(2009年発売)に収録した「FESTIVAL」など5曲を披露。集まった聴衆を美しいメロディーで酔わせた。

◆ロバート・グラスパー画像

開演時刻を過ぎ、右手を挙げてゆったりと登場したグラスパー。スニーカーに、革ジャン姿の奇才をフロアは拍手で出迎えたが「東京、元気なの??」の問いかけには口をつぐむ場面も。控えめな反応に「ねぇ、みなさん大丈夫?? そんなに静かだと僕たちうまく演奏できないかも」とジョークを飛ばし、一気に会場の空気を和ませた。

5曲中、演奏を決めていたのは1曲目の「至上の愛」のみ。後の4曲は「エクスペリメント」としてともに活動するメンバーの出方を見て曲を繋いでいった。バンドは客席を向いて演奏することが多いが、4人は互いの出方を感じ取るため、互いに向き合うような形でステージを組んでいる。誰が舵を取って行くのか、その瞬間まで誰にも分からない。どちらに振り子が揺れるのか、音に任せた心地良い揺らぎは会場中に広がっていた。

公演後のインタビューでグラスパーは、ステージは水の奥底で揺れながら演奏をしているような感覚と語り、「音楽が持つスピリットが、ステージの方向を決めてくれるから演奏曲は決めないんだ。僕たちは曲について行くだけ。次に何を演奏するか誰にも分からない。その場で生まれた“奇跡”を僕自身も楽しみたいしね。そして曲もライブごとに成長していくんだ。お互いの出方をチェスのようにいくつも読んでいるんだよ。そのときのアイデアが新しい音に繋がっていくんだ。音楽はどんどん変化していくんだよ」と目を輝かせた。

今回の来日はロバート・グラスパー・エクスペリメントとしてステージに立った。「日本のファンは静かすぎるから、本当は僕のこと嫌いなの??って思ってしまうこともあるけど、リスペクトをして聴いてくれているんだと感謝している」と振り返った。来年には、「ジャズの概念をこえた自信作」というアルバムの発売を予定している。

写真:Masanori Naruse
取材・文:西村綾乃

◆BARKS洋楽チャンネル
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