Dir en grey、限界を超越した国内ツアー最終レポ
2ヶ月間近くに渡る全国ツアー<TOUR07 THE MARROW OF A BONE>が遂に大団円を迎えたDir en grey。追加を重ねたこのツアー最終日のライヴレポートが到着したので紹介しよう。熱き情熱が迸ったライヴの空気を感じてほしい。
「限界を超えて来い!」
5月1日、Zepp Tokyo。アンコールの最後、「CLEVER SLEAZOID」が炸裂する直前、ぎっしりと人で埋め尽くされたフロアに向けて、京は、そう言葉をぶつけた。
もちろん彼は、観衆の反応が生温くて腹を立てていたわけではない。すでに沸点を超えた状態にあるものに、さらに熱を加えようとしたのである。
前夜に引き続き、この会場を超満員のオーディエンスと共に制圧したDir en grey。このライヴは<TOUR07 THE MARROW OF A BONE>と題された全国ツアーの追加公演としてのものであり、同時にこのツアーの実質的な最終公演にあたるもの。
3月10日に幕張メッセ・イベントホールで開幕したこのツアーは、2本のFC会員限定ライヴ(3月12、13日/川崎)と、最新アルバム購入者のみにチケット購入権が限定された2本のプレミアム・ライヴ(4月21日/横浜、4月28日/尼崎)、大阪、名古屋、東京での計5本の追加公演を含め、全21本の公演を消化しながら幕を閉じることになった。
常にこまめに情報をチェックしてきたはずのBARKS読者には改めて報告する必要もないはずだが、さまざまな規模と形状の会場でのライヴが重ねられてきた今回のツアーは、それ全体が結果的に起伏に富んだ、ストーリー性の高いものとなった。
前述のプレミアム・ライヴでは、最新アルバム初回限定盤のDISC-2さながらのアンプラグド演奏が懐かしいチューンと共に披露され、観衆のどよめきと溜息とすすり泣きを誘っていた。大規模会場で斬新な照明効果や映像を用いた視覚的演出が施されたかと思えば、ツアー途中から京のトレードマークのひとつである“お立ち台”が姿を消すという“事件”もあった。それはあたかも、彼自身の“何ものにも頼りたくない”という意思表示であるようにも感じられたし、フォロワーたちの追随を許さない自信と厳しさを象徴してもいた。
ツアー開始当初から、基本的にオープニング曲に据えられていたのは、最新アルバム『THE MARROW OF A BONE』の幕開けを飾っていた「CONCEIVED SORROW」。
幕張でのツアー初日公演レポートのなかでは敢えてこの楽曲の正体を記さずにおいたが、それは僕自身が、各公演で目撃者となるべきすべての人たちに、過剰な“心の準備”をせずに毎回のライヴに臨んでほしいと感じたからである。実際、同曲からの幕開けという流れは重厚さを失わないまま、お約束という匂いが伴わないままに成熟を遂げてきた。が、この5月1日の公演は、珍しくも「THE PLEDGE」からの滑り出しとなった。
そんな事実ひとつをとっても、何かひとつ絶対的なものを構築し終えると次の瞬間には破壊モードへと転ずる、このバンドの体質を象徴している気がした。
この夜、ステージ上には、背景を覆う黒いバックドロップ以外、必要以上のものは何ひとつ存在していなかった。通常のライヴであれば楽曲の放つ感情の種類によってさまざまに場面の彩りを変えていく照明も、ずっと場内全体を赤く照らし続けるばかりだった。そこまで徹底的にシンプルな環境設定のもとで再構築された『THE MARROW OF A BONE』の世界観は、完成された美しさというよりもむしろ、構築美と機能美の確立を見届けたあとで敢えて自らの手でそこに巨大な鉄槌を振り下ろすかのような、破壊的とか自虐的とかストイックといった手垢のつきすぎた単語では言い尽くせないような烈しさを孕んだものになっていった。その事実は、いわば、彼ら自身がそれまでのDir en greyの限界を超越したことを物語っているように、僕には思えてならなかった。
即効性の高い起爆剤としてこのツアー中に効力を発揮し続けた「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS」は、まさにDir en greyのダイ・ハードな支持者たちにとっての讃歌として唯一無二の存在感を持つようになった。京の片腕に別の人格を宿ったかのようなステージ・パフォーマンスが印象的な「ROTTING ROOT」も、聴くたびに鋭利さを増していく「LIE BURIED WITH A VENGEANCE」も、すべて“壊しながら鍛え上げられてきた”かのような凄味のある説得力を持ち始めていた。もちろんそうしたある種の進化は、最新作の収録曲に限らず、演奏されたすべての楽曲について感じられたことでもある。
冒頭の言葉を吐いた後、「CLEVER SLEAZOID」の壮絶な全力疾走でツアーそのものを締めくくった京の口から、最後にこんな言葉が飛び出してきた。
「ま、日本人の力をぶつけてくるわ」
去る2月の全米ヘッドライン・ツアーに続き、この6月6日からは、かのDEFTONESのスペシャル・ゲストとして全米各地をまわることになる彼ら。さらに8月には、自己初となるロンドンでの単独公演を皮切りに、複数の大型野外フェス(TOOLやNINE INCH NAILSとの激突が予定されている)への出演を含む欧州ツアーが開始されることも決まっている。
少なくともあなたが日本国内にとどまっている以上、しばらくDir en greyのライヴに接する機会は皆無ということにならざるを得ないわけだが、まずは彼らが次に見せてくれることになる進化のカタチに想像と期待を膨らませながら、今から再会の瞬間を待ちたいものである。もちろんその間の、彼らの海外での動向についても情報が届き次第お知らせしていくつもりなので、常日頃の情報チェックをお忘れなく。
文●増田勇一
オフィシャル・サイトhttp://www.direngrey.co.jp/
「限界を超えて来い!」
5月1日、Zepp Tokyo。アンコールの最後、「CLEVER SLEAZOID」が炸裂する直前、ぎっしりと人で埋め尽くされたフロアに向けて、京は、そう言葉をぶつけた。
もちろん彼は、観衆の反応が生温くて腹を立てていたわけではない。すでに沸点を超えた状態にあるものに、さらに熱を加えようとしたのである。
前夜に引き続き、この会場を超満員のオーディエンスと共に制圧したDir en grey。このライヴは<TOUR07 THE MARROW OF A BONE>と題された全国ツアーの追加公演としてのものであり、同時にこのツアーの実質的な最終公演にあたるもの。
3月10日に幕張メッセ・イベントホールで開幕したこのツアーは、2本のFC会員限定ライヴ(3月12、13日/川崎)と、最新アルバム購入者のみにチケット購入権が限定された2本のプレミアム・ライヴ(4月21日/横浜、4月28日/尼崎)、大阪、名古屋、東京での計5本の追加公演を含め、全21本の公演を消化しながら幕を閉じることになった。
常にこまめに情報をチェックしてきたはずのBARKS読者には改めて報告する必要もないはずだが、さまざまな規模と形状の会場でのライヴが重ねられてきた今回のツアーは、それ全体が結果的に起伏に富んだ、ストーリー性の高いものとなった。
前述のプレミアム・ライヴでは、最新アルバム初回限定盤のDISC-2さながらのアンプラグド演奏が懐かしいチューンと共に披露され、観衆のどよめきと溜息とすすり泣きを誘っていた。大規模会場で斬新な照明効果や映像を用いた視覚的演出が施されたかと思えば、ツアー途中から京のトレードマークのひとつである“お立ち台”が姿を消すという“事件”もあった。それはあたかも、彼自身の“何ものにも頼りたくない”という意思表示であるようにも感じられたし、フォロワーたちの追随を許さない自信と厳しさを象徴してもいた。
ツアー開始当初から、基本的にオープニング曲に据えられていたのは、最新アルバム『THE MARROW OF A BONE』の幕開けを飾っていた「CONCEIVED SORROW」。
幕張でのツアー初日公演レポートのなかでは敢えてこの楽曲の正体を記さずにおいたが、それは僕自身が、各公演で目撃者となるべきすべての人たちに、過剰な“心の準備”をせずに毎回のライヴに臨んでほしいと感じたからである。実際、同曲からの幕開けという流れは重厚さを失わないまま、お約束という匂いが伴わないままに成熟を遂げてきた。が、この5月1日の公演は、珍しくも「THE PLEDGE」からの滑り出しとなった。
そんな事実ひとつをとっても、何かひとつ絶対的なものを構築し終えると次の瞬間には破壊モードへと転ずる、このバンドの体質を象徴している気がした。
この夜、ステージ上には、背景を覆う黒いバックドロップ以外、必要以上のものは何ひとつ存在していなかった。通常のライヴであれば楽曲の放つ感情の種類によってさまざまに場面の彩りを変えていく照明も、ずっと場内全体を赤く照らし続けるばかりだった。そこまで徹底的にシンプルな環境設定のもとで再構築された『THE MARROW OF A BONE』の世界観は、完成された美しさというよりもむしろ、構築美と機能美の確立を見届けたあとで敢えて自らの手でそこに巨大な鉄槌を振り下ろすかのような、破壊的とか自虐的とかストイックといった手垢のつきすぎた単語では言い尽くせないような烈しさを孕んだものになっていった。その事実は、いわば、彼ら自身がそれまでのDir en greyの限界を超越したことを物語っているように、僕には思えてならなかった。
即効性の高い起爆剤としてこのツアー中に効力を発揮し続けた「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS」は、まさにDir en greyのダイ・ハードな支持者たちにとっての讃歌として唯一無二の存在感を持つようになった。京の片腕に別の人格を宿ったかのようなステージ・パフォーマンスが印象的な「ROTTING ROOT」も、聴くたびに鋭利さを増していく「LIE BURIED WITH A VENGEANCE」も、すべて“壊しながら鍛え上げられてきた”かのような凄味のある説得力を持ち始めていた。もちろんそうしたある種の進化は、最新作の収録曲に限らず、演奏されたすべての楽曲について感じられたことでもある。
冒頭の言葉を吐いた後、「CLEVER SLEAZOID」の壮絶な全力疾走でツアーそのものを締めくくった京の口から、最後にこんな言葉が飛び出してきた。
「ま、日本人の力をぶつけてくるわ」
去る2月の全米ヘッドライン・ツアーに続き、この6月6日からは、かのDEFTONESのスペシャル・ゲストとして全米各地をまわることになる彼ら。さらに8月には、自己初となるロンドンでの単独公演を皮切りに、複数の大型野外フェス(TOOLやNINE INCH NAILSとの激突が予定されている)への出演を含む欧州ツアーが開始されることも決まっている。
少なくともあなたが日本国内にとどまっている以上、しばらくDir en greyのライヴに接する機会は皆無ということにならざるを得ないわけだが、まずは彼らが次に見せてくれることになる進化のカタチに想像と期待を膨らませながら、今から再会の瞬間を待ちたいものである。もちろんその間の、彼らの海外での動向についても情報が届き次第お知らせしていくつもりなので、常日頃の情報チェックをお忘れなく。
文●増田勇一
オフィシャル・サイトhttp://www.direngrey.co.jp/
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