ヒューストン出身の4人組、Beyonce、Kelly、Le Toya、La TaviaからなるDestiny's Childは、'97年「No,No,No Part 2」でデビュー。R&Bシーンにおいてガールズ・グループ自体の勢いが弱まわり、ソロ・シンガーの活躍が目立っていた、そんな時期である。中でもZhaneやSWV、または4人から3人になって復活したEn Vogueなどベテラン勢だけは孤軍奮闘していたが…。
人気ガールズ・グループが少ない中、Destiny's Childがこの時期にデビュー出来たのは逆によかったのかもしれない。しかしほぼ同時期に同じ4人組みのガールズ・グループAllureがデビューし、リスナー側はこの2組を差別化することなく“流行りのサウンド”として消化してしまう。
Wyclefによるプロデュース…さらにラップでも参加を得たDestiny's Child。一方のAllureは、大ネタ「Bridge」使いのトラックにNasにラップで起用した。華やかなジャケに若々しさを売りにデビューした両グループとも幸先のよい船出であり、特にDestiny's ChildはR&Bチャートで堂々の1位を獲得し大ヒットを記録した。
…が、その後の航海は快晴とはいかなかった。ビジュアル先行で完全に作られたグループ的な見え方があったためか2ndシングルは不発に終わり、翌'98年にリリースされた1stアルバム『Destiny's Child』も、ゴールド・ディスクに輝くものの、大きなセールスを残すに至らなかった。リスナー側にとっては「No,No,No Part 2」の大ヒットの印象が強く、その後の作品は全てこけたイメージがあり、アルバムリリース後の期待感はとても薄かった。
しかし、ここが並みのグループとは違うのか、強運なのか、ガールズ・グループの競争率はとても低く、いつしか代表的な存在になる。 | . | '99年になると、サントラへの楽曲提供など地味な露出で我慢していた彼女たちの2ndアルバム『Writing On The Wall』に先駆けて、久々となるシングル「Bills,Bills,Bills」をリリース。この曲はだらしない男性に向けた強烈な叱咤ソング。現在、彼女たちが持つスタイルの原点とも言えるだろう。
女性R&Bの歌詞というとどこか弱く、恋愛の歌詞が主だったが、ある意味開き直りとも言えるこの歌詞に多くの女性が支持し、ビルボードR&Bチャート9週連続1位という大ヒットを記録した。
この曲で完全にガールズ・グループの代表的な存在になった彼女たちは、この“強い女”路線のオリジネーターとして流行を作ることに。ちなみにその後TLCやToni Braxtonなどの成功も、この手の歌詞が大きく貢献していると考えられる。
満を持してリリースされた2ndアルバム『Writing On The Wall』は、新鋭プロデューサーであったShakespereと元ExcapeのKandiをメインプロデューサーに迎え、その大抜擢が当たることになる。そして何よりも彼女たちにとって転機となったのは良くも悪くも、Rodney Jerkinsプロデュースによる「Say My Name」のリカットであろう。
成功の階段を一歩ずつ着実に登ってきた彼女たちだが、同時に方向性の違いによるメンバー間のトラブルが勃発、Le ToyaとLa Taviaの2人が脱退することになる。すぐさま新メンバーにMichelleとFalaが加わるものの、この曲のジャケにはLe ToyaとLa Taviaがしっかり鎮座し、プロモーション・ビデオでは新メンバーが登場しているというイレギュラーな世界となった。皮肉な事にこの曲はグラミー賞で<最優秀R&Bグループ賞>と<最優秀R&B楽曲賞>に輝いた。 | . | 続く4thカットとなるBeyonceがソング・ライティングを手掛けた「Jumpin' Jumpin'」も大ヒット。しかしながらこのシングルの直後、新メンバーとして加入したFalaが脱退してしまう。既にこの頃にはメンバーの中心的な存在であるBeyonceに全てが注目され、旧メンバーとの確執の噂と同時に、マスコミはこぞってDestiny's ChildをあたかもBeyonceのソロ・デビューのためのグループとして取り上げた。
しかし3人になってもグループの勢いは衰えることがなかった。
3人の女性が主人公の映画「チャーリーズ・エンジェル」の主題歌となった「Independent Women Part 1」がまたも全世界で大ヒット。プロモーション・ビデオでは映画にインスパイアされたのか実際に戦うシーンもあり。
「Bills,Bills,Bills」以来のキーワードだった“強い女”も既に板につき、様々な困難やマスコミの攻撃なども結果として“強い女”のイメージ作りに効果的であった。
そして3人としての活動も落ち着き、'01年に入り3rdアルバム『Survivor』の先行シングルとなる「Survivor」が話題になる。もちろん全てのメディアが新世紀のトップ・アーティストとして彼女たちを取り上げている。
これまでも多くのグループ/アーティストが記録を作ってきたが、20歳そこそこの彼女たちは、きっと今までにない記録を作り上げてしまうだろう。今までにないビッグ・グループとして、彼女たちの可能性はまだまだ奥深い。
日本先行で発売される3rdアルバム『Survivor』を引っさげてDestiny's Childは5月に初来日を遂げる。 |