──『St.Anger』には、よりハードだった初期Metallicaサウンドに回帰しているという言葉が寄せられていますが、同意されますか? JAMES:Metallicaが最も穏やかな今の時期、お互い最も心地よくいられて、新しいベースプレイヤー(Robert Trujillo)が入って、ツアーを前に自信を持ってリラックスしている時期にあって、作ったアルバムが恐らくは今までの俺たちの作品の中でも、あるいは今出ているアルバムの中でも最高に攻撃的だっていうのは面白いよな。どうしてそうなったんだろうと考えてみると、何もかも音楽に吐き出したからなのか、それとも自分に素直になっただけなのか。俺たちの間には、かなりの攻撃性が秘められている。表には出さないが、話題にはする。それを、矛先を合わせて放出したのがこれなんだろう。俺たちは、こういったエネルギーを蓄えるのはかねて得意としていたが、それをどこへ向けていいのかわからずにいた。たいていは軋轢となって、とりわけLarsと俺の間に表れがちだったんだ。このレコードは、俺は再生とか何とか「再」(re-)のつく言葉は好きじゃないから、これが今の俺たちのいるべき場所ってことなんだと思ってる。昔みたいな感覚は確かにあるけどね。兄弟だって自覚があって、愛しもすれば憎みもするが、お互い支え合っている。昔のやつに経験が加わったって感じの音かな。過去8枚のアルバムと、22年の年月で得たあらゆる経験が、11の曲に注ぎ込まれたというわけだ。 ──Napsterとの争いについては、振り返ってどう感じていますか? LARS:悪夢みたいに思える時がほとんどだよ。一体あれは何だったんだ、みたいな。3年後には、あれって本当にあったことなんだろうかって感じだったから。俺たち、けっこうリスペクトされてて、けっこう好かれてたはずなのに、ある日、目を覚ましたら、俺はロックンロールの世界で最も嫌われる男になっていた。え? 俺? って感じだったよ。どこで間違っちゃったんだろう、俺、善人のうちに入るはずだぜ、って。何もかもが妙だった。俺たちの歴史に目をやれば、常にかなり自分たちを守ろうとしていたことがわかる。誰かが近づき過ぎたり、手を出そうとすれば、必ず行動を起こしてきた。今にして思えば、やったことには誇りを感じる。あの件では、それこそ平手打ちを食らったような気分だよ。世間知らずの俺なりの世界では、あんなことになるとは予想もできなかった。あの問題に対する世間の関心度の高さを、俺は全くわかっていなかったんだ。ひとりよがりに俺は、「Metallicaを守らなきゃ。Metallicaに手を出すな」と考えていた。そしたら(ボンッと音をたてて)、おまえはレコード会社寄りだ、とか、欲張りだ、とか言われ始めてさ。俺はレコード会社寄りの人間なんかじゃない。俺たちは、アンチ・レコード会社な道を生み出したんだぜ。誰よりも先に、レコード会社に向かって悪態をついたのが俺たちなのに。ま、そういうこと。あれは本当にシュールだった。俺やMetallicaについて書かれていることは理解し難かったし、抽象的過ぎて俺の現実というレーダーには引っかかってこなかったんだ。「おまえは本当に欲の皮の突っ張った男だな」と言われても、何の話? って感じでさ。俺たちはずっと、苦情を申し立てる側だった。そうじゃない立場になんか、なりたくない。俺たちのとったスタンスには満足しているよ。あの頃は本当に辛かった。はるかに辛かった。その最中にあって平気な顔をしていなきゃならないってのがキツかった。傷つくことも多かったし、現実と一致しないことばかりで、すごく混乱させられたからね。幸か不幸か、あれをきっかけに議論が巻き起こった。振り返って勝利宣言をするかって? どうでもいいさ。俺たちが正しかったということはとにかくとして、数年たった今、あれをきっかけにあらゆる物事の様相が変わっていったということに気づく人は増えているはずだ。音楽の世界だけでなく、次は映画の世界も。そういうことを世間に教えるだけでも意味があっただろ? すくなくとも俺は'00年のあの6ヵ月を振り返って、教育の第一段階だったと考えるね。 ──Metallicaはいつまで続くと想像しますか? JAMES:Metallicaは、俺たちが終わる必要があると認めるまで終わる必要はない。何か破滅的なことでも起これば別だがね。大変なことは山ほどあった。「もしかして俺はもうMetallicaでやっていけないんじゃないか」ってこともあった。それを経て、強くなって、Metallicaでやっていくだけの健全さを手に入れたんだ。俺たちはすべてを乗り越えたのさ。だからって、次のハードルが更に高く、飛び越え難いものにならないとは限らない。どれもこれも俺たちにとってはチャレンジで、それが増えれば増えるほど俺たちは強くなっていく。NapsterやリハビリやJasonの件がなかったら、ここまで強くなれなかったと思う。そういったことがMetallicaに息を吹き込み、俺たちにとってチャレンジになるんだ。立ち止まる理由なんて全くなかったよ。たとえ車椅子に座ることになったとしてもね。Metallicaであってもなくても、俺が音楽を書くのを止める理由はない。他の連中もきっと、止める理由はないと応えると思うよ。楽しいし、それが俺たちのやるべきことなんだから。 By Dave DiMartino (C)LAUNCH.com |