| 清春も、ファンそれぞれも、いずれは誰もが死に、誰もがこの世界から去っていく。だからこそ今この瞬間をほんのちょっぴりでも楽しく過ごせるときを積み重ねて生きていければ、それはなんて素敵な人生なんだろう。自分が大切だと思える人たちとともに。このアルバムにはそんな清春が日々、生活するなかで思っている気持ちが美しい音楽とリリックで素直に描かれている。とくにアルバム後半、10曲目の「湖」からはその対話はぐっと深まり、12曲目の「この孤独な景色を与えたまえ」で感情がマックスに高まった後に聴くラスト、13曲目のシングル曲「君の事が」で清春とファンは見えない絆でぎゅっと約束をかわす。
清春:最初は『この孤独な景色を与えたまえ』で終わろうと思ってたけど、僕的には今ならではの今までやってきたからこその選曲かなと思う。最後に絶望的に終わるんでも破壊的に終わるんでもなく、逆に変に元気を出して終わるんでもなく、何かを残して。“約束ね”みたいな感じで終わる。それが『君の事が』かな。
“約束ね”といった清春の言葉の後には、どうか僕の音楽が好きな君よ、明日も笑っていられるようにという言葉にしない気持ちを感じた。それはこの曲の前に置かれた名曲「この孤独な景色を与えたまえ」の存在が大きい。人として最後の日がきたらという設定で描かれたこの歌。
清春:そうなったら自分は自分の周りの人に対してこう思えるまでになって、この世からいなくなれたら最高だなと。僕自身にも突然聴いてるコたちが世の中から居なくなるとしたら“さびしい”っていう感情があるの。逆に僕が交通事故かなんかで急に居なくなったとしたら、残っちゃったファンの子たちは悲しむじゃない? 何ていうのかな?そういう感情さえもなくせたらなと思ったの。負の感情は全部僕がすいとって持っていくみたいな。ファンの子たちと一緒に生活してる訳じゃないけど、それが僕とファンの子たちの間での究極の愛かなって。
──死に直面したときのことを描こうと思ったきっかけって、なにかあったんですか?
清春:自分の娘が日々大きくなる現実もあるし、自分の親が日々年老いていくというのもあるし、その中間にいてそういうことを感じる時期でもあるのかな。あとは個人的なことだけど、去年かな。FCに入ってるコが自ら命を絶ってしまってね…。 …。僕的には自分の音楽に少しでも接してる人が負の感情を持って日々過ごしてたことに対して……なんていうのかな、これじゃいけないと思ったんだよね。別に好きなミュージシャンでしかない僕がどうこうできることなんて殆んどないんだけどさ。本質的にはパーソナルなんてそのコのものなんだし。あのさ、お風呂に気持ちよく入る為の入浴剤みたいなものじゃない? 音楽って。たかがそれぐらいのものでしかないのよ。 でもね、いつも使ってる入浴剤のブランドが新しくVINNIE BEACHっていうのを出したとする。じゃあこれも使ってみようと。今までと同じ安心感はあるんだけど、さらにリラックスできる効果があったとしたらその入浴剤はすごい役割でしょ? 本来生活のなかにおける音楽の比率なんて主なものではないし娯楽でしかない。でも僕の音楽は僕のファンの子たちにとってはそこでせめて“たいした娯楽”でありたい。悩んでるときも楽しいときもそばにあって、わざわざそのコたちがこれを選んでお風呂に入れてくれる入浴剤。そういうものであれたらなと。
──アルバム発売後には8月18日から全国ツアー<架空の海岸>も始まりますね。
清春:初日の1本目の1曲目から集中したい。いつも尻上がりによくなるタイプなんだけど、それだとプロじゃないと気付いたんで。今回はいつもよりアルバムにそったツアーになると思うよ。
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