【ライブレポート】Nikoん、ロングツアーの果てで見つけた2人で築くバンド像「まだまだ生きづらい世の中を、少しでも生きやすいように変えていきたい」

退屈。最近、退屈。わたし。嫌なわたし──3月21日(日)、Nikoんが東京・Spotify O-EASTにて開催した<2ndワンマンライブ『ふたり。』>は、マナミオーガキ(B, Vo)のこんな呟きをミキシングしたSEでスタートを切った。
お風呂場で開催される反省会さながらにマナミのぼやきたちが薄暗いフロアに飛ばされた頃、「わたし」という一声でオオスカ(G, Vo)へスポットライトが注ぐ。2025年9月にリリースした2ndアルバム『fragile Report』の入場者特典としてプレゼントされた47都道府県ツアー<アウトストアで47>と、同ツアーのマイルストーン的な役割を果たした<Re:TOUR>、この日の“生BGM”を担った神々のゴライコーズと共に駆け回った<fragile Report RELEASE TOUR>の総決算となるこの夜の開幕曲は「fragile report」だ。


マナミは後悔をいくつも浮かべるように少しくぐもった歌声を広げ、オオスカは淡々と鈍色のアルペジオを重ねていく。ここまでドラムの姿は無し。楽曲が中盤に差し掛かる頃、ようやく東克幸(Sup Dr)が登場し、アンサンブルに加わる。なるほど、マナミ1人の嘆きからオオスカをプラスした2人の合奏へ、そして3人へと輪を広げていく過程がのっけから示されたわけである。振り返ってみると、2ndアルバムの帯に記された命題が「バンドって、なあに?」だったわけだけれど、今回掲げられた『ふたり。』という表題はその答案の一部でもあるのだろう。つまり、このツアーファイナルは、ここまで数え切れないほどのライブを積み上げてきた結果、オオスカがNikoんに何を見出したのか、マナミがNikoんをどんな存在だと感じているのかを確かめる1日と言える。
こうしたクエスチョンに対し、ハッキリと回答用紙が提出されたのが、オオスカが「47都道府県を回ってみて、3回くらい自分の人生が変わった気がします」と告げたライブ中盤。彼はツアー中に父が他界してしまったことを機に「強い自分でいることを辞めようと思った」と話し、こんな言葉を続けた。
「好きな人には好きって言って良いし、最悪なことには最悪って言って良い。死にたいなら死にたいって言って良いし、生きたいなら精一杯笑って生きたら良いと思う。でも。本当にどうしようもなく消えちまいたい時は、ライブハウスに来たら良い。そこには俺たちがいる。Nikoんはそういうバンドです」

にっちもさっちもいかない時の避難所としてライブハウスを、そしてNikoんを解放し続けるという誓い。決してスペシャルではないこの約束が、嘘と格好付けを忌避し、自らが掬い上げられる領域で四苦八苦してきたオオスカの口から放たれることの尊さたるや。彼らがいつ何時も重たい扉の向こうで血生臭いミュージックを奏でている理由を明示した後、届けられた「step by step」の《愛し愛されて 狂おしい》という1節は、先ほどのMCとオーバーラップしながら、両親やメンバー、対バン相手、ファンとの交歓の中で新たな自己像を作り上げてきた2人の歩みを映し出していく。沸騰したフラストレーションを破裂されるシャウトだって、疾駆する血流をエネルギーに変換したみたいに動き回るステージングだって変わっていない。しかし、裏路地を彷彿とさせる怪しげなムードを醸し出した「ghost」や鉄めいた弦のタッチ音が伝播してきた「smile」の穏やかになった歌唱から窺い知れる通り、オオスカは己の弱さを曝け出し、他者へ頼れるようになったのだろう。笑みを溢しながら「珍しく緊張してますわ!」なんて明かせるのも、欠落ばかりだって良いのだと気付けたからである。

さて、オオスカが「新生Nikoん、かくあるべし」と「step by step」で再誕を告げたのだから、マナミも負けじと「靴」で応戦。鬱屈とした空気と不要なプライドは混じり気のないファルセットで払い落とされ、ただ掴みたいものへ手を伸ばすために清らかなボーカルが響き渡っていく。こうして生まれ変わったマナミの変化を表していたのが、呼吸1つも許されないほどのひりつきを演出した「とぅ~ばっど」を経た、こんな語りだった。
「(ツアーを通じて)確かに成長はしたんですけど、自分の手柄だっていう感覚は無くて。というのも、メンバーやマネージャー、スタッフがいる以上、頑張るのは当たり前だから。でも、決して他人事ではない手応えがあったんですよね。これって、Nikoんというバンドとして頑張ることができた証だと思うんですよ。私の1人称として、Nikoんが出てきたこと。それが嬉しかったし、みんなに報告したいなと思いました」
取材にて「これまで自分がやってきたバンドは、バンドの核となるメンバーがいた上で自分が存在しているようなイメージだった」と述べてくれたように、マナミにとってバンドとは率先して引っ張っていくものではなかったのだろう。あくまでも私はピースの1つに過ぎず、定着した楽譜をなぞることが正解なのだと思い込んでいた日々もあっただろう。しかし、意気揚々とスタッカートの効いたボーカルを披露した「nai-わ」や、拳をぶん回してアジテートした「さまpake」にも「さぁ、どんなもんだ!」なんて勢いが滲んでいた通り、彼女は「Nikoんは誰でもない私がいることで成立するのだ」と自覚したのである。そう、“わたし”から始まったこの舞台は、ここにきて正真正銘“Nikoんというふたり“のものになったのだ。


すると、白い光が祝福のごとく降りしきる中、「(^o^)// ハイ」が鳴らされる。《何気ない誰かの何気ない言葉が 積み重なってく 積み重なっていくよ》と綴られた1節は、この長い長い旅路で2人が身をもって体感してきたことにほかならない。津々浦々を巡り、その地で暮らす人々と交わしてきた会話と吐き捨てられた罵声、手渡されたエール。数々のバンドと真っ向からぶつかることで相対化されたNikoんの武器と、まだまだ補っていきたいウィークポイント。それら全てが神聖な旋律によって、まるで<アウトストアで47>を始めた10月からの走馬灯みたいに、次々に立ち現れては消えていく。ラララのメロディーで真っ直ぐに掲げられたいくつもの両腕は、Nikoんが各地で目を合わせてきた人たちの存在そのものを象徴していた。
強情でワガママに見えるけれど、抱え込んだ弱音をようやく分配できるようになったオオスカ。居場所が分からず、存在の肯定なんて夢のまた夢だったけれど、フロントマンとして胸を張れるようになったマナミ。彼らは、こんな2人から成立するバンドがNikoんなのだと断言した。マナミのMCを嬉々たる表情で見つめていたオオスカと、オオスカのMCを「聞いてなかったわ!」と受け流したマナミの風姿からこぼれていた通り、互いに補い合い、ぶつかり合う共同体がバンドなのだと断言した。


とはいえ、2人の道のりはこれでめでたしめでたしでは終われない。クライマックスでオオスカが「俺たちはまだまだ生きづらい世の中を、少しでも生きやすいように変えていきたい。できるだけ誰も傷つけない生き方で変えていきたいって思っています」と表明したように、バンドとツアーを通じてアイデンティティを書き換えた2人は、諦観にまみれたあなたと世間に少しずつ革命を起こそうとしている。その改革に必要なのは、何倍にも格好良くなった歌と演奏、そして極太になった自信だけだ。
なお、Nikoんは“全国各地、想い想いの活動を行い、牙を研ぎ、機を窺っているたたかう者たちを全国各地から一堂に恵比寿に集める”という意志のもと8月3日(月)・4日(火) に<Nikoん × maximum10 × ARAYAJAPAN pre「リキッドルームで47~ぐんゆうかっぽ~」>を開催する予定だ。
それに先駆けて、東京・大阪・鹿児島にて4デイズ、5デイズのライブも開催。チケットは現在販売中だ。
文◎横堀つばさ
写真◎稲垣ルリコ
<Nikoん × maximum10 × ARAYAJAPAN pre「リキッドルームで47~ぐんゆうかっぽ~」>

2026年8月3日(月) / 4日(火)
OPEN 11:30 / START 12:00(予定)
東京/恵比寿 LIQUIDROOM(建物内に3ステージ予定)
チケット:
・1日券:470円
・当日お渡しTシャツ付1日券:4700円
・2日通し券:900円
・当日お渡しTシャツ付2日通し券:5470円
※「当日お渡しTシャツ付2日通し券」に関しては、特別価格5,000円の手売りチケット有り
【イープラス】https://eplus.jp/nikon/
<群雄割拠>

・東京4DAYS
2026年5月18日(月) at 下北沢 SHELTER w/ Texas 3000
2026年5月19日(火) at 下北沢 SPREAD w/ imai、徳利
2026年5月20日(水) at 吉祥寺 WARP w/ Good Grief、waterweed
2026年5月22日(金) at 下北沢 ERA w/ Khaki
全公演 OPEN 19:00 / START19:30
東京4日間通し券:6,000円
各公演/前売:2,500円
・大阪5DAYS / 対バン有り(後日発表)
2026年6月29日(月) at 難波 BEARS
2026年6月30日(火) at 梅田 Hardrain
2026年7月01日(水) at 心斎橋 火影
2026年7月02日(木) at 北浜 雲州堂
2026年7月03日(金) at 心斎橋 CONPASS
全公演 OPEN 19:00 / START19:30
大阪5日間通し券:7,000円
各公演/前売:2,500円

・鹿児島5DAYS / 対バン有り(後日発表)
2026年7月06日(月) at 鹿児島 SR HALL
2026年7月07日(火) at 鹿児島 SR HALL
2026年7月08日(水) at 鹿児島 SR HALL
2026年7月09日(木) at 鹿児島 SR HALL
2026年7月10日(金) at 鹿児島 SR HALL
全公演 OPEN 18:30 / START19:00
鹿児島5日間通し券:5,000円
各公演/前売:2,400円
チケット
【イープラス】https://eplus.jp/nikon/
関連リンク
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