向谷実×中西圭三プロジェクトにみる、明日のアーティスト像

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向谷実×中西圭三プロジェクトとして、6月8、9日の2日間にわたり横浜ランドマーク スタジオで2日間ぶっ続けのレコーディング風景がUStream中継されていたのはご存知だろうか。

不眠不休で作品が作られていく様は音楽ファンからミュージシャンまで数千人のフォロワーに大きな刺激と感動を与えることとなった。そして12日には、その楽曲が24bit/96kHzで高音質配信が開始される。この正常とは思えないスピード感とこれまでの常識ではありえないアーティストとオーディエンスとの関係性が現実のものとなった2010年6月…これは記憶に留めるべきエポックな事象だ。

今回のプロジェクトは、UStream配信を行なっていた向谷実のタイムラインに中西圭三が現れたことに端を発している。その後ふたりはお互いに顔をあわせることなくTwitter上で協議を重ね、一緒に曲を作り、UStreamで配信しようという向谷実の提案を中西圭三が快諾する形でスタート。全てのやりとりはTwitter経由であったため、フォロワー達がその様子をリアルタイムで見守ることとなった。ミュージシャン同士が共鳴しあう様子を一般オーディエンスが俯瞰で見守るという構図自体も、これまでにはあり得なかったことだ。

そしてふたりは向谷実のスタジオで2曲の曲作りを行なうことになるが、その様子も全てUStreamで中継され、タイムライン上のフォロワーをプロデューサーと呼び、その意見も取り入れながら制作はインタラクティブに進行してくことになる。歌詞もフォロワーから一般公募して選ばれたものを採用し、その場で作詞家2名が誕生することにもなった。

そうやって制作された2曲をもって、彼らは6月8、9日の2日間にわたって「ランドマーク スタジオ」入り。今回のプロジェクトに賛同するミュージシャンやアーティストが多数参加した収録風景は、合計13台のカメラでリアルタイムにUStream中継されるという異例の体制が敷かれていた。2日間にわたり視聴者数は絶えず、数千人のフォロワーがこの一大プロジェクトが出来上がっていく様を見守ることとなった。


今回の施策には、UStreamやTwitterなどの新しいメディアが誕生したことによる著作権の考え方を問い直す、という向谷実の意図も込められている。音楽出版社やプロダクションなどといった立場ではなく、ミュージシャンとしての立場からの問いかけだ。

「ソフトバンク代表の孫さんの言葉じゃないですけど、我々は一種の武器を手に入れたワケです。いろんな情報を発信出来ます。だけど、それをどうやって使うか。使い方を間違えれば、危険なコトになるんで、それをみなさんと考えながら、権利の問題…Ustream内での著作権や著作隣接権に関して一緒に考えていけたらと、思ってます。今回プロジェクトは、レコード会社も、音楽出版社も、プロダクションもJASRACも一切関係ないという、産地直送型音楽配信システム。やはりひとつの事実を作って、それを元に次の新しい音楽に於ける隣接権や著作権のスキームをみんなで考えようというつもりでやるので、それは別に何かを否定したり、敵対したり、というつもりはありません。いろんな形で、みんなが楽しめる音楽環境を作る為に、一緒に活動して、一緒に歩んで頂けませんか?」──向谷実

収録後のミキシング、マスタリングの様子もUStreamされ、ミュージシャンのレコーディングの実情が驚くほど赤裸々に配信されていく。収録開始から48時間以内を目指した配信開始は、向谷実のモバイルサイトからすでに公開されており、そのスピード感たるや、ドキュメント映像を速回ししているような感覚だ。

そしていよいよスタジオマスター・クオリティの24bit/96kHzの高音質音源の配信がe-onkyo music独占で、6月12日(土)午前0時からスタート。異例尽くしの今回のプロジェクトだが、アーティストの頭の中には既にイメージされていたことのはずだ。そしてこれが実現できることがあっさりと証明されるとともに、余計なノイズを取り去ってアーティストとオーディエンスを直結する刺激的な取り組みの清らかさのようなものも、漂っている。

7月1日(木)からは、各トラックを別々のファイルに切り分けたマルチトラック・バージョンの24bit/48kHz配信もe-onkyo musicで提供される。DRM(著作権保護技術)は施されないので、ユーザー自身の歌のトラックに、この一流音源を使用することも可能なわけだ。

なお、ファンを信じて「DRMは施したくない」という向谷実の強い要望を受け、6月12日配信開始のオリジナル音源についても、7月1日からはDRMが解除される予定となっている。

確実に時代は進んでいる。崩壊しつつある音楽ビジネス構造の横で、新たな息吹が芽を吹き始めているのだ。

向谷実×中西圭三プロジェクト(24bit/96kHz)
1.Twilight Stream
2.21st Love Express

参加アーティスト:向谷実(キーボード)、中西圭三(ボーカル)、神保彰(ドラムス)、鳴瀬喜博(ベース)、斉藤英夫(ギター)、宮崎隆睦(サックス)、坂本美雨、DJ TARO、サッシャ、鈴木睦美ストリングス、ほか

◆向谷倶楽部オフィシャルサイト
◆「e-onkyo music」サイト
◆iTunes Store 向谷実×中西圭三プロジェクト(※iTunesが開きます)icon
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