清春が考えるロックとは? 問題作『官能ブギー』を語る。2
──新作『官能ブギー』と前作『MELLOW』。その一番の違いから教えてもらえますか?
清春:今回はちょっと曲調的に遊びが多いよね。曲は簡単なリフの繰り返しがほとんどなので、その分、詞は凝ってる。あと、今回は明確なキーワードがあって。例えば“グラム”だとか。それがあるってことが前作との一番の違いかな。
──『官能ブギー』というアルバム・タイトルもまさにグラムを象徴する言葉を連ねたもので。匂い立つ雰囲気などグラムのエッセンスはあるんだけど、これ、決してグラムロックな作品ではなくて。
清春:そうね。だから、いまの日本の音楽シーンからは善くも悪くもポコっと離れて、陸の孤島みたいな作品になってるね。
──ジャケット自体も陸の孤島といいますか。あれ、虎ですよね?
清春:そう。T-REXの『BORN TO BOGGIE』という映画があるんだけど。そのDVDのジャケットでもマーク・ボランが乗ってるんですね、虎に。グラムなんでね、そこは分かりやすく引用しておきました(一同大爆笑)。
──引用でもこんなの誰もやらないですよ(笑)。
清春:うちのファンのコでさえ、どうやら驚いたみたいで(一同笑)。ま、日本のミュージシャンでは僕ぐらいしかできないだろうな、と(笑)。
──アルバム自体も、清春にしかできない官能の世界が堪能できる仕上がりでした。
清春:結局ね、ダテに10年以上メジャーでお化粧して音楽やってるワケじゃないんで。超越したいなと思ってるんですよ。一般の人におけるカッコいい/カッコ悪いっていう感覚さえも。そこで初めてメイクすることの意味が出てくるのかなと思ってて。結局、メイクしてるかどうかってのがいま、ビジュアル系かどうかの分かれ目になってる風潮があるけど、そうじゃねーぞ、お前らと。お化粧してようがしてなかろうがいいの。ただ、なにか凡人離れしたものの表現を求めると、化粧も必要になってくるってことなんですね。
──そこだ! 今回のアルバムはまさにそんな、お化粧の匂いが狂ったように充満した非日常の世界を音にしたような感じです。
清春:最近の日本のロック・コンサートって、汗水たらして青春だ、哀愁だ、トラウマだって「昭和枯れすすき」みたいな世界じゃないですか。そんなトラウマ背負ったヤツばっかがお決まりのリアリティ背負って音楽やってて、そういうことをインタヴューであかしてる。もぉウザくて(笑)。別にミュージシャンじゃなくても、みんな会社とか学校で嫌な思いもしながら生きてる訳ですよ。わざわざお金払ってまで、そんなトラウマなんかを共感し合いにコンサートに行くのはどうなのかと最近思ってて。ロックは弱い者の味方でありながら、嫌な事を忘れさせるための“別世界”のはずなんですよ! だから、いい年こいてメイクして男だか女だかわかんない様な感じで音楽を魅せてるワケで。虎にも乗るワケですよ(一同笑)。
──いまの話は「picture of future~黒アゲハの羽模様~」の詞にも通じてますね。
清春:ですね。メッセージもありながら、これは非常にポエムな感じになっていて。“大蜥蜴の皮を剥いで”ってなんのこっちゃって感じですけど、今回はそれでいいんです。だから、ファンの人も前作より軽い気持ちで聴くことができると思う。重くはないんで。「picture~」とか「FLY WAY」とか多少、メッセージは入ってると思うんだ。でも、それが結果的に楽曲でオブラートに包まれてる気がするんだよね。いかにも切なげな曲でそれをやっちゃうと言葉が目立つじゃないですか。そうじゃなくて、どこかR&Rというラメ入りの皮を着てる気がしますね、どの曲も。
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