【インタビュー】松本孝弘が語る、TMG、ソロ、B’z…とどまることのない創造力「僕はずっと動いているし、そういう日々が好きなんですよ」

2025.05.28 18:15

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B’zの松本孝弘率いるTMGが5月28日、DVD & Blu-ray『TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet-』をリリースした。昨年、20年ぶりに再始動を果たしたTMGは、同年秋にアルバム『TMG II』をリリースし、5都市9公演の全国ツアー<TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet->を開催した。今作は同ツアーよりファイナルとなった東京ガーデンシアター公演全19曲の完全収録に加え、アルバムのレコーディング風景やツアー最終日までを追ったドキュメンタリーが特典ディスクとして付属する豪華映像作品だ。

松本孝弘、ジャック・ブレイズ(B&Vo / Night Ranger)、エリック・マーティン(Vo / MR.BIG)といった鉄壁の3人に加えて、マット・ソーラム(Dr / ex. Guns N’ Roses)といった世界的トップアーティストが才能を重ね合わせたTMGサウンドは、その時点でロックシーンを代表する普遍的で先鋭的なバンドサウンドだった。ロック本来が持つ高揚感とスリル、個々のキャリアに裏打ちされた円熟のサウンド&プレイが連続する約110分のライブ映像は圧巻。一方で、終始和やかで笑いに溢れる舞台裏を追い続けた約50分間のドキュメンタリーからは互いへの絶大な信頼と才能の融合が感じられる仕上がりだ。

また、松本孝弘はソロとして4月に阪神タイガース90周年記念公式テーマソング「Tiger’s Eye」を配信リリースしたほか、B’zとしては映画『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』の主題歌を書き下ろし、さらに6月にはTHE YELLOW MONKEY、マキシマム ザ ホルモン、MAN WITH A MISSION、ONE OK ROCKを迎えてRock Project<B’z presents UNITE #02>をKアリーナ横浜にて開催、そして2025年冬にドームツアー<B’z LIVE-GYM 2025>の開催も決定している。まさしく時代に交わり追い越しながらフルスロットルで加速し続ける、松本孝弘の今をロングインタビューでお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■1stはアメリカンロックンロールだけど
■2ndはジャパニーズが入っている

──まず、TMGのライブ映像作品『TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet-』についてうかがいます。20年ぶりにTMGで活動された印象はいかがでしたか?

松本:ひと言で言えば、“案ずるより産むが易し”でしたね。前回から20年も経っているし、どんなことができるのかなという心配もあったけど、新曲もわりとすんなりできたし、レコーディングも順調だったんですよ。

──TMG流にリアレンジされたセルフカバーもありますね。

松本:エリック(・マーティン / Vo / MR.BIG)とジャック(・ブレイズ / B&Vo / Night Ranger)……というか海外ミュージシャンの曲創りは、オケを聴いたシンガーが歌詞と一緒にメロディーを考えるのが主流なんだよね。だから、LiSAちゃんの曲(「THE STORY OF LOVE (feat. LiSA)」)みたいに、先にメロディーが決まっている状態で、そこに歌詞を乗せることが、エリックとジャックにとってはめちゃくちゃ大変だったみたい。「だいぶ苦労した」と言ってたから(笑)。でも、そのわりには“いいじゃん、これ!”っていう仕上がりで。他の曲も含めてアルバム『TMG II』の制作は、僕がギターで歌のメロディーを入れて渡したんだけど、それに合わせてしっかり歌詞を書いてくれたしね。

──TMGの音楽はアメリカンロック直系の大らかさと松本さんならではのキャッチーなメロディーや緻密さなどが融合されていることが印象的です。

松本:「1stアルバム(2004年6月発表『TMG I』)はアメリカンロックンロールだけど、2ndはジャパニーズが入っている」ということは制作中にエリックが何回も言っていたんだよね。

──それが独自の魅力につながっていると思います。

松本:そういうふうに言ってくれる人は多くてね。だから今後も、曲創りではメロディーを指定しようかなと思っている。

──そのほうがよりTMGの個性が強まると思います。緻密さということでは、松本さんならではのギターハーモニーが多用されていることもTMGの華やかさにつながっています。

松本:ここ何年かはツインギター的な感じをイメージしてレコーディングしていて。もちろんレコーディングでは全部自分一人で弾いているんだけど、アプローチとしてはツインギターのバンドに近いよね。

──ライブではYukihide “YT” Takiyamaさんを加えて、生でギターハーモニーを奏でていることもポイントです。

松本:やっぱり生で二人で弾いたほうがよりリアリティーが生まれるよね。当然だけど、お互いにニュアンスの違いがあって、その微妙なズレがよかったりするし。

──その通りになっていると思います。映像作品『TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet-』を見ると、YTさんは一瞬だけハモッてすぐにバッキングに戻るなど、かなり緻密に構築されていることが分かります。

松本:そういうところはすごく多いよ。結構難しいことだけど、YTはさすがだよね。

──そして、昨年秋のツアー<TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet->では松本さんのソロ楽曲「Waltz in Blue」(2020年発表 / アルバム『Bluesman』収録)が演奏されたことも嬉しいサプライズでした。

松本:メンバー個々のバンドの曲もやろうということで、僕は自分のソロ曲をセレクトしました。「Waltz in Blue」は自分でもすごく気に入っている曲で、今回のショーの流れの中で合うなと思ったので。

──Gibson 1955 Les Paul Gold Topを抱えてメロウなクリーンとパワフルなディストーションサウンドのコントラストを活かしつつ、エモーショナルなギタープレイを織り成す姿が印象的でした。エリックさんはMR.BIGの「TO BE WITH YOU」(1991年発表)、ジャックさんはNight Rangerの「(You Can Still) Rock In America」(1983年発表)をセレクトしたということですね。いずれも世界的な大ヒット曲です。

松本:僕はポール・ギルバートみたいな凄いプレイ(と言って、電気ドリルの先端にギターピックを取り付けたトリックプレイを真似る)はできないから(笑)。それに最初エリックは「「TO BE WITH YOU」じゃない曲にしようよ」と言っていたんだけど、僕が「みんなあの曲が好きだから」と言ってアコースティックで演奏することになったんだよ。

──「(You Can Still) Rock In America」もジャックさんの選曲ですか?

松本:ジャックとは最初、Night Rangerの「Don’t Tell Me You Love Me」(1982年発表)をやろうかと話してたんだけど、「「(You Can Still) Rock In America」がいい。ステージの上方から国旗が降りてきて「(You Can Still) Rock In America」を演奏する演出を今、もう一回やりたい」と。ジャックらしいし、やってよかったよね。

──3曲共に楽しめました。いつもながらカバー曲を丁寧にコピーされている松本さんのプレイにも胸が高まりました。

松本:そうなんだよね、僕はあまり原曲をいじらない。リスペクトを込めてカバーさせていただくので、勝手に変えたりするのは違うと思うから。ただ、「(You Can Still) Rock In America」のギターソロのこんなこと(8フィンガー奏法のジェスチャー)はできないから(笑)。

──いや、松本さんはブラッド・ギルズのアーミングソロをコピーされてましたよね。そのソロに続くジェフ・ワトソンの8フィンガー奏法をコピーされたのがYTさん。

松本:そう、そっちはYTに任せた(笑)。YTはそういうプレイが得意だから、しっかりと再現していたよね、すごいよ。映像を見てもらうと分かるけど、あの部分(8フィンガー奏法)では、彼のプレイを見るためにメンバーのみんながYTのところに集まるという(笑)。

──すごく微笑ましいシーンでした(笑)。アンコール1曲目の「(You Can Still) Rock In America」で客席を興奮させつつ、アンコールラストの前のMCでエリックさんは、松本さんのことを「ギターヒーロー」と紹介して、楽曲「GUITAR HERO」で締めるあたりの構成も素晴らしかったです。

松本:ありがとうございます。

──<TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet->ファイナルの東京ガーデンシアター公演の本編を締めくくったのが、BABYMETALを迎えた2曲で。「DA DA DANCE」はBABYMETALの3rdアルバム『METAL GALAXY』収録曲であり、松本さんがフィーチャリングゲストとしてレコーディングに参加したナンバーです。そして本編ラストの「ETERNAL FLAMES」はレコーディングにBABYMETALが参加した曲で、ライブではSU-METALさんを加えた編成で披露されました。

松本:当初は、BABYMETALとライブまでご一緒できるとは思っていなかったんですよ。ライブの制作を進めていく中で「一緒にステージに立ちませんか?」とオファーしたら、快く引き受けてくれたんです。BABYMETALと一緒にステージで演奏できたのはすごく楽しかったね。

──BABYMETALの皆さんも笑顔満開で、ステージを楽しまれていることが伝わってきました。世代を超えて一緒に音楽を楽しんでいる様子が本当に魅力的です。

松本:そうですね。彼女たちはもう娘みたいなもので(笑)。

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