清春が考えるロックとは? 問題作『官能ブギー』を語る。2
──R&Rというところでは、これまで黒夢、sadsとタテノリでフロアはダイバーだらけというのを印象づけてきた清春君ですが、本作が打ち出してるR&Rは、ギター・リフ中心のヨコノリです。
清春:結局、一人でやってるとタテってできにくいですよね。あと、20代までの音楽かなって気もします。頑張っても(一同笑)。だからね、結果的になに作ってもどこにも属さなくなったなって気がするんスよ。バンド・サウンドなんだけどバンドっぽくないし。ソロっぽくもない。ヴォーカリストなのにシンガーっぽくないアルバムだし。楽曲だけでもなく、歌詞だけに偏ってる訳でもなく。いい意味で中途半端。だけど“あ~清春なんだ”って感じが充満してるアルバムになった気がしてる。コンサートというところでは、このアルバムで今後の僕のコンサートが楽しめるか楽しめないかに関わってくるね。僕的には前回のツアーのその先、そこには“愛と性の世界”があるってのを表現したいんですよ。それがこのアルバムで分かってもらえればいいんスけどね。けっこう、日本人は苦手な路線だと思うんです。こういう歌詞の淫媚な感じとか卑猥な感じは。
──それは清春君の音楽がこれまで発して来た特質でもあるし。そういうところもね、今回は大人っぽくて洒落てるんですよ!
清春:青っぽくはないよね。でも、コード感とかものすごい明るいんだよ、今回。ちょっとそこでヤングになろうかと思ってたのに(一同爆笑)。マイナーで始まる曲とかほとんどなくてほぼメジャーなんだけど、全然爽やかにはならなかったですね(笑)。
──それが、清春君の魔力というか。
清春:美学だ(笑)。UKのバウハウスとかニック・ケイヴとかのドヨ~ンとした暗さがあるでしょ? 色でいったら漆黒の黒。そういうのよりは、もっとサイケデリックな、ヨコノリで狂ってるような暗さは出したかったんですよ。ドラッギーな暗さというのかな。そこら辺がちょっと大人っぽく聴こえるところなのかな。ビジュアル系的な暗さっていのは、マイナーコードさえ押さえれば子供でも誰でも出せるからね。
──そういうコード感の変化があったとはいえ、逆にこのアルバムは清春君の声が匂い立ってくる作品になってました。
清春:でもさ~、いまそういうの必要ないのかもしれないよ? シーン見てても、みんな普通に歌ってるじゃん。
──清春君って、普通に歌えるの?
清春:歌えますよ(笑)。カラオケとか行ったら。でも、お金とってそういう歌い方をしようとは思わないね。そんなの誰でも歌えるじゃん。だって本来は、そこら辺にいるようなお兄さんの歌をステージで聴きたい訳じゃないもん。あのピストルズでさえ、一聴したらジョニー・ロットンって分かるわけで。マリリン・マンソンだってU2のボノだってそう。じゃないと向こう(海外)の場合は音楽シーンに出てこられないからね。レディオヘッドがいろんな実験的な音楽にチャレンジできるのはトム・ヨークの声があるからなんですよ。オアシスもコールドプレイもそう。でも、日本のミュージシャンはそこを勘違いしてる。歌の癖や個性をなくすことで洋楽っぽくしようともしてる。誰もが一聴したら分かる声。日本のロック・シーンだとそれがダメな傾向になってはきてるよね。みんなそこにいつ気づくのかなと思うよ。
──そんな清春君のステージが楽しめるツアーが、来年2月からスタートします! こちらはメイクもバリバリでジャケット並みのきらびやかな衣装で?
清春:派手なヤツを準備してます。間違えてもメガネにスニーカーとTシャツ、短パンとかはない(笑)。
──清春君の短パン姿って見たことないね。
清春:うちでは穿いてますけどね、夏は(一同大爆笑)。ま、それは置いといて、俺とかすごい衣装代かかるんですよ。衣装いらないバンドの人が多いでしょ? お金かかんないのに売れちゃっていいな~って(笑)。僕、デビューしてからいままで一番使ったのは衣装費ですから、たぶんね。ツアーのなかでも衣装代がかなり高い割合で予算に入ってるし(笑)。いまライヴに行く人も普通の人が多いでしょ? ロック・コンサートのロの字もそこにはなくて。そのまんまお笑いのライヴにでも行けばいいじゃん(笑)。でも、これは自信を持っていえるけど、うちのファンは見極めるセンスいいっすよ。
取材/文●東條祥恵
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