| 清春のニュー・アルバム『VINNY BEACH~架空の海岸~』は、まさに彼のキャリアにおいて人生最高傑作である。そんな作品を作ってしまったからこそ、まずインタビューの最初にどうしても清春に聞きたいことがあった。それは、このアルバムは彼の遺書なのか、彼はこれで音楽活動を封印してしまうのではないかということだ。
清春:ファンのコたちはいろんな雑誌のインタビュー読んですでに心配してるんだけど(笑)。ま、長く応援してくれてる人ほどそう思うかもしれないね。でもそんな急に完全には居なくならないと思うよ(笑)。ほんの少しは希望もあるし。音楽作ることに関しては失望してないしね。今すぐにどうこうっていうのはない。ただ、今の段階で次のアルバムとかはしばらく作りたくないっていう気持ちがあって。そういった意味で最近までのソロ・デビューして3年、これがアルバム4枚目だけど、バンドの後半からソロになっていった自分とはここである意味お別れって思ってる。次に出すときは新しい自分でって。
──つまりそれぐらい今回の作品に関しては自分の満足度的にも高いものができたと。
清春:うん。今のベストではあると思う。曲的にもとてもナイスで、それでいて短く感じて。今回は客観的に自分でもよく聴いてるよ。今までで一番聴いてるもん。車のなかとかでね。
つまり、それぐらい清春の日常、さらにいうと彼の人生にもっともフィットしたアルバムなのである。
清春:僕ね、どの音楽シーンでこうなりたいとか今や興味もなくて。こういう見られ方がいいとか、こういう評価されたら最高だとかなんにもなくなったの。そんな最近がすごい現れてる気がするんだよね、このアルバム。『VINNY BEACH』はVINNYという実在しない少年が見つけた架空の海岸。VINNIE少年が自分の大切な相手に何か話してるって設定で詞を書いていったの。「架空の海岸」というインストから始まって「星座の夜」とか「湖」とか「travel」とか。景色や風景が見えると幻想的なイメージを思いがちだけど、歌詞はすっごい普段の生活と密着してる。普段がリアルだからさ。
一人の清春という人間としてどんな人生を過ごしたいと思っているのか、大切な人たちとの関係はどうありたいと思っているのか。そんなプライベートなところから流れ出た音楽は、必然的に彼の音楽を愛する、彼に愛情をおくるファンをとらえる。
──ある意味、これはファンの人にしか目線が向いてないアルバムともいえますね。
清春:そうだね。もちろんこのインタビューを見て興味を持ってくれる人が聴いてくれて、よかったっていってくれればそれはそれでいいんだけど。でも初めから俺のこと興味もない人に向かってやってる音楽ではないの。確実にこのCDのリリースを待ってくれてるという人たちに対してのアルバムだね。
だから、極端にいえば本作は清春とファンがライブ以上に近づいて対話をしているような気持ちになるような作品なのである。
清春:そうだね。そこは意識した。聴いてる人に話すようにと。1対1というのはすごくあった。今僕はこういう活動をしてるけど、僕のファンの子たちが生きてく上で“希望”が見えるきっかけの一つのようなアルバムでありたいわけ。負の方向に向けるアイテムには絶対にしたくない。そういうのがあって。今はこんな風だけど僕の音楽を通して感情を共有することによって、“この先も多分大丈夫だよね”みたいな気持ちになれたらなと。
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