2004年、イギリスのヒット・チャートをロック勢が席巻しているが、その中においてNo.1の人気を誇っているのがこのキーンだ。ギターとベースがいないという異色の3ピースが放つ流麗でかつ華麗な心温まるメロディはインディ・ロック系のリスナーからアダルトなリスナーまでを引きつけ、結果、デビュー・アルバム『ホープス&フィアーズ』はこの春に全英初登場1位を獲得し、現在もトップ5以内をキープし続ける大ヒットとなっている。そしてその余波はここ日本にも浸透中。フジロックや翌日の恵比寿リキッド・ルームでのアフター・パーティ・ライヴでも大喝采を受けたが、そんな絶好調の3人にフジロックの出番2時間前に直撃してみた。
──フジロックの印象はどうですか?
トム・チャップリン(Vo):グラストンベリーをはじめ、いろんなフェスに出てるけど、こんなに自然の景色が美しいところはないね。早くプレイしたくてワクワクしてるよ。
──現在、あなたたちのレコードはイギリスでNo.1。そして、ここ日本でも大ヒット中です。去年までとあなたたちを取り巻く環境はガラリと変わったと思うのですが。
リチャード・ヒューズ(Dr):なんでこんなことになったのかはよくはわからないけど、そういう時期に達したからなのかな。人の心に届く良い曲が書けるようになって、良いライヴができるようになったからだと思うよ。
──今回のフジロックはここ最近の新世代バンドの台頭を象徴するイベントとなりました。フランツ・フェルディナンド、キラーズ、スノウ・パトロール、そしてジェットにリバティーンズにホワイト・ストライプス。今のこのムーヴメントをどう思いますか?
ティム・ライス・オクスリー(Pf):僕たちの場合、もう10年活動してたから今名前があがった彼らとは世代が若干違うんだけど、その中に混ぜてもらえるのだとしたらうれしいな。
──最近の若い世代のアーティストの中で好きなアーティストは?
リチャード:なんと言ってもズートンズ!

ティム:ルーファス・ウェインライトかな。あと、ズートンズ。彼らとは仲良しでツアーも一緒に廻りたいって話もしてるんだ。
──キーンは「メロディこそが命」というイメージのバンドですが、それはバンドを結成した当時から?
ティム:そうだね。僕らはバンドを始めたときからビートルズやU2、オアシスのような、グレイトな曲を書けるタイプのバンドを目標にしていたからね。それは今も変わらないね。
──トム、キーンのカギを握っているのは、あなたの力強く透き通ったヴォーカルにあると思うのですが、影響を受けたシンガーは?
トム:幼い頃はクイーンのフレディ・マーキュリーとマイケル・ジャクソンにすごく憧れてたんだ。歌い始めてからはレディオヘッドのトム・ヨークにジェフ・バックリーだね。でも、最近は自分らしいオリジナルな歌い方をマスターしようと努力してるよ。
──キーンはギターとベースがいない珍しいバンド編成ですよね。これが理由で、ロックではなくポップスのバンドと解釈されることがしばしあるのではないかと思うのですが、それを歯がゆく思うことはありますか?
リチャード:実際にはアルバムだとティムがベースを弾いてたりするから、そこまでそのことは意識してないんだけどね。それに、僕らがロックであるかないかはライヴを見てもらえれば一発でわかる。そこのところには自信があるんだ。
──実際、ライヴは随分とエネルギッシュですものね。それが、あなたたちがインディ・ロック・ファンからもアダルトなロック・ファンからも幅広く愛されている理由になっていると思うのですが、今の受け止められ方をどう思いますか?
ティム:よくアダルトな受け止められ方を嫌うロック・バンドっているけど、僕ら自身は光栄だと思ってるよ。なにもアダルトだからってバリー・マニロウを聴かなきゃいけないってことはないんだから(笑)。僕らとしては、かつてビートルズやザ・スミスを聴いていた人たちが「えっ、今こんなに良いバンドがいるんだ!」なんて思って聴いてもらえればすごくうれしいんだよね。
──ティムはコールドプレイと大学時代の友達ですよね。今、お互い大成功を収めているわけですが、互いの関係はどうですか?
ティム:もちろんうれしいよ。でも、お互い成功したから一緒にライヴをやる、って感じではないかな。コールドプレイの成功は「彼らにできたなら僕らにだって!」という目標と希望を与えてくれた意味では大きかったね。
取材・文●沢田太陽