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 「CHAOS STEP」 SPEEDSTAR RECORDS VIZL-51 1,260(Tax in)
1CHAOS STEP(OPENING) 2CHAOS STEP
 「GAGA LIFE.」 SPEEDSTAR RECORDS VIZL-52 1,260(Tax in)
1GAGA LIFE.(OPENING) 2GAGA LIFE. |
すでに結成から12年目を迎えているThe Mad Capsule Markets(以下、マッド)。
’99 年に出された前作『OST-DIS』のあの興奮から約2年。見た目も格好も「おいおい、どんどんと若くなってないかい?」と言いたくなるくらい、活気があって楽しそうな表情の新作PVを目にした人も多いはず。
マッドは作品を出す度に、より強力なサウンドでファンを驚かせてきた。そして2001年、正式にIsland Recordsの創始者クリス・ブラックウェル氏率いるパームピクチャーズから前作『OST-DIS』の今夏全米リリースが決定! 本格的に世界へ飛び出す時がきたのである。
そしてそのタイミングと相まって2年ぶりとなる最新作『010』(テン)がアウト。長年のマッド・ファンだったらもちろん、「おいおい、まだ作るの?」と突っ込みをいれながらも、その出来に期待は隠せない。
そして最近の本物志向のサウンド流通が活発化したことと、前作から続くグッズをつけてのシングルが5、6月にリリース。しかも2ヶ月連続リリースシングル+フィギュア付きとくれば、今のストリート・カルチャー・シーンにおいても目が離せない存在だ。
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時は2001年6月30日。Shibuya Quattro
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熱気は外の空気と同じだった。
梅雨だというのにうだるような暑さが続き、この日もひさしぶりにザーッと雨が降ったが、すっきりとはせず、もやもやしていた東京。そんななか、渋谷クアトロの前にはタオルを巻いたり、団扇で扇ぐ人々がたまっていて、私の気分はさらにあつ~くなる。
始まる前はがんがんにミニマル・ミュージック。会場にいるどれだけの人がテクノのイヴェントなどに行くかはわからなかったが、とにかくマッドはそういったダンス・ミュージックからのヴァイヴをも吸収し、破壊・消化を経て、一連の匂いを表現していることは過去の作品からも確かだろう。
ダンス・ミュージックを消化してバンドという形態で吐き出すことは珍しくもないが、ひとたび“マッドの音”となると、どのような表現方法として成形されているのかを思うに、過剰ともいえる期待をもってしまう。
近未来的電子音と共に一気に緑色のレーザー光線が会場を一回り。ぶっとい4つ打ちドラムと重低音なベース&ギターの轟音と共に全ての状況を壊すかのように攻め立てるオープニング。
クリス・ブラックウェルにして、“東洋の怪物”と言わしめるマッド。会場はその高速破壊音に吸い付けられ、その音の鼓動とオーディエンスがいつの間にかひとつの弾丸のようなまとまりになってうねりをあげる。恐怖と畏怖すらこみ上げるほどの、音と一体感…、未だ経験したことのない空間に襲われる。怪物が唸りをあげる…。
ライヴは新作『010』と過去の作品から演奏。前半戦、先行シングル「GiGA LIFE」「CHAOS STEPS」を立て続けに披露し、来ていたオーディエンスは“待ってました”とこの音の洪水に身を任せ、次々にダイヴしていった。強力な曲でリスナーを叩きのめす先行シングル。もちろんシーケンス、機械の音を融合させて作り上げる生演奏というスタイルだが、CDから伝わるパワーとは比較にならない迫力と破壊力だ。
破壊の中から生まれる、まだ見ぬ新たなサウンド構築をバンド創生期から実行してきたマッド。それこそが、マッドの無比たる所以。ギタリストこそ幾度かの変遷があれど、こと、KyonoとTakeshi Uedaの身体に流れる“才”とそれを自らコントロールする“鋭敏さ”は、他に類を見ない桁違いのものである。
研ぎ澄まされた感性は、常に錆びることなく、マッドの差し出すサウンドは、常に進化の道を選択し続けている。
大基本にバンド・サウンド。ベースにロック。スピリットにパンク。もちろん、音を使っての表現。サウンドをコラージュしての自己主張。そして自らを刺激するエレクトロニクス。それらを全て飲み込んで吐き出す、生身の肉体…マッドはそのような“怪物”だ。ロックバンドという肉食動物が変態・進化・変身を遂げ続けて、今もなお完成形を見ない“蠢く怪物”なのである。
バンドサウンド、そこにループ。あり得ない歪みの破壊力。そんなキーワードを連ねただけではマッドのアウトラインすら表われないが、シーンよりも一歩先のサウンドを次々と具現化したことだけは歴然とした事実である。
そんな止めることができないマッドの進化を目の当たりにしたライヴ会場…恐怖を感じていわば至極当然なのだろう。 |