“希死念慮”がコンセプトの新アイドルグループ・MADOROMI-マドロミ- 誕生「この活動に人生を賭けていく」

5月某日、マネジメント事務所MAD’S iNKから新しいアイドルグループ誕生のティザー動画が、オフィシャルXアカウント開設とともに公開された。
『春を知らない私たちへ』と題された、海辺をシチュエーションにした爽やかな映像に多くの視聴者は戸惑うも、オーバードーズと血塗れの展開へ。……そんな結末に安堵してしまうのもどうかとは思うが、誰もが抱える心の闇や、負の部分を包み隠さず赤裸々に歌にしてきた同事務所のアイドルであるから、多くの者がそうしたダークでドロドロとした感情を弄ってくるようなグループを期待するのは当然なのかもしれない。
そんな多くの者が待ち望んだであろう新グループ、“MADOROMI-マドロミ-”は“希死念慮”をコンセプトにしている。MAD’S iNK のグループであり、今年1月に終幕を迎えたMADMEDの猿馬虎(ヨミ:エンマトラ)と深ゐ沼(ヨミ:フカイヌマ)、そして別事務所にてダークアイドルシーンを賑わせていてきた、月神キラ(ヨミ:セレネキラ)と闇牙アル(ヨミ:ヤミガアル)、さらに関西で活動していた堕嬢。(ヨミ:オジョウ)という、それぞれの前歴を持った実力派5人が集結。であるから、メンバー発表の際、SNSは騒然となった。5人のファンでなくとも、アイドルファンが大きく注目するグループなのである。


2026年5月11日、渋谷Spotify O-EAST。MADOROMIのお披露目公演『心中未遂』はそうした注目の中で開催された。MAD’S iNK所属のマザリを筆頭に、全13組が出演。平日15時開演にも関わらず多くの観客が見守る中、トリのMADOROMIは出番を迎えた。
赤子の鳴き声とデジタルビートが錯綜していくSE「微睡みの最中」。無機質な空気が広がる会場を支配するようにMADOROMIの5人が現れると、「心中ごっこ☆」でライブをスタートさせた。数え歌のキャッチーな節回しで始まるも、その詞に耳を傾ければ痛々しい言葉の羅列だ。ステージのバックスクリーンには、そうしたカオティックなリリックビデオが流れつつ、5人はパフォーマンスを展開。アルが凛とした歌声を響かせれば、堕嬢。が野太い歌声で呼応する。ビートに対しジャストでキメてくる虎と、しなやかさとキレを備えたキラの俊敏な動きがオーディエンスを制圧し、少女のように飄々とした沼の歌声がMADOROMIの無情で無常な世界にフックを与えていく。

そのままアッパーな「スーサイドマニュアル」へと傾れ込んだ。5人ともにアイドルとしてのキャリアがあるとはいえ、堂々としたパフォーマンスに驚愕。技術力と5人の統率力、ライブ運びのシームレスさに圧倒される。流麗なピアノの旋律がメランコリックに崩壊して始まる「致死量-リーサルドールズ-」。デジタルビートに混じった音楽隊のようなサウンドに乗せて舞い踊る5人。そんなステージからの攻勢に呑み込まれながらも、次第にノリを覚えていくフロアからは5色のペンライトと腕がリズミカルに揺れた。

「人間がいっぱい!」フロアを見渡しながら、そう嬉しそうに語る堕嬢。。地雷系ロック、ダークアイドルシーンでは名の通った他の4人とは異なり、彼女のことをはじめて観た者も少なくはなかったはず。しかしながらその可憐なビジュアルとは裏腹の貫禄ある歌声と悠然とした佇まいを前に、打ちのめされたオーディエンスが多くいたのは目にも明らかだった。それは前事務所からのイメージカラーが変わったアルとキラの新たなポテンシャルも同様であり、寒色から暖色へとそのヘアカラーも大きく変わった沼も生まれ変わったように新しい輝きを帯びている。虎といえば、その反面で変わらぬ安定感と信頼感が、その風貌から滲み出ている。

自己紹介を挟み、「リスカ」へ。このお披露目ライブ前に発表された名刺代わりの同曲は、公開後すぐにサビのキャッチーな泣きメロディが名曲との呼び声も高く、そのままグループへの期待値に繋がった。ヘヴィなディストーションギターと身体に響くラウドなビートの上を5人が歌い踊る。ニヒルな虎とマントを翻しながらのキラによるエッジの効いたラップの掛け合い、そのあいだをしゃくりあげるようにアルが声を突く。艶っぽくまとわりつく堕嬢。と無感情にまどろむ沼の歌のコントラストは鬱くしい。メロディとリズムと言葉が絶妙にまどろむ難度と、斜に構える大人びた詞世界は、これまでのダークアイドルには表現できなかったものだろう。これこそがMADOROMIのアイデンティティであると確信した。


どこか童謡的な懐かしさと不気味さが共存する「※大切な推死らせ」を妖しく届けると、ラストナンバー「不健全で完璧な愛の形。」が贈られる。複雑な楽曲構成とサウンド構築。緻密に組まれたメロディの調和と、何よりも歪(いびつ)な愛情を表現していくスタイルは、MADOROMIが、MAD MEDiCiNE、MADMEDと受け継がれてきた、“MADの魂”を継承するグループであることの証明であるだろう。不穏な平歌から解放されていくサビへといざなう。5人が織りなす愛の形は、歪ながらもシームレスだ。堕嬢。からアルへ、流麗なボーカリゼーションがフィナーレへと導いた。

「僕たちMADOROMIはいろんな想いを持って、この5人揃って、このステージでまたアイドルをやるということを決意しました。この活動に人生を賭けていく覚悟のあるメンバーたちですので、僕たちにしか出せない音楽をこれからも応援してくださると嬉しいです」

最後の挨拶で虎が語った言葉。誤解を恐れずに言うのなら、夢半ばの5人が新しい夢に向かって集まった。この5人でしか成し得ない夢に向かって、この5人でしか表現できない音楽を届けていく。MADOROMI-マドロミ-の物語が今ここに始まった。
取材・文◎冬将軍
撮影◎ミヤタショウタ
セットリスト
SE 微睡みの最中
心中ごっこ☆
スーサイドマニュアル
致死量 -リーサルドールズ-
リスカ
※大切な推死らせ
不健全で完璧な愛の形。