サイモン・ラトル&ベルリン・フィルのシェーンベルク&ブラームス演奏会レポート

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世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を率いるサー・サイモン・ラトルの動向を追いかける連載ニュースの第二回目。今回は11月のサイモンの活動について紹介しておこう。

11月、アメリカ・ツアーに旅立ったサイモン・ラトルとベルリン・フィルだが、その直前にベルリンで行なわれた定期演奏会では、シェーンベルクをテーマとしたプログラムが演奏された。

曲目は、ユダヤ人としてアメリカに亡命する数年前に書かれた「映画の一場面への伴奏音楽」、モノドラマ「期待」、そしてブラームスの原曲をオーケストレーションした「ピアノ四重奏曲第1番」である。このすべてが、ツアー中に演奏されるが、シェーンベルクは亡命する直前までベルリンに住んでいたので、「アメリカ行き」を強く意識したプログラムと言える。

あまり論じられないことだが、ラトルはシェーンベルクに特別の関心を抱いている指揮者である。バーミンガム市響時代にも、「管弦楽のための変奏曲」作品31をはじめとする重要作品をレコーディングしており、「月に憑かれたピエロ」や「期待」のような、普通の指揮者が取り上げない作品も指揮している。

この日の演奏も、隅々までよく咀嚼され、「不協和音の羅列」に終わらない有機的な流れを感じさせるものとなっていた。特に面白かったのが、イヴリン・ヘルリツィウスをソロに迎えた「期待」。物語の筋は、夢遊病者のように夜中の森をさまよう女性が、恋人の死体を見つけるというほとんど猟奇的なものである。フロイト的な性的コノテーションに少々うんざりさせられるところがあるが、ラトルの演奏は明解なドラマを感じさせ、むしろ「面白く」聞かせてくれた。サイコドラマのタッチで、映画的なセンスで見せる、と言ったところだろうか。

これに対し、ブラームスの「ピアノ四重奏曲第1番」は、もともと茶目っ気のある編曲なので、ラトルのユーモアがくっきりと浮かび上がる。クライマックスは終楽章のジプシー風ロンドで、ベルリン・フィルがラプソディックな曲調を曲芸的に煽り立てるため、演奏はスリルの極み。当然観客は大喜びで、終演後は長い拍手が指揮者とオーケストラに寄せられた(11月5日)。

城所 孝吉(音楽評論・ベルリン在住)

今後も、数回に渡って、サー・サイモン・ラトルの動向を毎月お伝えしていく。お楽しみに。

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