表情豊かにしゃべる機能を付加したVOCALOID-flexの提供を開始

ポスト
ヤマハは、歌声合成ソフトVOCALOID(ヴォーカロイド)の合成エンジンソフトウェアをさらに進化させた形で、新たに「VOCALOID-flex(ヴォーカロイド フレックス)」として提供を開始する。これにより、従来のVOCALOIDの歌唱合成機能だけでなく、表現豊かな「しゃべり」を付加して実現することが可能となる。ヤマハではVOCALOID-flexを使って音声合成ビジネスを希望する各企業向けに順次提供を開始。一般ユーザー向けの提供予定はない。

VOCALOIDは、歌詞とメロディを入力するだけで、楽曲のボーカルパートを制作できる歌声合成ソフトウェア。2003年に開発され、ライセンス販売を開始。ライセンスを受け発売された海外製ソフトウェアに続いて国内でも登場した「初音ミク」や「がくっぽいど」などで一般にもその名を知られることになった。

ネット上の動画共有サイトなどでは、当初ターゲットとしていた歌唱だけでなく、叫び声やセリフなどの「しゃべり」をVOCALOIDで実現しようという試みを多くなされていたが、その実現には多大な労力と時間を有する上、「しゃべり」特有の表現力にも限界があった。また、従来の音声合成の主流であるText to Speech(以下TTS)では、人間の感情や方言などを豊かに表現した音声を合成することは困難で、より人間の感情を豊かに表現した、新たな音声合成方式が望まれていた。ヤマハでは、こうした背景のもと、TTSなどの音声合成方式とは異なる形で、本来VOCALOIDが持つ歌唱合成技術を生かした形で表現力豊な「しゃべり」を実現するために、開発を進めてきたという。 こうして実現したのが今回発表となったVOCALOID-flexというわけだ。


VOCALOID-flexは、歌声に比べ音の微細な変化が要求される「しゃべり」を実現するために、従来のVOCALOIDでは実現できなかった、音韻(音素などの音の構成や長さ)や韻律(音の高さ、強さ)の細かな編集を可能にした歌声および発話の合成エンジンソフトウェア。これまでできなかった母音の無声化(母音を無声音として発音するケース(例:北[ki ta]の[i]))や脱落化(母音を発音しないケース(例:~です[de su]の[u])が表現可能となり、子音の長さならびに音の高さや強さも細かく編集することが可能。その結果、より人間に近い発話ができるようになり、話し声における細かいニュアンスや、表情豊かな方言等のアクセントやイントネーションもつけることが可能となっている。

なお、VOCALOID-flexで使用する音声ライブラリは、新たに新しい音の素材を追加することなく、既存の歌声ライブラリの活用が可能だという。既存のVOCALOID製品へのしゃべる機能の追加も期待できるだろう。

ヤマハでは、このVOCALOID-flexの提案により、愛好者から一般の人々にユーザーが拡大しつつある歌声合成の楽しみにさらなる表現力を加えるとともに、2009年4月発表のNetVOCALOIDとの組み合わせで、幅広いユーザーに新たなVOCALOIDの可能性を普及・浸透を目指す。

VOCALOID-flexを活用したビジネス展開もすでに発表されている。その第1弾は、コナミデジタルエンタテインメントが4月29日に発売予定の人気ゲーム「METAL GEAR」シリーズ最新作「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER」。この登場キャラクターの音声制作ツールとして使用が決定している。

今後はライセンシー企業により、従来のVOCALOID同様PCソフトウェアビジネスをはじめ、ネットビジネスや、ハードウェアへの組み込みなど、幅広い活用がなされるはず。前述のとおり一般ユーザー向けの提供予定はないので、ユーザーとしてはVOCALOID-flexを利用したユニークな製品・サービスの登場を期待して待つこととしよう。

◆ヤマハ ニュースリリース
◆ヤマハ

◆BARKS 楽器チャンネル
この記事をポスト

この記事の関連情報