| 今、世界のポップ・ミュージック界で最もホットなアーティストと言えばアウトキャストに他ならない。なにせ「ヘイ・ヤ!」「ザ・ウェイ・ユー・ムーヴ」の2曲をビルボード・シングル・チャートで1、2フィニッシュという大記録を打ち立て、さらにアルバム『スピーカーボックス~ザ・ラヴ・ビロウ』はグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞。アンドレとビッグ・ボーイ。その2人が別々に作ったソロ作が、シングルでアルバム(両者のソロ作を合体させたもの)で共にここまで大きな成功を収めたことなど前代未聞! もはや誰がどう見ても神々しい存在となったアウトキャストだが、BARKSではそんなアウトキャストの土台を支えるラッパーであり、「ザ・ウェイ~」の顔であるビッグ・ボーイのインタヴューに成功! 貴重な言葉の数々を聞くことができた。
──『スピーカーボックス~ザ・ラヴ・ビロウ』は歴史的マスターピースの座を揺るぎないものにしましたが、その事実をどう思いますか。
ビッグ・ボーイ:誇りに思うし同時にホッとしたよ。自分たちが信じた音楽性で認められたワケだからね。“もっといい音楽を作りたい”というモチベーションは上がってきたよね。
──よくメディアで「アウトキャストはヒップホップをギャングスタからミュージシャンに取り戻した」などと言われていますが、そのことについてはどう思います?
ビッグ・ボーイ:俺たちは今でもギャングだよ。ただ、俺たちは音楽に対してオープンなだけなんだよ。ソウル、ロック、ブルース……。いろんな要素をヒップホップに入れていきたいと思ってるし、それはこれからもそうだね。
──今回のアルバムはヒップホップの次元を超えてロック側のリスナーにもウケたものでしたが、ビッグボーイが主導で作った『スピーカーボックス』はヒップホップ・テイストの強い作品だったわけで。あなたとしてはもっとヒップホップ側からの評価が欲しいのではないかと思うのですが。
ビッグ・ボーイ:アウトキャストの中において俺が求められているのはMCとしての部分なんだ。だからどうしても俺のサイドはヒップホップ寄りになってしまうんだけど。だけど、色々やりたいのは俺もアンドレも同じではあるんだよ。
──今回、「ヘイ・ヤ!」と「ザ・ウェイ~」が2曲同時にシングルになって、それが両方ともNo.1になったというのは偉業だと思うのですが、このアイディアはどうやって?
ビッグ・ボーイ:やっぱり、今回のアルバムは俺とアンドレが作ったものを同時に持ち寄った作品だったから、2人で1曲ずつシングルにしようと思ったんだ。それで違ったアウトキャストの例を見せたかったしね。最初はウケ方が違ってしまって、売れ方にも差が出ちゃったんだけど、やがて俺の方のを聴いた人がアンドレのを聴き、アンドレの方のを聴いた人が俺の方のも聴いて。2つが両方ともちゃんと受け入れられて結果的に最高なものとなったと思う。
──アンドレは最近、エイフェックス・ツインやハイヴスをフェイヴァリットにあげていますが、アナタのお気に入りアーティストは?
ビッグ・ボーイ:ホワイト・ストライプスは大好きだな! そしてやっぱりドクター・ドレー。あとは何と言ってもジェームス・ブラウンだぜ。彼がどんなに奥さんを殴ろうが(笑)、彼がどんなに髪の毛の乱れたところを警察に写真に撮られようが(爆笑)、ファンクはファンクで永遠に消えることはないよ。あと、今、俺の隣にいるスリーピー・ブラウン(ライヴ出演のため来日し、取材にも同席していた)も最高だね。
──まさか本人が同席してるとは思わなかったのですが、スリーピー・ブラウンをはじめとするあなたたちのクルー、ダンジョン・ファミリーの結束はやはり堅いのですか? そして最近のリル・ジョンやリュダクリスに代表されるアトランタ勢の活躍はどう思いますか?
ビッグ・ボーイ:スリーピーはアウトキャストの影のメンバーだよ。もう10年もの間、俺たちを支え続けてきたんだからね。彼がいなけりゃ、今の俺たちはないも同然だ。あと、アトランタの音楽シーンってことで言うと、みんなが共に育って行ったんだよね。リル・ジョン、リュダクリス、ボーンクラッシャー、キラー・マイク、それにアッシャーにTLC。同じタレント・ショウや同じ学校に行ってたヤツまでいる。みんながいい意味で競いあって今があるんだ。
──あと、ここまでのスターになってもアウトキャストはセレブとつるんだりはすることはあまりないような気がするんですが。
ビッグ・ボーイ:Exactly(本当にそうだ)! 確かにここのところいろんなアワードの授賞式があるからセレブと出会う機会は多いし、仲のいいヤツもいるから別に拒否しているわけではないんだけど、でも、セレブが俺の家に来て食事をすることはない。俺はただ、一緒にいて気持ち良いヤツと時間を過ごしたいだけだなんだ。
──アンドレは最近映画にも興味を持っているようですが、あなたはどうですか?
ビッグ・ボーイ:俺も興味はあるんだよ。ただ、一番やりたいのは音楽であることに変わりはない。今度俺たちも『スピーカーボックス』の映画を作るつもりだし。ただ最近、音楽に映画にツアーに、ってあまりにもやることが多過ぎて、一つのことにゆっくりと腰を落ち着けてやる時間がないのは悩みの種だね。家に帰って子供と遊ぶ時間さえない。もう少し自分の生活基盤を落ち着けて、創作活動をしたいけどね。
──では、最後の質問になりますが、次は2人別々ではなく、2人一緒のアルバムを制作するつもりですか?
ビッグ・ボーイ:もちろん、そのつもりだ。2人の新しいマジックが生まれることを期待してるよ。 取材・文●沢田太陽 |
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