【ライブレポート】リーガルリリー、独自の音景が花開いた<cell,core 2022>。ファイナルでくるりと競演

独自の世界観と秀でた演奏力を持ったスリーピースバンドとして、多くのリスナーから熱い支持を得ているリーガルリリー。そんな彼女達は昨年12月10日に崎山蒼志とPeople In The Boxをゲストに招いた主催ライブ<cell,core>を、TACHIKAWA STAGE GARDENで行った。リーガルリリーがリスペクトするアーティストとの競演というコンセプトを掲げた同イベントは大きな反響を得て、彼女達は今年も開催することを決意。<cell,core 2022>と銘打たれた今回は東名阪をまわる2マン・ツアーという形になり、ゲストは愛知ボトムラインが羊文学、大阪BIGCATがMy Hair is Bad、東京Zepp Hanedaはくるりという錚々たる顔ぶれで行なわれた。スケールアップを果たした<cell,core 2022>のファイナルを飾ったZepp Hanedaのライブの模様を、お届けしよう。
<cell,core 2022>が充実したツアーになったことを表すようにZepp Hanedaには多数のオーディエンスが集結し、場内は開演前からいい空気感に包まれていた。開演時間が近づいてオーディエンスのテンションが高まっていくことを感じていると、場内が暗転してくるりのライブが始まった。



くるりは心に染みる「街」から幕を開け、ウォームなナンバーやブラック・ミュージックに通じるスタイリッシュなテイストのナンバーなどを経て、パワフルな後半に至るライブを披露。くるりならではの叙情性や良質な演奏、そして徐々にクレッシェンドしていくライブ構成などが見事に決まって、場内は熱い盛り上がりを見せた。リーガルリリーのファンが多い場で、場内を埋めたオーディエンスを魅了したのはさすがの一言に尽きる。

くるりに次いでステージに立ったリーガルリリーはアップテンポの「GOLD TRAIN」からライブをスタートさせた。たかはしほのかの透明感を湛えたボーカルと力強く疾走するサウンドが生み出す、どこかドリーミィーなテイストは非常に魅力的で、“ググッ”と心がステージに惹き寄せられる。ライブが始まったというよりも、そこに“ポン”とリーガルリリーが出現して物語が始まったような雰囲気もあり、Zepp Hanedaの場内はライブが始まると同時にリーガルリリーの世界と化した。


その後は華やかな前半から一転してダークな後半に移行する「東京」や、たかはしの語りから始まって、ソフトなセクション、パワフルなセクションを経て、スリリングなギター・ソロが炸裂するという起伏に富んだ構成の「9mmの花」、弾き語りから始まり、鋭利な言葉が胸に突き刺さる「ノーワー」などをプレイ。ストーリー性を感じさせるナンバーを続けて聴かせる流れは観応えがあり、場内を埋めたオーディエンスがどんどん惹き込まれていくことが感じ取れた。リーガルリリーが誇る高度な演奏力を発揮して、凝った構成の楽曲をクリアに聴かせたのもさすがといえる。
「今日は<cell,core 2022>にお越しくださり、ありがとうございます。リーガルリリーです。今年2度目の開催でこんなに沢山人が集まってくれて嬉しいです。ゲストはくるりということで、とてもカッコよかったです」というたかはしほのかのMCを挟んだ後は、「1997」「天国」というキャッチーなナンバーが続けて届けられた。キャッチーとはいえただ単に明るい雰囲気だけで終わらないのがリーガルリリーの特色で、この辺りのナンバーは美しさと危うさを併せ持っているのが実にいい。その独特のテクスチャーは本当に魅力的であると同時に、ライブではそれがより際立つ。色彩豊かな情景を描いていく彼女達のライブに触れて、リスナーを虜にする独自の世界観を持ったバンドの強みをあらためて感じさせられた。


たかはしほのかの訴えかけるボーカルをフィーチュアしたスロー・チューンの「明日戦争がおきるなら」、海とゆきやまが生み出す心地いいグルーブと“尖り”を融合させた「地球でつかまえて」でさらに場内を深化させた後、ライブは後半へ。アッパーな「the tokyo tower」と「リッケンバッカー」、疾走感あふれる「はしるこども」が畳みかけるように演奏された。
眩いオーラを放って伸びやかな歌声を聴かせ、荒々しいギター・ソロを炸裂させるたかはしほのか。軽やかなステージングとしなやかなグルーブを紡いでいくベース・プレイのマッチングが印象的な海。強い存在感を発しながらパワフル&テクニカルなドラミングを展開するゆきやま。3人がひとつになって創出されるケミストリーは魅力的だし、シーケンスを使用せずに3人の生音だけで厚みや奥行のあるサウンドを構築する辺りも実に見事。そんな彼女達に応えてオーディエンスも熱いリアクションを見せ、Zepp Hanedaの場内はツアー・ファイナルにふさわしい盛大な盛り上がりを見せた。

アンコールは「<cell,core>は私達が本当に尊敬している人だけを呼ぼうといって始まったもので、去年がすごくよかったから、ちょっと続行してみようということになって。今回はツアーにしてね、参加者もいろいろ対バンを呼んで、東京編はついにくるりでした」(ゆきやま)
「昨日の夜に寝る前まで、“ああ、どうしよう。吐きそう”とか思っていたけど、前に演奏してくださってたのを聴いて、やる気に満ち溢れたよね。本当に、ありがとうございました」(海)という2人のやり取りからスタート。そして、くるりの「虹」のカバーが披露された。くるりの持ち味を継承しつつリーガルリリーの世界に昇華した「虹」でオーディエンスを大いに湧かせた後、ラストソングとしてウォームな「Candy」をプレイ。様々な表情を見せたライブを温かなナンバーで締め括る流れも絶妙で、良質な映画や演劇などを観た後のような感覚を残してリーガルリリーはステージから去っていった。
くるりとの競演という場に臆することなく、自分達の個性を遺憾なく見せつけたリーガルリリー。世界観で魅了するバンドであると同時に、それを表現するスキルの高さが群を抜いていることを実感させるステージは本当に観応えがあった。<cell,core 2022>でメンバー達がゲスト・アーティストから強い刺激を受けたことは想像に難くないし、今回のライブ中に来年7月2日に初となる日比谷野音大音楽堂でワンマンを行うことも発表された。<cell,core 2022>を経たリーガルリリーが一層モチベーションが上がった状態で活動に取り組むことは確実なだけに、今後の彼女達にも大いに期待したい。
取材・文◎村上孝之
写真◎池野詩織
セットリスト<cell,core 2022>《東京編》
2022年11月17日 Zepp Haneda
Guest:くるり
■リーガルリリー
01. GOLD TRAIN
02. 東京
03. ぶらんこ
04. 9mmの花
05. ノーワー
06. 1997
07. 天国
08. 明日戦争がおきるなら
09. 地球でつかまえて
10. the tokyo tower
11. リッケンバッカー
12. はしるこども
EN01. 虹(くるりcover)
EN02. Candy
<リーガルリリー YAON 2023>
2023年7月2日(日)東京・日比谷野外大音楽堂
開場 16:30 / 開演 17:30
Ticket:指定席 ¥5,500(税込)
※雨天決行・荒天中止
オフィシャルHP先行
https://w.pia.jp/t/regallily-yaon23/
受付期間:2022年11月17日(木)22:00〜12月4日(日)23:59
[問]SOGO TOKYO http://www.sogotokyo.com/

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