気になる「Stereo Future」の予告編はこちら!
『Stereo Future』 (2000年日本) GWよりちょっと遅れて2001年6月2日より、テアトル新宿にて公開!
●監督・脚本・撮影・編集/中野裕之 ●脚本/木村雅俊 ●出演/永瀬正敏、桃生亜希子、竹中直人、麻生久美子、緒川たまき、ピエール瀧、ほか ●配給/東北新社
上映時間/111分
Special Thanx to www.stereofuture.com/ |
| 見事に凝った美しい映像と絶妙なこだわりの音楽、4つのエピソードが複雑に絡み合うストーリー、豪華なキャスト、などなど盛り沢山でお得感も高いこの作品。
でもエンドロールが流れた後、ストーリー云々よりも、一寸したシーンに意外な人物が出ていて見つけると思わず得した気分になるようなキャスティングや演出であったり、キレイだなあとか面白いとかどうやって撮影したんだろうとハッとするような映像であったりが印象に残っている映画、というのは「映画として如何なものか?」と考えたりもするのだが、ピエール瀧が見たいという不純な動機で試写に行った自分としては、「そんなことを考えてはいけない、映画の楽しみ方、楽しませ方は人それぞれ」と自戒したりして。
センシブルな映像の中で永瀬正敏と桃生亜希子が、より映えてより魅力的に存在感が際立つことに驚きつつ、非常にピースフルなメッセージが随所に盛り込まれたストーリーの進行には、監督中野裕之が広げた独特の世界観や映像処理の判断基準が垣間見られ、僕的にその凝った映像や演出の意味や理由を考えずにはいられなかった。
例えばオープニングでは緑溢れる山並みを走りつづける列車の先頭から見た景色。
▲主人公・桂 圭介(永瀬正敏)がバイトしている“酸素BAR”。こんなシーンがあると思えば、はちゃめちゃな時代劇シーンもありと、始終、映像が楽しく美しい映画だ。 | 圭介がバイトしている“酸素BAR”は、音楽に合わせて若者たちが踊りまくるSF的というか未来的な雰囲気で統一されたフロアのクラブ的様相、だが、カウンターでオーダーするのはアルコールではなくブレンドされた新鮮な空気。映画の冒頭から随所に埋め込まれたエコロジストの発言やインタヴュー風景。
一方、圭介に金をたかり、ニセモノ高級スピーカーを売り歩く健吾らは、それらピースフルなものと一見全く相反する体を思わせるが、しかし彼らには、人としてのピュアな感性と本能に訴えるものがある。
さすがに映像作家としてディー・ライトはじめや布袋寅泰など国内外で数多くの斬新なミュージック・クリップを制作してきた中野裕之のディレクションはお見事で、役者の言葉数こそ若干少なく感じるものの、映像で語ってしまうところなど、うーんと唸らせるところ…。なのだが、気が散ってしまうというか、ストーリー以外の要素が気になってしまうことも含め、正しい映画の楽しみ方って何だろうと考えさせられた。
悪く言えば散漫、よく言えば多感。
▲TVディレクターの桃崎 薫(緒川たまき)と、ビデオ編集者の和田(大竹まこと)。様々な個性派俳優やミュージシャンが、なにげに随所に出演。見逃すな! | 人を選ぶ映画であることは間違いないと思う。ただ緒川たまきをはじめ桃生亜希子や麻生久美子がとっても魅力的ないい女に撮られていて(ホントは違うということじゃないですよ)、すごく女性を撮るのが上手い人なんだと純粋に思った。
今回、監督の中野裕之が“SF”というキーワードにこだわって創った映画だということを恥ずかしながら知らずに、観た後にそのことを聞いてもう一度観たくなったり、前作の『SF サムライフィクション』を見直そうとレンタルビデオ・ショップやで借りてみたりするってことは十分に中野監督が観客に求める“Stereo Future”(ポジティブな未来)にハマっているのかもしれないと思った。
最後にセッカチな方に一言、エンドロールが終わるまで席を立たない方がいいですよ。 |
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