ムック、初のベスト・アルバム2作同時リリース記念特集【Interview】

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――ベスト盤の資料の中にある、“お客さんと一緒に歌って、みんなで楽しむことを教わった曲”っていう「優しい歌」の解説も、その今のムックの感じに繋がる気がします。もう本当に開放的な雰囲気の「フライト」みたいな曲を、今は普通にやれてることにも。

YUKKE:あぁ~っ。たとえば、俺、個人的なことでも……。昔は、感情を殺して殺して、みたいなライヴを。表情なんか絶対作るもんか、ぐらいの感じでライヴをやってて(笑)。そういうスタイルは自分が好きだからやってたんですけど、でも……。そこから今は、曲が変わるにつれて衣装もちょっとずつ変わっていったり。鎧が軽くなる、じゃないけど。たまにはすっぴんでライヴやったりとか、そういうほうが面白いなって思うようになってきたし、ライヴにしろ何にしろ、曲に素直なことをやるのが面白いんだなって段々なってきてると思います。「優しい歌」も、日本でやるからこそ分かることももちろんあるんですけど、海外みたいな外の世界に行ってみないと分からないこともあったり。

高校生のときの自分が聞いたら……“えらいこっちゃ!”ってなってますよ(笑)。(SATOち)

――ライヴも、この10年で本当に広がりましたね。海外だから感じられたことは、やっぱり色々ありましたか。

YUKKE:ありますよ! それはもう、すごく。喋る言葉は違うけど、そういう人達が自分らの曲を一緒に歌ってくれたり、笑顔になってくれたり。そういう曲ができるようになったうれしさみたいなのは、やっぱありますね。

SATOち:最初は不安だらけでしたけど(笑)。日本人で海外行ってライヴするとか、高校生のときの自分が聞いたら……。“えらいこっちゃ!”ってなってますよ(笑)。自分らは受け入れられるのか、みたいなのも当然あるし。

逹瑯:初めて海外行ったときは、日本との音量の違いに戸惑ったんじゃないですかね。メンバーもスタッフも、それこそ“えらいこっちゃ……”な。ちょうど、海外に行く前の時期は、迫力を出したいからって音がどんどん大きくなっていった時期だったし。それが海外を経験して、目からウロコだったというか。

ミヤ:それは、国民性の違いというか。例えばドイツなんかは、ライヴハウスみたいな場所でも、人がちゃんと会話できるくらいの音量じゃないとダメなんですよ。日本みたいに、耳のそばで大声で話さないと聞こえないくらいの音は出せないから。

逹瑯:音に関する法律とかもありますしね。何デシベル以上はダメ、とか。

ミヤ:だから、日本の環境でやってるウチらみたいなバンドがそのままパッとやると、ただのモヤけた音になっちゃう。そういう中でやるには、自分の音が聴こえなくても演奏できなくちゃダメなんですよ。それができるようになるとどんな環境でも演奏ができるようになってくるし、バンドもまとまってくるし。要は、ステージだけで出来上がってればライヴができる、って形にしないとダメなんです。極端な話、(自分達の演奏を聴くための)モニターがなくても、ライヴができるくらいにはなりますよ。で、それがまた日本での演出のエッセンスとしても使えたり。コースト(2月の新木場スタジオコースト公演)みたいに、モニターを置かないでライヴをやるとか。

――モニターも聴けない状況は、日本じゃ考えられない話ですけど(苦笑)。音の一体感がそこで増したのは、大きい経験ですね!

ミヤ:向こうのスタイルでどういうふうに演奏できるかっていうのを考え始めて、対応できるようになったのは、すごい収穫になりましたね。あとやっぱり、言葉が通じないからパフォーマンスでも伝えようとか、そういう根本的なことに立ち返ったところもあるし。音が悪くて伝えにくいんじゃ、パフォーマンスでも自分たちの音楽を伝えなきゃいけないし。

ここでまた“新曲いつまでに作ってください”って言われたら、ガックシってなると思う(笑)。(逹瑯)

――これからまた、ライヴはたくさんありますし。世界じゅう駆け回る日々は大変だと思いますけど……。次の音源ともども、また新しい面白いものを待ってますんで。

逹瑯:(取材日の時点で)今ちょうど、ベスト盤の作業が終わって。こっからようやく、海外も含めてライヴだけの感じになるし。ここでまた……ねぇ。“新曲いついつまでに作ってください”って言われたら、メンバーみんなガックシってなると思うんですけど(笑)。

――ですよね(笑)。去年~今年はもう、怒涛のリリース・ラッシュだったし。作品に関しては、こんなことを新たにやってみたいっていうイメージは、今何かありますか? この先への期待を込めて、最後にひとつ!

ミヤ:今やってみたいなって思うのは、たとえば……。もっとダブとかを取り入れてみたいですね。1曲の中で、一瞬そういう感じがあったりとかはたまにはあるんですけど。そういうアプローチを本格的に取り入れて曲を作ってみたいなっていうのは、考えたりしてます。

取材・文●道明利友

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