【インタビュー】FANTASTIC◇CIRCUS再始動、石月 努とkazuyaが語る天命「この二人から始まった物語」

2025.04.30 03:00

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■残された時間はそんなに長くない
■二人だけになったとしてもバンドだと思ってる

──焼き鳥屋でお互いの意思を確認して、活動再開へ向けて動き出したわけですね。

kazuya:はい。その後、何回かスタッフさんを交えて話をしました。

石月:今後のことを話し合う上で「SHUN.の状況も踏まえて、どうする?」って。

kazuya:で、FANTASTIC◇CIRCUSを再開することを決断して、今に至る感じですね。

石月:FANATIC♢CRISISの最後のライヴではみんなを泣かせてしまったという罪悪感もあったし、もう二度と悲しませるようなことはしたくない。だから待ってくれてた人たちのためにも、極端な話、命尽きるまでやりたいんです。さっきkazuyaが言ったように、小さなライヴハウスでやるようになっても、それは原点に戻っただけだから。

──それにしてもkazuyaさんの「この笑顔を守りたいと思った」っていうのは、なかなか言えないですよね。

石月:そんなこと女性からも言われたことない(笑)。

kazuya:肌感ですけど、僕にはFANTASTIC◇CIRCUSで歌っている時の努が、何をやっているときよりも楽しそうに見えちゃったんです。打ち上げで飲んでも明るいし。彼も精神疾患を抱えているから、友人として心配っていうのもあるんですよ。すごく楽しそうにしている彼から“それを奪うのってどうなの?”って感情が強かった。

──同じバンドのメンバーとして、ですね。

kazuya:僕も大人になったので“自分が自分が”っていう時期はもう終わっているんです。今はオーディエンスの反応はもちろんですが、ボーカリストが気持ちよさそうに歌っているのを見るのが、ライヴで楽しいと思える瞬間。フェイクを入れたりすると“ああ、ノッてるね”とか。そういう姿を見ながら横でギターを弾いてて“これだよ!”って感じることがよくあったんですね。だから彼が元気であることが大切だし、バンドをやるっていうのはそういうことなんです。

──ギターを弾いていてテンションが上がる大事な要素なんですね。

kazuya:すごく大事ですね。

──10代の頃、毎日電話かかってきた時には、今のような関係になるなんて思いもしませんよね。

kazuya:思わないですよ。

石月:当時は無謀を通り超して、何の根拠もない自信のもと「俺とやったら絶対メジャーに行けるから」って言ってました(笑)。

kazuya:僕は誘われるとすぐノっちゃうから「いいね」って(笑)。

石月:kazuyaがさっき「気持ち悪いことを言いますよ」って言ったように、僕もそう思いながら言いますけど(笑)、彼が横でギターを弾いているとすごく安心するんですよ。SHUN.もそう。彼は昔から緊張するタイプで、ライヴ前は掌に人という字を10回書いて飲んで、みんなに背中を叩いてもらってステージに出てたくらいで。それは今でもそうだから、当時から全然変わってない(笑)。二人とも僕の中では10本の指におさまる大切な親友なんです。残念ながら現状は三人でやることが叶わないけれど、仮にFANTASTIC◇CIRCUSが二人だけになったとしても、僕はバンドだと思っているんです。で、今回、僕が最初にkazuyaに「やりたい」って言ったんですよ。

──そうだったんですね。

石月:FANTASTIC◇CIRCUSとして再始動する時も僕から提案したんです。リズム隊のメンバーは表舞台から退いていたんですが、実はFANATIC◇CRISISのメンバー5人で、そのことを話したんです。結果、リズム隊は音楽と距離を置いた生活をしているので参加が難しく、もちろんkazuyaとSHUN.がTHE MICRO HEAD 4N’Sで第一線で活躍していることは知っていたんですけど、「またやりたいと思ってる」って。

──そして今回も、12月14日以降の実質的な活動休止状態から、再び動き出そうと石月さんから提案されたと。

石月:僕らが10代とか20代であれば、SHUN.が万全の状態になるまで待とうと思っていたかもしれない。だけど、昨今は先輩ミュージシャンや、同世代のいろいろな方々が他界して、時間は誰もが平等にいつかはこの世を去る、ということを改めて実感するような出来事が続いて。僕はまだギリギリ40代ですけど、僕の中で永遠に18歳のkazuyaも(笑)、2024年12月に50歳の誕生日を迎えて。ここまで長い友達もいないんですよね。そして、残された時間はそんなに長くない。そこも二人の意見が一致したところなんです。だから、SHUN.を待ちたいけれど、時間には限りがあるし、自分が好きな人と一緒にいるのが一番の幸せ。であれば「やろう!」って。

──少し話はずれるかもしれませんが、10代の頃から同じ夢と同じ景色を見てきたメンバー同士のバンドって長く続くんじゃないかなと思うんです。お客さんが少なかったり、大変時期を一緒に乗り越えてきたゆえ、その後大きな壁にぶつかったとしても原点に戻れるんじゃないかなって。

石月:最初の頃はメンバーの人数よりお客さんが少なかったりしましたからね。僕らは今を生きているので、あまり昔話をすることがないんですけど、もちろんいろんなことがあったわけですよ。東京に出てきて環境も変わって、仲が良くなかった時期もあった。おっしゃっていただいたような壁とは少し違いますが、すごく覚えているのは僕が音楽から離れて、デザイン会社を立ち上げて仕事をしていた時期、kazuyaはTHE MICRO HEAD 4N’Sのリーダーとしてバンドを率いて、事務所も立ち上げて動いていたんですね。その当時、「努が背負っていたものがすごくわかるようになった」と言ってくれたことが嬉しかった。“kazuya、頑張ってるんだな”って思いました。共有できるものはたくさんあるでしょうね。

──FANTASTIC◇CIRCUSとしては、リテイクベスト盤を2枚リリースしたり、インディーズ時代の曲を中心にライヴで披露するなど、FANATIC♢CRISIS時代の楽曲に向き合い、過去の曲をブラッシュアップした日々でもあったと思います。ご自身の曲について改めてどう感じましたか?

kazuya:まず、すごいオリジナリティだなと思いました。当時は音楽的知識があまりなかったので、改めて聴くと“完全にコードとぶつかってるんですけど”みたいなメロディもフレーズもあるわけですよ(笑)。でも、それが逆に心地よかったり、不思議な発見が多くて面白かったですね。今は今のクオリティでいいものが作れると思うし、当時は当時にしか作れない曲を作っていたと思います。それと石月努の言葉ってすごく強い。当時、わからなかった歌詞が“深いな”って感じることもあるし、今の視点で見ると面白いなと思いました。

──当時は“どういう意味で書いたのかな?”と思っていたことも、今ならわかる。

kazuya:そうです。あの頃は忙しすぎたので、歌詞に気持ちを傾ける時間もなかったし。

石月:音源を作ってはライヴの繰り返しだったからね。

kazuya:インディーズ時代の曲もチャレンジ精神旺盛で、音楽的な知識がない中でよく頑張ってたなって。『MASK』(1996年)なんて、作り直せないレベルのアルバムだと思いました。

石月:最初にkazuyaを誘ったことも含めて、間違ってなかったなって。kazuyaは「知識がない中で」と言いましたけど、逆にそれってすごいメリットなんですよ。知識があると、枠からはみ出せないことが多いので。

──理論やスキルが邪魔してしまうと。

石月:たとえ、“厳密に言うと、この音とこの音ってあたってますよね”っていう部分があったとしても、僕はそういうものを超える閃きや響きとか、フレーズを大事にしたいと思っているんです。僕の曲もFANATIC♢CRISISサウンドに昇華してくれるkazuyaがいるから形にできたと思ってますし。“あ、そうくる?”みたいな驚きがあって、彼が生み出すフレーズが大好きなんです。

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