まだ日本ではブレイクしていない、アメリカのビッグスターたち

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日本で並外れて人気の高い外国人アーティストがいる反面、本国で非常に人気があるのになぜか日本での知名度がふるわないアーティストもいる。これには複数の理由が考えられる。そのバンドが歌詞をメインにして音楽展開している、もしくはネガティブなイメージやちょっと地味で退屈なイメージが先行していること、そして最大の理由が積極的に来日公演を行っていないことだろう。

以下に挙げるのは、日本ではほとんど知られていないアメリカの大物スター達である。

●ボブ・シガー(Bob Seger)

ボブ・シガーは、1969年に発表したデビュー・アルバム『ランブリン・ギャンブリン・マン』でヒットを飛ばして以来、アメリカのFMラジオで人気の高いアーティストだ。

ブルーカラーの街から生まれた気骨のある荒削りな“デトロイト・ロック”サウンドは、日本の音楽リスナーには、ザ・ストゥージズ、MC5、ミッチ・ライダー、グランド・ファンク、もしくはホワイト・ストライプスを彷彿させるかもしれない。しかし、シンガーソングライター/ロッカーのボブ・シガーは、セールス面・集客力・持続力において、これらのアーティスト全員を足したよりもビッグな存在なのである。

ボブ・シガーの曲は、シン・リジー(「ロザリー」)、メタリカ(「ターン・ザ・ページ」)、デイヴ・エドマンズ(「ゲット・アウト・オブ・デンバー」)など多数のアーティストにカバーされている。その他にもイーグルズのヒット曲「ハートエイク・トゥナイト」を共作しており、オリジナル曲「オールド・タイム・ロック・アンド・ロール」は、パッツィー・クラインの「クレイジー」の次に、ジュークボックスで最も多くリクエストされる曲だ。映画『卒業白書』でトム・クルーズがこの曲に乗って下着姿で踊りまくるシーンは、映画史上名場面の1つになっている。

ライブ・パフォーマーとしても有名であり、500万枚上のセールスを記録したライブ・アルバム『ライブ・ブレット』をはじめ多数のプラチナム・アルバムを獲得、2004年にはロックの殿堂入りを果たした。現在行なっている2011年のアリーナ・ツアーも間違いなくほぼ全公演完売となるだろう。

このように音楽業界の大御所にも関わらず、残念ながら日本のレコード・ショップでは彼の作品をあまり積極的に取り扱わないのが現状だ。

●ニール・ダイアモンド(Neil Diamond)

素晴らしいポップセンスを持ち合わせたシンガーソングライターで、作曲面でも、パフォーマーとしても素晴らしい実績を築いている。彼の代表的曲は、モンキーズの「アイム・ア・ビリーバー」、バーバラ・ストライサンドのメガヒット曲「ユー・ドント・ブリング・ミー・フラワーズ」、ディープ・パープルの人気曲「ケンタッキー・ウーマン」、UB40の世界的ヒット曲「レッド、レッド・ワイン」など、様々なアーティスト達に、幅広いタイプの曲を提供し世に送り出している。

自身でも多数のヒット曲を歌っている。カバー曲として人気の高い「ソリタリー・マン」、ロック・ナンバー「チェリー・チェリー」やセンチメンタルな「ソング・サング・ブルー」などで、ドラマチックな彼のライブ・パフォーマンス・スタイルは有名で、巷では“ユダヤ系エルヴィス”と呼ばれている。

これまでに北米で5千万枚以上、全世界では1億枚以上のアルバム・セールスを記録。これまでに一度も来日してないが“日本人受け”するタイプの音楽だ。現在70歳の彼は、名プロデューサーのリック・ルービンと最新アルバムをレコーディング中、これから日本で人気が出るチャンスはまだまだあるかもしれない。

●デイヴ・マシューズ(Dave Matthews)

1990年代末にジャムバンド・ブーム期にスーパースターとなったデイヴ・マシューズは、長年北米トップの集客力を持つアーティストとして活躍してきた。

ベン・ハーパーやギャラクティックの様なルーツ系の音楽でなく、小柄で並のルックス、飛びぬけてユーモアーがあるわけでもなく、超凄腕の演奏テクニックがある訳でもない。さらにこれまでに特筆すべきラジオ・ヒット曲もない。しかし、彼が素晴らしいのはライブで、オーディエンスを虜にする魅力があり、ライヴを行なうたびに、即興でいとも簡単にアレンジしてみせるその才能は、ファンに熱烈に支持されている。

これまでに発表した7枚のスタジオ・アルバムは全てプラチナムを獲得、中でも1998年に発表した3枚目のアルバムからのシングル曲「クラッシュ」は700万枚以上のセールスを記録した大ヒット曲だ。2010年には、ボン・ジョヴィとロジャー・ウォーターズに次いで、北米で最もライブ動員の多かった3大アーティストになり、この記録はイーグルズやレディ・ガガを上回るものだった。

しかし、これまで来日公演を行なったことがなく、最近は俳優業でも多忙なため、近い将来に来日する可能性は低いだろう。

●ガース・ブルックス(Garth Brooks)

アメリカで1億2800万枚の以上のアルバムを売上げてきたカントリー歌手。これまでに発表した6枚のアルバムは全て1千万枚以上のセールスを記録している。彼の売上げを超えるソロ・アーティストはおらず、ソロに限定しなくても、ビートルズの次に売れている歌手で、カントリーは売れないという概念を覆した。

鼻にかかったカントリー調の声で歌う彼の曲には、ポップとロックの影響を強く受けたものが多い。彼は影響を受けたアーティストに、ブルース・スプリングスティーン、ジェームス・テイラー、ダン・フォーゲルバーグ、フレディー・マキュリーらを挙げている。実際のところ、フレディーほどの器量は備えていないが、優れたショーマンであることは確かだ。

しかし、活動全盛期だった1990年代でも日本ではほとんど話題に上ることはほとんどなく、現在に至る。今は半ば隠居生活を送っているため、来日が実現する可能性はないだろう。

●ジミー・バフェット(Jimmy Buffet)

アメリカ・ミシシッピー出身のシンガーソングライター。人生の浮き沈みや、答えを求めて逃亡した熱帯の楽園で、ビールやマルガリーターを飲みながら過ごす日々について書いた曲が多く「カム・マンデー」といった素晴らしいラブソングも手がけている。ベストセラー作家としても活動中の他、長年に渡り自身のレコード・レーベルを主宰、ビール会社やレストラン・バーを経営するビジネスマンでもある。ラジオにヒット曲を送り出すという点では全盛期を過ぎたように見えるが、北米中のスタジアム公演を満席にできる集客力は一向に衰えていない。

彼のファン“パロットヘッド”は、主に1977年に発表された6枚目のアルバム『Changes in Latitudes, Changes in Attitudes』に収録されているメガヒット曲「マルガリータヴィル」、1978年発表のアルバム『Son of a Son of a Sailor』収録の「チーズバーガー・イン・パラダイス」、1973年発表3枚目のアルバムに収録の伝説的な『A White Sport Coat and a Pink Crustacean』の「ホワイ・ドント・ゲット・ドランク(アンド・スクリュー)」を聴いて育った世代だ。

そんな彼もまた一度も来日公演を行なったことがない。よく彼のツアーに参加しているウクレレ奏者のジェイク・シマブクロといつか一緒に来日を果たすことに期待したい。

キース・カフーン(Hotwire)

◆【連載】キース・カフーンの「Cahoon’s Comment」チャンネル
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