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南国のトロピカルな雰囲気に、birdが独りで寝そべっている…そんな開放感たっぷりのジャケが印象的なアルバム『極上ハイブリット』。たくさんのゲスト・アーティスト達と音楽性を広げ、自由に羽ばたき歩みだしたことがひとつの形となった最初の作品だ。
そして2002年は「ライヴをいっぱいしたい」と語っていた通り、2月に名門ジャズハウス、ブルーノートでのツアー、続いて今回のライヴハウス・ツアー、そして今後は夏の野外フェスティバルへの参加、更に秋のホール・ツアーが予定されている。
でもやっぱりbirdの歌声を聴くなら観客との距離が一番近いライヴハウスでしょ…ということでツアー最終日、birdの歌声を聴きに向かった。
オープニングの幻想的なサウンドに、懐かしの曲「up and at it」。birdはしっかりとバンド、観客の空気を確かめつつ、マイクを握り歌いだす。その歌声はフロアを埋め尽くした一人ひとりの耳と身体を揺さぶるような深い声。ギター、キーボードのソロを聴かせつつ、そのサウンドにじわじわと響くbirdのスキャットが印象的な幕開けだ。
続いて元気なbirdらしくハイテンションに「後ろもちゃんと手を振ってや!」と掛け声をかけて「空の瞳」を披露。観客がリズムにのりながら左右に手を振り、そのライヴハウスの一体感を感じつつ、和やかになっていく。
それでも前半は全体的にしっとりと歌い上げ系の歌を披露。その中でも「満ちてゆく唇」ではbirdの歌声が静穏な空気で会場を包み、その歌声がひとりひとりの心に届いた証として間奏では自然に大きな拍手が沸きあがる。
中盤、京都出身のbirdらしくMCで「最近、仏像が好きで…ええねん!」と関西へ行った時の話をしだす。MCは茶目っ気があり、歌っているときとはまた違う魅力。
MCで出てくるその長閑な情景を回想するように、アルバムの収録曲をアコースティックギターやアコーディオンといったサウンドと共に3曲ゆったりと披露。そのシンプルな演奏にbirdの力強く伸びやかな歌声は、自然な空気を運んでくれた。
そして後半、「こっからはいくで~」という掛け声と共に、「マーメイド3000」。観客一体となって歌い沸きあがる。
その盛り上がりを支えているのもそうだが、今回のライヴでbirdの歌声をより引き立てるべく、素晴らしかったのがバンドの演奏だ。ずっしりと重たく、それでいて疾走感のあるリズム隊、それに聴かせるギターにキーボード…、そんな素晴らしいサウンドのもとで、birdはより安心して歌えたに違いない。
そして、あっという間に本編最後の曲「NUMBER」。途中では「しっかり受け止めてや!」と叫び、birdが大勢の頭の中へダイヴ! ライヴハウスらしい(?!)というか、その豪快さがなんとも気持ちよく、ライヴを一番楽しんでいるbirdの姿が見られた。
更にアンコールでは全く予想もしていなかった展開が…。なんとbirdとバンドのメンバー全員でスティービー・ワンダーの「heaven help us all」をアカペラでカヴァー。こんなにも個性的な音域の声を持っているバンドのメンバーだとは誰が予想しただろうか。思わぬプレゼントに観客はどよめきと共に、その息の合ったなんとも美しすぎるハーモニーに酔いしれた。
しなやかで力強い歌声が、聴く者の心を引きつける強い吸引力を持ち、それと同時に一体感になれる楽しさを感じたライヴ。そして初お披露目となった個性的で難しい新曲も、昔の曲を歌うのと同じように自分のものにして完璧に歌いこなしていた。birdは新しいものに挑戦しながら、どんどんと前進する。そんな勢いを感じたライヴだった。
文●イトウトモコ
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