文●保科好宏 photo by Mikio Ariga 米ロック・シーン最強のライヴ・バンド。
もうここ何年もそう言われ続けながら、いっこうにその座から下りる気配のないモンスター・バンド、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが3度目の来日公演を行なった。今回の会場は室内スタンディングでは最大級の幕張メッセとあって、あいにくの雨模様にも拘わらず、開演前から一万人近くがフロアを埋め尽くし、異様な熱気に包まれていた。
6時ちょうどにスタートしたサポートのサースティ・ブッチャーズが30分ほど演奏して会場の空気をウォームアップさせた後、セット・チェンジの合間に徐々に場内のムードは臨戦態勢に突入。少しでもステージに近付こうとするファンに対し、何度も後ろに下がるようにステージからアナウンスが繰り返された直後、大歓声と共にステージに登場したレイジは、意表を突く、しかしライヴのオープニングとしてこれ以上最高の曲はないMC5のカヴァー「KICK OUT THE JAM」でライヴをキックオフした。
ヘヴィかつ強靱なベース、パワフル&ラウドなドラムスのビート、その重低音サウンドがPAから飛び出した瞬間、アリーナは一気にカオス状態。2曲目の「BULLS ON PARADE」のリズム・リフのスタートと同時にステージ背後のバックドロップが切って落とされ、新作『THE BATTLE OF LOS ANGELS』のジャケット・イラストと同じ絵柄に書かれた「THE BATTLE OF TOKYO」の文字が現れると、場内の興奮は最初のクライマックスを迎えたまま最後まで途切れることなく爆走した。
それにしてもレイジのライヴを体験する度に圧倒されるのは、音に込められた破格の緊迫感と不穏感のヴォルテージの高さだ。勿論、テクニカルかつスリリングなギター・リフとトリッキーなフレージングでレイジ・サウンドを彩るトム・モレノの切れ味鋭いギターや、世界一のアジテーターにして煽動者、ザックのハードコア・ラップという要素が揃ってのハイ・テンション・サウンドなのは説明するまでもない。
しかしながら、レイジの登場によって今や米ヘヴィ・ロックの主流となったラップ・メタルと呼ばれるバンド達とレイジとの最大の違いは、音楽スタイルを超えてアピールする闘争心を秘めたザックの熱いメッセージが、どの曲からもダイレクトに伝わってくるところにある。
その意味でこの夜、僕が何よりも感動したのは、そんなザックのラップに併せ、多くの曲でシュプレヒコールのような大合唱が自然発生的に巻き起こったことだ。
ただ単に暴れられるライヴ・バンドなら無数にいる。しかし言葉の壁を越え、本当の意味で観客と一体化し、ライヴという場を熱く共有できるリアルなロック・バンドはそれほど多くはない。
今回のライヴで、改めてレイジのそんな根源的な魅力、デビュー時から不変の彼らのモチヴェーションや初期衝動を再確認できたのは大きな収穫だった。 |