マニック・ストリート・プリーチャーズ、リッチーへ捧げるライヴ・パフォーマンス

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新作『Journal For Plague Lovers』をプロモートし現在UKツアー中のマニック・ストリート・プリーチャーズが、5月28日より3日間、ロンドンのラウンドハウスでパフォーマンスを行なった。結果から先に言うと、今回のツアーは新作同様、マニックスの歴史の中で節目となるものになったと思う。

ご存知の通り、『Journal For Plague Lovers』はギタリストのリッチー・エドワード・ジェイムスが失踪する直前にメンバーへ残した詩をもとに制作された。リッチーの存在/嗜好を意識しつつレコーディングされ、そして彼の意思に沿うようシングル・カットをしなかった。この姿勢は今回のツアーでも貫かれている。通常、ニュー・アルバムをリリースした後のツアーでは、新作のトラックをメインにしつつも、順番を入れ替えたり間にこれまでのヒット曲を交えながらパフォーマンスするものだが、彼らには今回それができなかったのだろう。ショウを2部構成にし、1部ではアルバムのフロント・カヴァーであるジェニー・サヴィルの絵をバックに『Journal For Plague Lovers』の全曲をトラック・リスト通りパフォーマンスした。

アルバムを購入する人が減ってしまったこのご時世、そしてシングルもない(=ラジオで耳にする機会が少ない)となると、残念なことではあるが、会場には『Journal For Plague Lovers』をまったく聴いたことがないオーディエンスもいたと思う。それでも、パワフルな演奏やリッチーの多感な歌詞に会場は盛り上がった。しかし、陳腐な言い方かもしれないが、この1部はオーディエンスを喜ばせるためというより、バンド自身が満足するため、あえて言えばリッチーに捧げるために行なわれているような気がした。決してセンチメンタルな空気が流れていたわけではないが、なにか儀式にでも参加しているような厳かな雰囲気があったのは確かだ。

そして休憩をはさみスタートした2部は、1st『Generation Terrorists』から8th『Send Away The Tigers』までを網羅したグレーテスト・ヒッツ・コレクション。1部がリッチーのためなら、こちらはファンのためにパフォーマンスされたという感じがした。会場は大合唱で、1部とはべつの盛り上がりを見せた。

フロントマンのジェイムス・ディーン・ブラッドフィールドをインタヴューし、『Journal For Plague Lovers』がメンバーにとって特別な作品であることは十分承知していたつもりだが、まさか全曲をパフォーマンスするとは思っていなかった。あらためてメンバーのこの作品への思い、そしてリッチーを大切に思う気持ちが伝わってきた。そして何より、アルバム同様ライヴでもリッチーの存在を意識せざる得ず、4人のメンバー全員がそろっているように感じた貴重なライヴだった。

この夜(5月28日)のセットリストは以下の通り。

第1部
「Peeled Apples」
「Jackie Collins Existential Question Time」
「Me And Stephen Hawking」
「This Joke Sport, Severed」
「Journal For Plague Lovers」
「She Bathed Herself In A Bath Of Bleach」
「Facing Page: Top Left」
「Marlon JD」
「Doors Closing Slowly」
「All Is Vanity」
「Pretension/Repulsion」
「Virginia State Epileptic Colony」
「William's Last Words」

第2部
「Motorcycle Emptiness」
「Your Love Alone Is Not Enough」
「No Surface, All Feeling」
「You Love Us」
「Tsunami」
「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」
「Faster」
「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」
「Little Baby Nothing」
「Australia」
「You Stole The Sun From My Heart」
「Stop In The Name Of Love / Motown Junk」
「Everything Must Go」
「Autumnsong」
「A Design For Life」

マニックスは来月、<ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES.2009>でパフォーマンス予定。どんなセットリストを用意しているのだろうか。

Ako Suzuki, London
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