Vol.2
英文を日本語に置き変える。ただ単語や構文を学び、繋げるだけでないことは言うまでもない。前回私は自分の若き頃の無知を書いたが、当然、翻訳は直訳だけでは歯が立たない。前後の文章から単語の意味を考え、また、裏にあるかも知れぬ作者の意図を読み取り、的確な文章にしていく。比喩もあるだろうし、間接表現もある。文化の違いも考慮しろとよく言われる。と、ここまでならみなさん理解されているだろう。
ところが、ここで求められるのは「歌詞」の翻訳である。サウンドがあり、リズムがあり、メロディがあり、歌い手の感情表現がある。その想いや感情の流れを感性の耳で聴かなくてはならない。迷ったら何度も曲を聴いてみてほしいと思うのだ。
そしてもうひとつ。審査されるのは日本語だ。日本語の表現に長けていなければ、翻訳しても作者の真意は伝わらないし、歌詞として面白くなくなってしまう。英語を学ぶと共に、是非日本語の表現の面白さもしっかり学ぶ機会にしてほしい。英語で書かれた作者の感性が音楽と共に心の中に入る。それを日本語に変えるそのとき、音楽と共に言葉に対しての豊かな感性が養われるのだ。このことが洋楽翻訳の大きな意味であると私は思っている。
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Vol.1
高校の頃、「FREE」というイギリスのロックバンドを好きになった。
ヴォーカリストは先だって「Queen」のヴォーカリストとしても来日したポール・ロジャーズ。バンドを組んでいた私は、擦り切れるほどLPを聴きこんで、友人たちと共に日々コピーに明け暮れていた。特にライブ盤は私の人生の中でも、もっとも聴きこんだ作品のひとつといえる。
そんな「Free」もやがて解散。そして私が大好きだったポール・ロジャーズが次に結成したバンドが「BAD COMPANY」。
「おうおう、悪仲間、か。いい感じの名じゃないか、ロックしてるぜ!」と当時の私たちは意味もなく、粋がったもんだ。バドカン(BAD COMPANY)はともかく、写真を見る限り、「FREE」のメンバーは、間違いなく数々の悪行をこなしてきた面構えに見えた。そのまんまだ、分かり易いぞ、バドカン。
ところがだ。しばらくしてある音楽雑誌を読むと、この「BAD COMPANY」を「いかしたヤツラ」と訳しているではないか。私は一瞬、まったく逆だぁ!と絶句した。無知というか、感性の欠如というか、世間知らずの真面目なお馬鹿というか、そもそも日本語の理解も足りない。何が、ロックしてるぜ!だ、まったく。直訳街道まっしぐらから、いろいろ考えて英詞を読むようになったのは、このころからじゃないかと思う。
「ちょっとヤバクない?」ってもうちゃんと英訳されてるんだろうか?