Alec Empire

■生きる伝説=アレック・エンパイア・ストーリーへようこそ!
1972 年5 月ベルリンにて生まれる。ブレイクダンスとヒップホップに夢中だったのは幼少期を経て、バンク・バンド( ディー・キンダー)を始めたのは84 年のことだった。しかしメジャーを中心とする音楽業界の在り方に常に嫌気を感じ幻滅していたアレックは、パンク・バンドを解散した後にアシッド・ハウスと出会うことになる。「まるで無調のポップ」「干渉もなく、政治的な嘘もない。システムから自由である」と、アシッド・ハウスに心を惹かれた彼は、サンプラーを買いトラックを作り始めた。

89 年にベルリンの壁が崩壊。それと共に「新政府の方針=国家主義的なる人々」が増える反面、そこに戸惑いを感じる民衆も目立っていった。そして世界でもインターネットの普及と比例するかのように新たな国家体制/ 産業がスタートしていった。ベルリンの若者の中では、職のない者や行き場を求めるゲイ達が東西ドイツから集まりテクノのパーティーで毎夜盛り上がっていた。

■「俺自身を完全にリセットしたかった。自分の音楽に新しい方向性を与えたかったんだよ」
その頃アレックは、独創的な感性も持つカール・クラック(01 年9月、死去) と出会い、音楽性、政治的思想性において意気投合する。そしてあるライブにてハニン・エリアスと出会い92 年にアタリ・ティーンエイジ・ライオット(ATR) を結成。常にラディカルな政治的メッセージを叫び続けたこのバンドは、もちろん単なるテクノ・ユニットになる訳もなく、みるみる内に支持者<中毒者>を増やし、カリスマ的バンドとしての地位を確立し、世界中へ衝撃を与えた。(NATO 軍ユーゴ空爆へのベルリンでの抗議運動に参加の際は、暴動を煽っ

たとされメンバー全員が逮捕される事件もあった)アレックはようやく居場所を見つけたかのように、ATR を中心に活動/ 活躍の域を広げて行った。そして94 年、メジャー・レコードとの違約金( 契約後シングルを2枚リリース、直後契約を解消された) をもとにアレックは、自身のレーベル、デジタル・ハードコア・レコーディングス(DHR) を設立。

■世紀末を駆け抜けたアタリ・ティーンエイジ・ライオット
96 年、DHR はあのビースティ・ボーイズのレーベル=グランド・ロイヤルと契約。再びファン、そして各界のアーティストの間で大きな話題となった。97 年、シンセ&ノイズの操縦者=ニック・エンドーがATR の新メンバーとなる。00 年ブリクストン・アカデミーにて、たった25 分間のノイズ・ライブを行うが、これが事実ATR の最後のショーとなった。世紀末をまさにノンストップで駆け抜けた彼らは心身ともに疲れ果てていた。

翌01年、アレックにとって運命を左右する衝撃的な事件、メンバーのカール・クラックが突然にこの世を去った。その後アレックはATR の活動を停止し、現在も多くを語ろうとはしない。しかしその中で、容赦なくソロ名義で活動を続け、熱狂的ファンはもとより共闘するアーティストも更に増える。

■伝説～そして新たなる始まり
同年、アレックは「大問題傑作」と話題を呼んだソロ・アルバム「インテリジェンス・アンド・サクリファイス」をリリース。ギミックなしのリアル・パンクロック・サウンドで『ROCK GOD』とメディアから称された。その後05 年に前作からの予想を覆し、『ロックの死について話してみようか』と始まる歌詞で信者をも惑わせた驚異作「フューチャリスト」をリリースした。この頃には“皇帝”アレックへの支持はジャンルの壁を超えて幅広く知れ渡り、誰もが彼の行動に注目するようになっていた。

「満足することはない。変化は常に極限を求める」そう語るアレックは、生まれ変わった。ザ・ゴールデン・フォアテイスト・オブ・ヘヴン=天国への下見。そのツアーについていく準備を始めようじゃないか。