【ライヴレポート】HYDE、日本人ロックアーティスト初のウィーン公演に集大成「長い旅を経て、今日は僕の人生のなかでも特別な日の一つとなりました」

ソロ活動25周年という大きな節目を迎えるHYDEが、2026年1月より行ってきたコンサートツアー<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL>のグランドファイナル公演となる<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wien>を5月25日(日本時間では5月26日)、自身が観光大使を務めるオーストリアのウィーン・コンツェルトハウス 大ホールにて開催。日本人ロックアーティストとしては初となる現地オーケストラとの共演を果たし、5ヵ月に及んだツアーに有終の美を飾った。なお、この日のステージは日本各地の映画館でのライブ・ビューイングおよびライブ配信によって生中継され、さらに日本時間の5月26日19時にも映画館でのディレイ・ビューイング(収録上映)が行われた。
音楽の都・ウィーンに鳴り渡った至高の音楽。間違いなく記念すべき夜だ。長年にわたる音楽活動とシーンへの貢献を評価されてHYDEがオーストリア観光大使に大抜擢されたのは2024年のこと。それ以来、足繁く現地に訪れるなど親密な関係性を築き上げてきた彼だが、ついにその本領が存分に発揮される時がやってきた。

HYDEといえばラウドな音像と激しいロックパフォーマンスを身上としたアグレッシヴなステージが真っ先に浮かぶが、2026年は一時的にそうした“動”のモードを封印し、もう一つの音楽表現として内面に秘めた“静かなるHYDE”を追求することに専念。1stソロアルバム『ROENTGEN』の、四半世紀越しの続編としてニューアルバム『JEKYLL』の制作を推し進めると同時に、そのタイトルを冠し、サウンドの主軸となるオーケストラをフィーチャーして挑んだツアーが<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL>だ。
“静”と“動”、自身が持つ音楽的二面性を有名な怪奇小説『ジキル博士とハイド氏』になぞらえ、“もう一人のHYDE”として『JEKYLL』の世界観を見事に具現化した今ツアーは3月31日および4月1日に開催された神奈川・ぴあアリーナMM公演にて一旦、国内ファイナルを迎えたが、その後、5月17日に急遽、HYDEの故郷・和歌山県にて一夜限りの特別公演<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wakayama>を敢行。ウィーン公演への架け橋としていたことからも<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wien>へと向かうHYDEの並々ならぬ意気が見て取れる。

1913年竣工のずっしりとした歴史の重みを滲ませたウィーン・コンツェルトハウス。日本のファンのみならず詰めかけた現地の観客で埋まったクラシカルなコンサートホールのステージに、黒のロングコートとつば広のハットというダンディな出で立ちでHYDEがステージに姿を現すや、場内は割れんばかりの拍手と歓声に沸いた。HYDEの音楽を形作るに今や欠かせない相棒となったバンマスのhicoが奏でるピアノを筆頭に日本から参加しているのはギター、ベース、ドラム、男女コーラスの6名。それ以外は全員が現地のオーケストラだ。指揮者含め総勢26名と日本での公演時より一回り規模の大きな楽団をバックにさすがのHYDEも刹那、緊張の色を浮かべていたが、アルバム『JEKYLL』でも1曲目を飾る「DIE HAPPILY」のたおやかな調べに自身の歌声を重ねた途端、その目にはっきりと力強さがみなぎり、たちまち輝きを増していくのがはっきりとわかった。
「Guten Abend, Das ist HYDE. (こんばんは、HYDEです)」
開口一番、ドイツ語での挨拶に現地のオーディエンスが歓喜の声を上げる。続けて、ここがとても素晴らしいホールであること、自分は日本人のオーストリア観光大使である旨を英語で告げ、「日本とオーストリアの特別な文化交流をお楽しみいただければ幸いです」とこれまた英語で呼びかけるHYDE。会場には日本から訪れたファンも少なからずいたが、それに甘えることなく、自分の言葉で気持ちを届けるHYDEの姿勢に共感の拍手が途切れない。そのまま「SO DREAMY」の楽曲説明も英語でやり遂げると、場の空気はすっかりHYDEの手中だ。

日本の公演でも恒例だった、“コンサート中盤にご当地グルメを食すコーナー”も健在。「ウィーンの名物は?」と英語で問いかけては客席のあちこちから上がる声に「正解! ザッハトルテです!」と英語で応えると、手掴みで大胆に頬張って「It’s delicious!」と舌鼓を打つHYDEに嬌声が上がる。かと思えば、「Before the intermission, Please listen to one more song, OK? (休憩前にもう1曲聴いてもらえる?)」と訊ねた言葉をそのまま即興ソング、しかも本気の歌声を響かせて笑いを取るなど、海を越えても変わらないチャーミングな人柄全開でオーディエンスを魅了。
さらに「Are you fuckin’ ready?」とアグレッシヴモードのライヴではお馴染みのフレーズを挑発的に投げかけて「DEFEAT」に突入、ライヴハウス顔負けのダイナミックなヴォーカリゼーションとパフォーマンスを見せつけるのだから、たまらない。オーケストラもHYDEに感化されたかのごとく演奏にみるみるダイナミックなエネルギーを宿らせて、全席着席指定にも関わらず、客席を熱狂のるつぼへと容赦なく誘う。HYDEとオーケストラとのリハーサルは現地での1回のみと聞いていたが、そんなのまるで信じられないほどに、HYDE本人とも日本からのバンドとも阿吽の呼吸で音楽を紡ぎ上げていく現地オーケストラの迫力に本場の底力を思い知らされた瞬間でもあった。

クラシック形式でのプログラムに従い、20分ほどの休憩を挟んで再開されたコンサート。浮遊感をたたえたハンドパンの神秘的な音色とHYDEの美しいファルセットが聴き手を深い内省の世界へと導く「FADING OUT」からスタートした後半は、ひときわエモーショナルにシフトした歌唱と荘厳さを増したアンサンブルによってガラリとムードが刷新された。衣装を白いブラウスシャツに替えたHYDEの佇まいもよりいっそう生身の魂を感じさせる。最新シングル曲「THE ABYSS」のダークネスと、ソロデビュー曲「EVERGREEN」の色褪せない清冽な抒情とのコントラストも鮮やかで、おそらく25年前には思い描いていなかっただろうこの場所で、両極とも呼べる2曲が鳴っている奇跡に心が震えた。
日本のツアー本編では披露されなかった(和歌山公演では披露) 坂本龍一×デヴィッド・シルヴィアンのカバー「Forbidden Colours」も白眉。映画『戦場のメリークリスマス』の主題歌をモチーフに坂本龍一がアレンジ、若きHYDEに多大な影響を与えたデヴィッド・シルヴィアンが歌唱を担うこの曲に託したい何かがきっと彼にはあったのだろうと勝手ながら想像する。歌い終えた直後、HYDEは坂本龍一に触れて「彼は亡くなってしまったけど、その音楽は永遠に残り続けます」と英語で口にした。自身のキャリアを振り返りながら「長い旅を経て、今日は僕の人生のなかでも特別な日の一つとなりました。ありがとう」とも。音楽の都に馳せる想い、日本とオーストリアとで繋ぎ続けていきたい大切なもの──それを端的に表していたのが、これも日本のツアー本編では未披露の「ZIPANG」ではなかったか。古き良き日本をイメージしたバラードであり、この曲のMVは京都の東寺を舞台に撮影されている。オーストリアの古都に日本の古都を重ね、織り上げられる切実な祈り。この日歌われたのは日本語詞ヴァージョンだったが、伝わるものは確実にあったはずだ。

<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wien>を締めくくったのはやはり「LAST SONG」だった。クラシカルなホールゆえ、映像演出は一切使用せず、ステージ演出は照明のみという状況下で、これほどにも多彩に楽曲の世界観を表現できるのかと瞠目する場面は幾度もあったが、この日観た「LAST SONG」には<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL>のみならず、昨年開催された<HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR>を含め、アグレッシヴなライヴツアーのどの公演よりもずば抜けて圧倒された。ドラマティックに展開するオーケストラのアンサンブル、それすらも凌駕するHYDEの生々しいまでに鬼気迫る歌と、全身全霊のパフォーマンス。音楽人生のすべてを賭したと呼んでも過言ではないそのステージングは、まさしく彼のキャリアの集大成だっただろう。
最後の最後はオーケストラのほうに体を向け、大きく腕を振り抜いて演奏を自ら結んだHYDEは、再び客席に向き直り「Vielen Dank!(どうもありがとう!)」と真っ先にドイツ語で叫び、「どうもありがとう!」「Thank you so much!」「Danke schön!」と続けた。達成感に満ちた笑顔がなんとまぶしいことか。素晴らしい演奏を体現してくれたオーケストラへの賛辞、ライブ・ビューイングやライブ配信を通じて日本をはじめ世界各地でリアルタイムに見守ってくれたファンへの感謝を改めて告げたHYDEは「本当に最高のツアーでした。Vielen Dank,Vienna!(ありがとう、ウィーン!)」と投げキスをして、去り難そうにステージを降りていった。

取材・文◎本間夕子
撮影◎田中和子
■LIVE STREAMING<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wien>
アーカイブ配信期間:5月27日(水)00:00~5月31日(日) 23:59
※アーカイブ配信開始時間は変更となる場合がございます。
※ライヴ配信のチケットをお持ちの方は、アーカイブ配信期間中は何度でも視聴が可能です。
※アーカイブ配信期間が終了しますと視聴途中の場合も配信が終了いたしますのでご注意ください。
※アーカイブ配信については一部編集が入る可能性がございます。ご了承ください。
▼配信メディア
LIVESHIP「HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wien」
視聴URL:https://liveship.tokyo/hyde-jekyll-in-wien/
▼チケット
¥4,500(税込)
販売期間:4月28日(火)18:00~5月31日(日)20:00
※コンビニ決済の場合は5月31日(日)19:30まで

◾️アルバム『JEKYLL』
2026年3月11日(水)配信開始
配信リンク:https://hyde.lnk.to/jekyllPR
2026年5月13日(水)CDリリース
CD購入:https://hyde.lnk.to/jekyll_cdPR
【UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤(CD+Blu-ray+M∞CARD+ブックレット+グッズ)】
PDCV-1251 / 14,850円(税込)
※完全数量限定 / LPサイズ特別BOX
◯CD:デジパック仕様
◯Blu-ray / M∞CARD (エムカード) 収録映像
・CD収録楽曲 全10曲のMusic Video
・Special Movie
※M∞CARD (エムカード) 初回アクセス期間:2026年5月12日~2028年5月12日
※Blu-rayとM∞CARD (エムカード) の収録映像は同内容です。
◯ブックレット:LPサイズ
◯グッズ:アクリルパネル4枚セット
【初回限定盤(CD+Blu-ray+M∞CARD)】
UICV-9345 / 6,490円(税込)
◯CD:デジパック仕様
◯Blu-ray / M∞CARD (エムカード) 収録映像
・CD収録楽曲 全10曲のMusic Video
・Special Movie
※M∞CARD (エムカード) 初回アクセス期間:2026年5月12日~2028年5月12日
※Blu-rayとM∞CARD (エムカード) の収録映像は同内容です。
【通常盤(CD)】
UICV-1120 / 3,300円(税込)
◯CD:12㎝プラスチックケース仕様
▼収録楽曲 ※全形態共通
01.DIE HAPPILY
02.SSS -HYDE Ver.-
03.MAISIE -HYDE Ver.-
04.FINAL PIECE
05.SO DREAMY
06.THE ABYSS
07.TATTOO
08.NOSTALGIC
09.SMILING
10.FADING OUT

●CDショップ別購入者特典
・VAMPROSE STORE:クリアファイル
・Amazon:メガジャケ
・楽天ブックス:A2ポスター(楽天ブックス限定絵柄)
・タワーレコード:A2ポスター(タワーレコード限定絵柄)
・HMV:A2ポスター(HMV限定絵柄)
・UNIVERSAL MUSIC STORE:A2ポスター(UMストア限定絵柄)
・その他CDショップ:A2ポスター(その他CDショップ限定絵柄)
■ 『JEKYLL』 LP
【アナログ盤LP】PDJV-1015 / 5,500円(税込)
予約URL:https://store-annex.universal-music.co.jp/product/pdjv1015/
※UNIVERSAL MUSIC STORE限定商品
※販売予定数に達し次第、販売終了となります。
▼収録曲 ※通常盤CDと同内容
01.DIE HAPPILY
02.SSS -HYDE Ver.-
03.MAISIE -HYDE Ver.-
04.FINAL PIECE
05.SO DREAMY
06.THE ABYSS
07.TATTOO
08.NOSTALGIC
09.SMILING
10.FADING OUT







