――グループとソロの違いって何かな?
E.G.G.MAN:
リリックで言っていることは大体一緒だけど、細かさが違うというか。例えば、リンゴ好きだけど、俺はフジが好きなんだよとか。グループでは、それぞれが上手く混ざるっていうのはあるけど、自分の持っている独特さを一番前に出すことはできないよね。それでもソウル・スクリームをやりたいわけよ。だから、一度、皆、ソロ活動で吐き出して、またソウル・スクリームに取りかかったほうが、自分達が一番納得するかなって。
――今回の作品を聴いて思ったのは、いろんな意味でグループの延長ではないんだなって。
E.G.G.MAN:
うん、全く違うもの。それに乗っかるビジネス的なプロモーションだったりは、ソウル・スクリームと上手く繋げていきたいとは思ってるけど、俺的には自分の作品とビジネス路線は全く別っていうか。
――今回、セロリやハブ(ソウル・スクリームの他のメンバー)が全く参加してないのも意識した?
E.G.G.MAN:
それは凄く意識した。勿論、やりたく無かったわけじゃないけど、今やることでできることは見えているし。アルバムの前半はひたすら東京と千葉間を移動してて、こういう考えになりましたっていうものだから、セロリとハブに関しては、そこは違うなって。けど、こういうことをやると「仲が悪い」とか言われるけど、そういうのは全然無くて。
――今回のプロダクション・クルーのHi-Current Vibes(ハイカレントヴァイブス)について説明してくれる?
E.G.G.MAN:
名前の由来は、そもそも俺、カー・オーディオにこだわってて、自分で好きでいろいろやってるんだけど、ハイカレント・アンプっていうのがカー・オーディオの世界にあって。アンプ1個で右と左を出せるんだけども、敢えてもう1個のアンプを使って、モノラル同士で使ってステレオにするシステムがあって。モノラルにすると出力が上がるんだよね。そういう、一個一個の繋がりで大きいことをやるっていう意味で自分と誰かが絡む時は、その名前を付けた。そういう感覚っていうか、ヴァイブス的なものがバッチリですよっていう”印”かな。でも、意味合い的にはグループとして見てほしくない。
――今回はHi-Current Vibesとして、自分でもトラックを作っているけど、こうやって自分の作った音を出すのは初めて?
E.G.G.MAN:
そう、1年くらい頑張ってて。けど、まだまだ甘いね。これからも、トラックは作っていきたいね。MCの立ち位置から見たトラックっていうのを。
――自分でトラックを作ると、曲を作るっていうこと自体が、全く意味の違うものになる?
E.G.G.MAN:
そうだね。凄く音楽的っていうものの意味が分かった。今までも散々ソウル・スクリームは音楽的だって言われていたり、俺もラップの仕方が音楽的だって言われてたけど、全然違ったね(笑)。トラックを作って、初めて音楽的ってどういうのことなのかが分かった。で、やっぱり、なおさらラップをビートにハメるようになるよね。
――より深いところで分かったから?
E.G.G.MAN:
そうそう。だから、人が作ったトラックとは全く違うよね。
――それぞれの曲はどうやって作っていったの?
E.G.G.MAN:
大体、やろうとしたことは、何でも良いからとりあえず自分がヤラれたものをテーマにしようと思って。例えば「東方見聞録」はハリウッド版のゴジラにヤラれて。これは凄いヒップホップだと思ったから、リリックを書いて。1曲やったらそれを振り返るスタイルで次を考えて。そういう感じでやっていったから、短期間で濃密にできた。
――確かにアルバムの流れとして、物凄く濃密な繋がりを感じるね。
E.G.G.MAN:
けど、ちょっと分かりづらいよね、私的っていうか。例えば「576」ってニュー・バランスの靴の話だし。ただ、俺が大好きなだけの話だから。
――他に「Freedom! Freedom!」みたいなパーティ・チューンがあったり、千葉をアピールした曲とか。そういうのもありながら、いきなり国家レベルの話に発展する「バンク国家:51」とかあったり。
E.G.G.MAN:
ソロだと「イシイさん、それ言い過ぎですよ」っていうのは無いからさ。どんどん話が広がっちゃうよね。
――けど、やっぱりテーマとして一番多いのは東京と千葉っていう部分で。それこそ「センノハ0番線」は「The “Deep”」でもやってたテーマだし。
E.G.G.MAN:
ここはスタートラインなのかなって。0番線は始発の電車が止まるところで、四街道の駅にあったんだけど、今は無くなっちゃってね。そういう意味で、俺の始発は千葉ですよって。
――いろんな人がトラックを作って、ゲストもたくさん参加しているけど、全体的なカラーは物凄く一定だよね。
E.G.G.MAN:
そうだね。フィーチャリングの人が今回の作品にハマったんだろうね。ソウル・スクリームの時もハマったけど、それとはまた別な意味で。
――結構、思った通りのものができた?
E.G.G.MAN:
うん。凄く思った通りのができた。困ったなとかいうのは一つも無かったし。クオリティをそこまで重視しなかったっていうのもあるけどね。
――ああ、“一曲一曲をめちゃくちゃこだわりました!”っていうのじゃなくてね。
E.G.G.MAN:
うん。全体で見せるっていうのを考えてたから。あと、俺の中では新しい手法だし、ソウル・スクリームでやっていることとは全く違うから。そこで何か見つけられるんだろうなって確信はあったから。なんか、初めっぽい感じだな。ラップを始めた頃のデモテープ作りっぽい感じ。
――じゃあ、それこそ今となっては、新鮮な感覚?
E.G.G.MAN:
そうそう。凄く懐かしい質感で。そういう感じで作れたから。
――自分の再スタートみたいな感じもある?
E.G.G.MAN:
それもあるね。これからソロでやっていくだろうし、ソウル・スクリームに関しても、次のアルバムに絶対に返ってくると思うよ。今、ソウスクは次をもう作ってるんだけど。結構、意識的にも新しい。皆が「イチからだね」っていう気持ちだから。