映画『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』、正体不明のジャンデックを解く?
謎が謎を呼ぶミュージシャンの正体を探るドキュメンタリー『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』の公開を記念し、1月9日(日)に、批評家の佐々木敦氏と評論家の湯浅学氏がトークイベントに登壇、さまざまな憶測から、リアルなライブ活動までジャンデックの正体に迫った。
◆『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』予告編映像
ジャンデックの歌には、メロディといえるものもほとんどないようなもので、コードの展開もサビもリフもない。ビートも見当たらない曲が多い。ギターのチューニングはめちゃめちゃだ。一応EADGBEのレギュラー・チューニングに沿ってはいるものの、そのいい加減さは、楽器として音楽を奏でる以前のデタラメ具合。毎年コンスタントにアルバムをリリースし、既に30枚以上の作品を発売しているが、全て自身のレーベルからのリリースで、私書箱宛のコンタクトでのみ購入可能というものだ。そもそも彼自身一切のメディアに登場しないため、ネット時代の現在ですら謎に包まれたままだ。
『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』は、そんなテキサス州のアシッド・フォーク・シンガー、ジャンデック(ヤンデック)のドキュメンタリーだ。その経歴が謎に包まれたアーティスト、JANDEKの音楽の素晴らしさを、雑誌編集者やラジオDJの証言とともに伝えた作品となっている。
佐々木氏は、ジャンデックを知ったきっかけについて、「ライターを始めた1987年にボアダムスの山塚アイに「ジャンデックって知ってる?狂ったやつがCD出してるよ」って言われたのがきっかけ」と語り、湯浅氏は初めて聞いた印象を「思ったより地味だなと思った。どの歌も似ていて全部替え歌みたいで、全部合わせて1曲ってイメージなんだよね」とジャンデックの音楽の不可思議な魅力について語った。
「この映画『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』が公開された直後の2004年に、全く何の説明もなくグラスゴーのフェスで姿を現しちゃった。その後は、あらゆるフェスやライブに出演してるんですよ。でも告知しないから運のいい人しか観られない。ライブの模様は毎回2カメで撮ってなんとDVDまで出している!」との佐々木氏の発言に、「もう謎じゃないじゃん!」と会場からからの突っ込みが。
「ジャンデックは日本語版のウィキペディアにも載っていて、しかも本名まで明かされている。ライブもYouTubeで検索したら見ることができるし、もはや謎ではないのかもしれない」という佐々木氏に、「でもウィキも信用できないよね。ライブをやっているのがジャンデックという保証もないし、誰もはっきりと確認するすべがないのだから」と湯浅氏。「もしかしたら影武者かもしれない!」との佐々木氏の一言に、湯浅氏も「ジャンデック1号、2号、3号がいてみんな同じように歌えるのかも(笑)」と話し、会場からの笑いを誘った。
佐々木氏は最後に、「最近では気になるものはインターネットで検索すればすぐに出てくるけど、家に帰ってYouTubeを検索せずに、妄想にひたってみるものいいかもしれない。ジャンデックも今の世の中に出てきていたら扱いが違ったかもしれないな」と簡単に情報を受けとることができる現代社会の問題点についても言及した。
ただただ滅茶苦茶にしか聞こえないチューニングの狂ったギターの演奏も、ライブではCD音源をそのまま再現するというから、只者ではない。常人の感覚を大きく飛び越えた奇才であることは確かだ。
『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』
監督:チャド・フライドリッヒ
製作スタッフ:チャド・フライドリッヒ、ポール・フェラー
2003年 / アメリカ / 88分
ブルース、調子外れの音、なんとなく頭から離れない歌詞。ただ1回もライブを行うことなく、人前に現れず、25年間で34枚のアルバムを出した。連絡方法は、私書箱宛の手紙のみ。“ジャンデック”というのが男の本名かどうかさえ謎。ジャンデックはファーストアルバム「Ready for the house」を1978年に彼自身の音楽レーベル、コーウッド産業より発表した。もちろん、彼がこのレーベルのたった一人のアーティストだ。様々な出版物のレビューや記事の多くでは「不気味」「率直」「ぼんやり」といった言葉が突出している。けれどもジャンデックの音楽の特殊性を正確にとらえることは誰にもできない。しかしながら、音楽よりもおもしろいのは彼にまつわる“謎”。ほとんど誰にも聞かれることのないアルバムを1年に1枚は発売し続け、活動を続けるこの男は誰なのか?彼はライブやインタビューを通じて自分のアルバムを宣伝することを拒み、なインディーズ音楽雑誌で広告を出すのみ。ラジオDJ、レコード店の店主、雑誌編集者・・・ジャンデックはファンはみな、ジャンデックについてあれこれ想像する。それぞれのファンのジャンデックのイメージは、彼や彼女自身をどれくらい反映しているだろうか?本作の制作を開始するとき、プロデューサーのポール・フェラーがコーウッドに手紙を書いた。後日届いた返信には、「全ての質問には答えかねます」と書いてあった。
◆『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』予告編映像
ジャンデックの歌には、メロディといえるものもほとんどないようなもので、コードの展開もサビもリフもない。ビートも見当たらない曲が多い。ギターのチューニングはめちゃめちゃだ。一応EADGBEのレギュラー・チューニングに沿ってはいるものの、そのいい加減さは、楽器として音楽を奏でる以前のデタラメ具合。毎年コンスタントにアルバムをリリースし、既に30枚以上の作品を発売しているが、全て自身のレーベルからのリリースで、私書箱宛のコンタクトでのみ購入可能というものだ。そもそも彼自身一切のメディアに登場しないため、ネット時代の現在ですら謎に包まれたままだ。
『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』は、そんなテキサス州のアシッド・フォーク・シンガー、ジャンデック(ヤンデック)のドキュメンタリーだ。その経歴が謎に包まれたアーティスト、JANDEKの音楽の素晴らしさを、雑誌編集者やラジオDJの証言とともに伝えた作品となっている。
佐々木氏は、ジャンデックを知ったきっかけについて、「ライターを始めた1987年にボアダムスの山塚アイに「ジャンデックって知ってる?狂ったやつがCD出してるよ」って言われたのがきっかけ」と語り、湯浅氏は初めて聞いた印象を「思ったより地味だなと思った。どの歌も似ていて全部替え歌みたいで、全部合わせて1曲ってイメージなんだよね」とジャンデックの音楽の不可思議な魅力について語った。
「この映画『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』が公開された直後の2004年に、全く何の説明もなくグラスゴーのフェスで姿を現しちゃった。その後は、あらゆるフェスやライブに出演してるんですよ。でも告知しないから運のいい人しか観られない。ライブの模様は毎回2カメで撮ってなんとDVDまで出している!」との佐々木氏の発言に、「もう謎じゃないじゃん!」と会場からからの突っ込みが。
「ジャンデックは日本語版のウィキペディアにも載っていて、しかも本名まで明かされている。ライブもYouTubeで検索したら見ることができるし、もはや謎ではないのかもしれない」という佐々木氏に、「でもウィキも信用できないよね。ライブをやっているのがジャンデックという保証もないし、誰もはっきりと確認するすべがないのだから」と湯浅氏。「もしかしたら影武者かもしれない!」との佐々木氏の一言に、湯浅氏も「ジャンデック1号、2号、3号がいてみんな同じように歌えるのかも(笑)」と話し、会場からの笑いを誘った。
佐々木氏は最後に、「最近では気になるものはインターネットで検索すればすぐに出てくるけど、家に帰ってYouTubeを検索せずに、妄想にひたってみるものいいかもしれない。ジャンデックも今の世の中に出てきていたら扱いが違ったかもしれないな」と簡単に情報を受けとることができる現代社会の問題点についても言及した。
ただただ滅茶苦茶にしか聞こえないチューニングの狂ったギターの演奏も、ライブではCD音源をそのまま再現するというから、只者ではない。常人の感覚を大きく飛び越えた奇才であることは確かだ。
『ジャンデック~謎のミュージシャンの正体を追う~』
監督:チャド・フライドリッヒ
製作スタッフ:チャド・フライドリッヒ、ポール・フェラー
2003年 / アメリカ / 88分
ブルース、調子外れの音、なんとなく頭から離れない歌詞。ただ1回もライブを行うことなく、人前に現れず、25年間で34枚のアルバムを出した。連絡方法は、私書箱宛の手紙のみ。“ジャンデック”というのが男の本名かどうかさえ謎。ジャンデックはファーストアルバム「Ready for the house」を1978年に彼自身の音楽レーベル、コーウッド産業より発表した。もちろん、彼がこのレーベルのたった一人のアーティストだ。様々な出版物のレビューや記事の多くでは「不気味」「率直」「ぼんやり」といった言葉が突出している。けれどもジャンデックの音楽の特殊性を正確にとらえることは誰にもできない。しかしながら、音楽よりもおもしろいのは彼にまつわる“謎”。ほとんど誰にも聞かれることのないアルバムを1年に1枚は発売し続け、活動を続けるこの男は誰なのか?彼はライブやインタビューを通じて自分のアルバムを宣伝することを拒み、なインディーズ音楽雑誌で広告を出すのみ。ラジオDJ、レコード店の店主、雑誌編集者・・・ジャンデックはファンはみな、ジャンデックについてあれこれ想像する。それぞれのファンのジャンデックのイメージは、彼や彼女自身をどれくらい反映しているだろうか?本作の制作を開始するとき、プロデューサーのポール・フェラーがコーウッドに手紙を書いた。後日届いた返信には、「全ての質問には答えかねます」と書いてあった。
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