| ――トラックにまずは驚かされました。モーツァルトとのマッシュ・アップというかサンプリングというか。
KREVA:ま、サンプリングですね。これ、エビスビーツってヤツが僕にくれたデモCDの中に入っていたんですよ。これにラップしたら面白いだろうなあって思ったのが最初でしたね。
――原曲をちゃんと聴いたことはあります?
KREVA:ちゃんとは、ないですね。
――じゃあ、今回の作業をきっかけに、ちゃんと聴いてみようとか?
KREVA:も、ないですね(笑)。
――クラシック自体興味ない?
KREVA:ないですね。ビートがないから(笑)。
――じゃあ、歌詞を乗せるのも大変だったと?
KREVA:そうですね。フリー・スタイルでワーッと歌うのは簡単なんですけどね。でも、ちゃんと歌詞を見て聴いてくれる人のことは考えましたね。あと、いつも通りですけど、リアルな言葉を選ぶようにして。ただ、いつも以上に時間はかかりましたね。
――主にどのあたりが?
KREVA:“やるぞ~やるぞやるぞ~”のところとかね。ツアー中に、CUEZEROにホテルの部屋で“ここんとこ、どうしよう?”って相談したら、“やるぞ~とかでいいんじゃない?”ってことになって(笑)。ただ、エビスビーツにもらったデモCDも30曲くらい入っていて、関西に行ったら行ったで他のみんなもいっぱいデモをくれて。で、俺自身も20曲くらいトラックを持ってて、あれもできる、これもできる、あれもやろう、これもやろう、自分のレーベルもあるし何でもできる、って感じで先のことばっか考えていたんだけど、それがかえって地に足がつかない状態になっていて、それを見直そうということで、この歌詞を書いた感じだったんですよ。
――地に足がつかなくなっている?
KREVA:なんでも出来過ぎて。その気になれば、そうやってみんなからもらったデモを使って、レコーディングしてアルバムを作れる、くらいのテンションだったから。でも、やるからにはちゃんと一個一個を確実にやっていくのが大事だなあって思って。週に何回も大阪に行っているような頃に、なんとなくふっと思ったんですよね。俺とCUEZEROなんかは、自分たちだけで全部やっているような意識があったんですけど、見渡せば関東にも関西にもいっぱい仲間がいて、やれることがいっぱいあって、という状況になってみると、ふっと気づくんですよね、ちゃんと一つ一つやっていかなきゃって。
――アイデアばかりがいっぱい出てきている状況に振り回されないように、と。
KREVA:そうそうそうそう! でも、それをちゃんと形にしていかないと、アイデアもフレッシュじゃなくなっちゃうし、消えてっちゃうでしょ。あと、一回、自分の持っていたトラックが消えてしまったことがあって。その時、ずっとあるものだと思っていたけど、そうやってなくなってしまう時もあるわけで。そういう教訓もありましたね。でもね、おかげでこの「国民的行事」を作った後は、サクサクといい感じで作業が進んでますよ。無駄なく。しかも早いし。一個ずつ丁寧にね。自分を見つける結果となりましたね。
――となると、“国民的行事”というタイトルが意味するところは、そういうことを乗り越えて今に至った自信の表われでしょうか。
KREVA:まあ、俺のやることがすべて国民的行事になればいいなっていうかね(笑)。個人的には今も何かしらの目標なりゴールなりに向かっていくというのはもちろんあるんですけど、その上で、俺のやっていることがみんなにとっても大切な行事になってほしいっていうか。まあ、あとは東京事変に負けないようにっていうか(笑)。
|
|