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官能的で、精神的で、なおかつ優美さを混ぜ合わせたEnigmaの一風変わったニューエイジの音楽的黙想は、世界中のクラブシーンに今までとは違う世界をもたらした。新しい音を作り出すのに、何も内容まで新しくしないといけないという訳ではない事を証明したのである。

Enigmaの主たる創造力となっているMichael Cretuは、''57年5月18日、ルーマニアの首都ブカレストで生まれた。子供の頃から音楽を勉強し、22歳の時にドイツのMusikhoschule Academyを優秀な成績で卒業。Cretu(別名Curly M.C.)は、''80年代の大半を音楽業界で過ごし、プロデューサーからソロアーチストまで様々な役をこなした。その後、まだ身元を公表していなかったが、共同作曲家でもあるDavid Fairsteinと、Cretuの妻でもありヨーロッパディスコ界の女神でもあったSandraらと“バンド”Enigmaを結成した。

'90年のEnigmaのデビュー作となった、グレゴリオ聖歌、パンフルート、催眠的なリズム等のオーラの寄せ集めのような『MCMXC A.D.』は、世界中でヒットし、40近くの国で1位を獲得した他、アメリカではトリプル・プラチナとなった。バンドの飛躍的なヒット作となった『Sadeness』の中で、'70年代に録音した物を無断で使用されれたとして、ミュンヘンを拠点とした合唱団Kappelle Antiquaに訴えられた際、示談で終ったものの、Cretuは身元を公表する事を余儀なくされた。

続く'94年の『The Cross Of Changes』(Enigma 2名義)は、ロックのきらびやかさと土着文化のヴォーカル・サンプルを取り入れ、彼ら自身の音の世界を広げた。'96年の『Enigma 3: Le Roi Est Mort,Vive Le Roi!』は、本来のヴォーカルにもっと注意を払いながら、前2作の雰囲気の要素をミックスした作品となった。