増田勇一の欧州日記(8)

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▲開演直前のフロア。かなりの人口密度です。
▲DIR EN GREYの演奏終了直後の様子。かなりサウナ状態です。
6月11日、パリは<LE BATACLAN>でのKILLSWITCH ENGAGEとDIR EN GREYのライヴは、文字通りの大成功に終わった。先にステージに登場したのはDIR EN GREY。会場の収容規模は約1,500人。どちらのバンドにとってもやや控え目なキャパシティ設定ということになるが、フェス真っ盛りのシーズンに行なわれるこうした公演というのは、通常よりも小さめのハコで行なわれるのが常。「フェスで金欠になってしまい、単独公演を観に行く余裕がない」という悩みはどこの国のファンにも共通しているというわけだ。

しかしその点、この公演はかなり優秀だったと言っていいんじゃないだろうか。正直、DIR EN GREYの演奏中にはまだ会場の外でたむろしているKILLSWITCH ENGAGEのファンもいたし、逆にKILLSWITCH ENGAGEの演奏中にはフロアの後方へと下がっていくDIR EN GREYのファンもいた。が、どちらか一方のバンドだけでは満員にならなかったはずのフロアがずっと8割がた埋まった状態であり続けたのは、双方のバンドがお互いのファンにアピールすることに成功したからだろう。実際、どちらのバンドもフロア後方で腕組みをしながら観ている“相手の客”の大半を、演奏中にずっとその場に繋ぎとめておくことができたのだから、これは素晴らしい成果だ。まさに、相乗効果。前日の<ユトレヒト公演>の際以上に場内のサウナ状態は厳しいものとなり、ステージ上のメンバーたちも汗をしたたらせていたが、ライヴ・パフォーマンス自体もいっそう緊迫感の漂うものになっていた。

▲KILLSWITCH ENGAGEのギタリスト、アダム。まさに怪人。1時間強のステージの間、巨体で動き回りっぱなし。
あいにくKILLSWITCH ENGAGEの面々とゆっくりと歓談する時間はなかったものの、実はこれから約半日後、両バンドは英国の<DOWNLOAD>フェスで顔を合わせることになる。終演後、そのことを告げに楽屋を訪れたDIR EN GREYのメンバーたちに、KILLSWITCH ENGAGEの面々はシャワー・ブースを飛び出してきて、「また是非、何か一緒にやろう」「次は日本で何かスペシャルな試みを」といった言葉を投げかけてきた。もちろん社交辞令なんかじゃない。

そして終演後、DIR EN GREY一行はそのままイギリスに向けて出発。早朝のフェリーでドーバー海峡を渡ることになっているのだ。そして僕たちはパリに一泊して、明朝、飛行機で彼らを追いかけることになっている。6月12日、5人にとってここ数年来の念願のひとつでもあった<DOWNLOAD>への出演が実現する。果たしてそこではどんな現実が待ち受けているのだろう?

増田勇一
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