増田勇一の『今月のヘヴィロテ(9月篇)』
いよいよ10月に突入し、<LOUD PARK 09>も間近に迫ってきた今日この頃。だから、というわけじゃないのだが、「9月度の聴きまくり10作品」は比較的メタル色の濃いラインナップとなった。早速ご紹介しよう。
●アリス・イン・チェインズ『ブラック・トゥ・ブルー』
●パール・ジャム『バックスペイサー』
●ミューズ『ザ・レジスタンス』
●ミーカ『ザ・ボーイ・フー・ニュー・トゥー・マッチ』
●デッド・バイ・サンライズ『アウト・オブ・アッシュズ』
●メガデス『エンドゲーム』
●スカー・シンメトリー『ダーク・マター・ディメンションズ』
●シャドウズ・フォール『レトリビューション』
●パラダイス・ロスト『フェイス・ディヴァイズ・アス‐デス・ユナイツ・アス』
●陰陽座『金剛九尾』
アリス・イン・チェインズの新作には、思いきりのめり込んでしまった。もはや収録曲の大半を歌えるんじゃないかと思えるくらいだ。ウィリアム・デュヴァールの歌声に震えると同時に、ジェリー・カントレルに惚れなおしたという感じ。とにかく楽曲の充実ぶりが素晴らしいし、ソングライターとしてのジェリーのルーツともいうべきエルトン・ジョン(彼は、この作品にピアノでゲスト参加している)の素晴らしさも再認識。彼の70年代の名盤たちも、改めて聴きまくってしまった。
パール・ジャムの『バックスペイサー』は、拍子抜けするほどのポジティヴさが痛快。とにかく、わかりやすい。彼らにとって13年ぶりの全米アルバム・チャート首位獲得作品になったというのも頷ける。ミューズはさらに“80年代クイーン度”が強まったという印象で、歌メロの“あり得ない展開”が素敵にキモチワルい(=要するに僕にとっては気持ちいいということである)ミーカの新作と共に、心地好い錯乱をもたらしてくれた。デッド・バイ・サンライズについては、正直、驚嘆させられるようなところはなかったものの、チェスター・ベニントンはやはり稀有な声の持ち主だと思うし、オージーが大好きだった自分としてはアミア・デラクの活躍ぶりが嬉しいかぎり。
そしてメガデスは間違いなく「これぞメガデス!」という作品を提示してくれたし、シャドウズ・フォールも格の違いを見せつけ、パラダイス・ロストもどっぷりと酔わせてくれた。ツイン・ヴォーカル体制になったスカー・シンメトリーは良い意味での転機を迎えたという印象だし、陰陽座はやっぱり“楽曲同士の化学反応”が魅力的。曲順の重要さを痛感させられる1枚だった。
他によく聴いたのは、ソナタ・アークティカとか、インミーとか、スリップノットの1stの10周年アニヴァーサリー・エディションとか、ビートルズのボックスとか。デヴィッド・シルヴィアンの『マナフォン』は、深夜に睡眠導入剤にすることが多かったかな。
ちなみにビートルズについては、僕はいわゆるステレオ・ボックスを購入。実のところ熱心なビートルズ・ファンだったことのない僕は、中学生の頃から、すでに終わっていたビートルズではなく現在進行形だったウイングスのほうに興味があったし、以来ずっと「ビートルズの子供たち」のほうにむしろ惹かれてきた。チープ・トリックのリック・ニールセンに「僕にとってはビートルズよりもあなた方のほうが大事なんです」と言ったら、当のリックに「馬鹿なこと言っちゃいかん」と叱られた過去もある。そんな僕にとって今回のボックス・セット登場は、この「あらかじめ偉大すぎて思い入れのわきにくかったバンド」の歴史を振り返るには絶好の機会となったわけだ。
そして、最後に。本稿自体とはまったく関係ないのだが、9月末、とても悲しい出来事があった。僕自身も毎月のように原稿を執筆させていただいている『フールズメイト』誌の編集顧問を務めておられた東條雅人さんが、去る9月29日、永眠された。僕よりもずっと年下の彼は、いつも原稿を送るたびにかならず何かしらの感想を返信してくれる数少ない編集者のひとりだった。音楽ファンとしてのピュアさを失わず、大好きなアーティストにも苦言を呈することができ、ときには過剰なほどの謙虚さと生真面目さを感じさせる人だった。本当に多くのことを学ばせてもらったし、この感謝の気持ちをずっと忘れずにいたいと思う。正直、こうした場にこのようなことを書くことには躊躇もあったのだが、仰々しさとも軽々しさとも無縁でありたかったがゆえの行為だとご理解いただければ幸いだ。改めて、ご冥福をお祈りしたい。
増田勇一
●アリス・イン・チェインズ『ブラック・トゥ・ブルー』
●パール・ジャム『バックスペイサー』
●ミューズ『ザ・レジスタンス』
●ミーカ『ザ・ボーイ・フー・ニュー・トゥー・マッチ』
●デッド・バイ・サンライズ『アウト・オブ・アッシュズ』
●メガデス『エンドゲーム』
●スカー・シンメトリー『ダーク・マター・ディメンションズ』
●シャドウズ・フォール『レトリビューション』
●パラダイス・ロスト『フェイス・ディヴァイズ・アス‐デス・ユナイツ・アス』
●陰陽座『金剛九尾』
アリス・イン・チェインズの新作には、思いきりのめり込んでしまった。もはや収録曲の大半を歌えるんじゃないかと思えるくらいだ。ウィリアム・デュヴァールの歌声に震えると同時に、ジェリー・カントレルに惚れなおしたという感じ。とにかく楽曲の充実ぶりが素晴らしいし、ソングライターとしてのジェリーのルーツともいうべきエルトン・ジョン(彼は、この作品にピアノでゲスト参加している)の素晴らしさも再認識。彼の70年代の名盤たちも、改めて聴きまくってしまった。
パール・ジャムの『バックスペイサー』は、拍子抜けするほどのポジティヴさが痛快。とにかく、わかりやすい。彼らにとって13年ぶりの全米アルバム・チャート首位獲得作品になったというのも頷ける。ミューズはさらに“80年代クイーン度”が強まったという印象で、歌メロの“あり得ない展開”が素敵にキモチワルい(=要するに僕にとっては気持ちいいということである)ミーカの新作と共に、心地好い錯乱をもたらしてくれた。デッド・バイ・サンライズについては、正直、驚嘆させられるようなところはなかったものの、チェスター・ベニントンはやはり稀有な声の持ち主だと思うし、オージーが大好きだった自分としてはアミア・デラクの活躍ぶりが嬉しいかぎり。
そしてメガデスは間違いなく「これぞメガデス!」という作品を提示してくれたし、シャドウズ・フォールも格の違いを見せつけ、パラダイス・ロストもどっぷりと酔わせてくれた。ツイン・ヴォーカル体制になったスカー・シンメトリーは良い意味での転機を迎えたという印象だし、陰陽座はやっぱり“楽曲同士の化学反応”が魅力的。曲順の重要さを痛感させられる1枚だった。
他によく聴いたのは、ソナタ・アークティカとか、インミーとか、スリップノットの1stの10周年アニヴァーサリー・エディションとか、ビートルズのボックスとか。デヴィッド・シルヴィアンの『マナフォン』は、深夜に睡眠導入剤にすることが多かったかな。
ちなみにビートルズについては、僕はいわゆるステレオ・ボックスを購入。実のところ熱心なビートルズ・ファンだったことのない僕は、中学生の頃から、すでに終わっていたビートルズではなく現在進行形だったウイングスのほうに興味があったし、以来ずっと「ビートルズの子供たち」のほうにむしろ惹かれてきた。チープ・トリックのリック・ニールセンに「僕にとってはビートルズよりもあなた方のほうが大事なんです」と言ったら、当のリックに「馬鹿なこと言っちゃいかん」と叱られた過去もある。そんな僕にとって今回のボックス・セット登場は、この「あらかじめ偉大すぎて思い入れのわきにくかったバンド」の歴史を振り返るには絶好の機会となったわけだ。
そして、最後に。本稿自体とはまったく関係ないのだが、9月末、とても悲しい出来事があった。僕自身も毎月のように原稿を執筆させていただいている『フールズメイト』誌の編集顧問を務めておられた東條雅人さんが、去る9月29日、永眠された。僕よりもずっと年下の彼は、いつも原稿を送るたびにかならず何かしらの感想を返信してくれる数少ない編集者のひとりだった。音楽ファンとしてのピュアさを失わず、大好きなアーティストにも苦言を呈することができ、ときには過剰なほどの謙虚さと生真面目さを感じさせる人だった。本当に多くのことを学ばせてもらったし、この感謝の気持ちをずっと忘れずにいたいと思う。正直、こうした場にこのようなことを書くことには躊躇もあったのだが、仰々しさとも軽々しさとも無縁でありたかったがゆえの行為だとご理解いただければ幸いだ。改めて、ご冥福をお祈りしたい。
増田勇一
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増田勇一
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