【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、12thアルバムは一連のストーリー完結編にしてソロワーク集大成「すべての愛おしい人たちへ感謝を」

■塗り替えを重ねて生まれた知らない色
■人生ってそれがいいんだろうなと
──「流浪の鳥」は歌のメロディに異国情緒があり、昭和歌謡のエッセンスも感じました。
AKIHIDE:ごった煮感ですね、この曲も。サンバのリズムを取り入れているんですが、歌のメロディはインカ帝国で南米の楽器も取り入れています。それでいてギターはヘヴィメタル的な要素があり、サビは歌謡曲的だったり。今までありそうでなかった曲。僕にしては珍しくギターソロを弾いていない曲でもあります。
──先ほどカラフルとおっしゃっていましたが、世界各国を旅しているような気持ちになるアルバムでもあり、聴く人それぞれの心に情景が浮かび上がる曲が多いと感じました。
AKIHIDE:そうかもしれないですね。カラフルだからこそ、それぞれの方が景色を思い浮かべてくださるのかもしれない。
──そして4曲目のインスト「MECHANICAL DANCER」はAKIHIDEさんらしいフュージョンテイストのギターが印象的です。
AKIHIDE:サビの旋律は和のテイストなんですが、そこに至るまでは、コンセプトストーリーに出てくるロボットたちが踊って戦っているイメージを出せたらスリリングだなって。最近、ギターでチョッパー奏法をするのが好きなので、そのイメージにあわせて取り入れてみました。ライヴで盛り上がるかなと思いながら作った曲ですね。
──「流浪の鳥」とは、また違う舞いですね。
AKIHIDE:競い合うイメージの舞いかもしれないですね。

──同じくインスト「蛍ヶ丘にて」は、翼を休めるような癒しの曲です。
AKIHIDE:この曲は僕が影響を受けた久石譲さんに通じる美しく儚い世界観というか、タイトル通り、たくさんの蛍が舞っている丘を音で表現したいと思って作った曲です。Aメロから発展させて新たに作り直したんですが、薄っすらエレクトリックギターも入っていて、凝ってはいるんですが、各楽器が主張し合うのではなく、馴染ませるように重ねていきました。
──ちなみにギターは何本ぐらい重ねているんですか?
AKIHIDE:7本ぐらいですね。ツアー<Angya>で演っているループペダル奏法を想定しているので、同じフレーズが重なっていって変化をつけるという意味では、ライヴの影響があって完成した曲です。
──「静かなる月光湖 II」は幻想的なインストナンバーです。
AKIHIDE:この曲はもともと、オフィシャルサイトの隠しページで流れていた曲なんです。“月光湖”という冒険できるコンテンツなんですけど、アニメ『風の谷のナウシカ』の“腐海”のような雰囲気。怪しい生き物がうごめいている映像に似合う曲として作った大好きな曲です。以前、ループペダルで演奏した動画をアップしたんですが、今作ではそこに秘められた切ない物語をより感じてもらえるように後半はドラマティックに展開させています。
──ケルトミュージックの要素もありませんか?
AKIHIDE:音階はそうですね。それとエレクトリックシタールを弾いています。今の時代、打ち込みやシミュレーターを使えば簡単にできてしまうんですが、あえて生で弾くのがいいなって。
──アルバムの中で最もプログレッシヴロック的な壮大さを感じさせる曲でもあります。
AKIHIDE:確かに。プログレかもしれないですね(笑)。

──では、官能的なラヴソング「チョコレート」のポジションは?
AKIHIDE:この曲はコンセプトストーリーありきなんですが、舞踏会で踊るようなリズムで恋愛の駆け引きを描いた曲ですね。男性目線と女性目線の両方で書いた歌詞なので、ギターソロも男女が掛け合いをするイメージで、2本のギターを交互に鳴らしたんです。最後は抱き合うように絡むんですが、音色やフレーズも男性と女性をイメージして弾き分けています。ライヴでより面白くなる曲なんじゃないかな。
──この曲で現実に引き戻される感じがします。
AKIHIDE:そうなんですよ。一回ガラッと雰囲気を変えたくて。
──アルバムの中の第2幕みたいな?
AKIHIDE:おっしゃる通りですね。
──インストの「Wolf Man Rhapsody」は静から動、また静へと移り変わっていく展開やギターも魅力的です。
AKIHIDE:タイトルは和訳すると“狼男の狂想曲”なんですが、コンセプトストーリーの中で狼は非常に重要なキャラクターなので、夜の闇に潜んで獲物を狙っている感じと、狼がそうせざるを得なかった心情を描きたくて書いた曲です。前半のジャジーなサウンドは狼が密かに近づいてくるイメージ。サビで弾ける両極端なアレンジは光と影を表現しています。
──狂想曲は自由に移り変わるスタイルの音楽でもありますものね。インストに関しては、過去のアルバムで一番難しい曲が揃っているのではないか、という印象も受けました。
AKIHIDE:どうなんでしょうね? ただ、過去のインストはノリや勢いで作ることが多かったんですが、今回は既にあった曲を構築し直す作業もあったので、自然に聴けるアレンジでありつつ、演奏は難しくなっているかもしれないですね。

──「COLORS」はどんな風に生まれた曲ですか?
AKIHIDE:この曲はすごく難産でした。ディレクターのアドバイスもあって、当初とは全然違うメロディになった曲です。
──色を人生に例えた歌詞がいいですね。
AKIHIDE:ストーリーの主人公である絵描きの気持ちを歌いたかった曲なんです。アート作品にも言えることなんですが、色を塗る時って最初は、光の三原色である赤と青と緑を塗って、その後に白のジェッソを使ってから色をつけていくんです。その手法だと同じ青でも深みというか、グラデーションが生まれるんですね。人生もいいことも悪いこともあるカラフルな日々で、塗り重ねることで真っ黒になってしまうかもしれない。けれど、その後に新しい色を塗ったら、最初より深みのある赤や青になるんじゃないかって。そうじゃないと報われないし、頑張れないと僕自身が思ったので。塗り替えて塗り替えて、自分さえ知らない色が生まれたら。人生ってそれがいいんだろうなと思って書きました。
──間違えたって不器用だって、何回も描いていこうというメッセージに、気持ちが楽になる人も多いんじゃないかと思いました。
AKIHIDE:ありがとうございます。サビの歌詞は今までにないぐらい言い放つ表現をしているんです。それも『Three Stars』から三部作が始まって『Fortune』を経た自分自身の変化のひとつかもしれないですね。
──「COLORS」というタイトル自体、アルバムでAKIHIDEさんが伝えたかったこととリンクするのでしょうか?
AKIHIDE:その通りです。三部作のコンセプトストーリー自体が、色が認識できなくなった主人公がついには世界がモノクロにしか見えなくなる。そして、その結末を最後に描いているので、色は裏テーマになっています。







