【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.152「イギリス探訪〜Belle and Sebastianベルセバ30周年の現在地」

長いことライブを観たいと思っていても、なかなかその想いが叶わないアーティストがいる。Belle and Sebastianもそのひとつで、これまでに<FUJI ROCK FESTIVAL>や<朝霧JAM>、<SUMMER SONIC>などでチャンスはありながらもことごとく見逃してきたバンドだ。今春イギリスに3週間ほど滞在したのだが、2025年冬、航空券を購入した時点で、滞在期間中にイギリス国内で開催されると発表されていたライブの中で最も観たいと思ったのがBelle and Sebastianのロイヤル・アルバート・ホール公演だった。

この公演は、1996年に発売されたベルセバ初期のアルバム2作『Tigermilk』『If You’re Feeling Sinister』のリリース30周年を記念して開催されるアルバム完全再現ワールドツアーのロンドン公演という特別なもので、それだけでも十分に魅力的だったのだが、さらに会場がロンドンで最も美しい会場のひとつともいわれるロイヤル・アルバート・ホールであったため、果たしてチケットを取れるだろうかと思いながら、まあ無理だろうと調べることもしないままでいた。
それから数ヶ月後の4月8日。自然史博物館を訪れた後、ハイドパークに行こうと地図を見ていたところ、すぐ近くにロイヤル・アルバート・ホールがあるとわかり、そのまま足を向けた。

ロイヤル・アルバート・ホールは、ロンドンのサウスケンジントン地区にある、1871年にヴィクトリア女王によって開場された由緒あるコンサートホールだ。夫であるアルバート公の発案により、1851年のロンドン万国博覧会の成功を記念して創られたことから、その名が冠された。赤レンガとイタリア風にデザインされた外観と、巨大ドーム屋根が特徴で、ビートルズやローリング・ストーンズなどの名立たるアーティストが名演を繰り広げてきたほか、<大相撲ロンドン公演>といった異色のイベントまで開催されてきた歴史を持つ。

ハイドパークに面したホール入口近くの巨大スクリーンに目をやると、ベルセバの30周年記念公演の告知がタイミングよく映し出されて、過去の自分と心がつながった。しかも公演はその夜と翌日。そのまま場内のチケットオフィスを訪ねると、親切なスタッフに座席表と席種、価格を案内され、5時間後に開催されるその日のライブのチケットを難なく購入することができた。手にしたチケットをまじまじと眺め、「ああ、ロックの神様。忘れっぽい私とベルセバをようやく結びつけてくれてありがとう」と心の中で感謝した。

夜になり、再び訪れたロイヤル・アルバート・ホールはライトアップされていて、昼間よりも一層美しく鎮座していた。場内もまた歴史が滲み出る重厚さと、古き良き建造物としての荘厳さを感じさせる特別な空間で、ぐるりと見渡しながら思い描いていたとおりの優美さにうっとり見とれた。座席につくと、チケット購入時に説明を受けたとおりステージを見渡せる非常に見やすい良席で、始まる前からすでに満足していた。

今回のツアーは前述のとおり『Tigermilk』と『If You’re Feeling Sinister』のアルバム完全再現と人気楽曲群の2部構成であることが事前に発表されていて、この日のテーマは1stアルバムの『Tigermilk』。あれは確かスチュアート・マードックの当時のガールフレンドが虎のぬいぐるみにおっぱいをあげているような、そんなジャケットだったよなとモノクロの印象的なアートワークを脳裏に思い浮かべて開演を楽しみに待った。

ライブは予想外というか、なんというか。自分が想像していた以上にスチュアート・マードックを筆頭に場内を走り回りながら音を届けるメンバーのアクティブさに驚き、多幸感に満たされた素晴らしい公演だった。なんでこれまで体験できていなかったのだろうかと悔やむほどに、いい夜だった。
あの夜、ステージではこのツアーがワールドツアーであることも語られ、その晩ホテルで調べてみると日本公演が秋に開催されることが告知されていた。そうか、だったらなおさら、この感動を綴っておきたいと思ったのだが、季節はもうすっかり秋で、なんと来週開催される。この日本公演では幸運にも裏方として参加することとなった。ロンドン公演以降も世界をまわってきた公演内容もさることながら、日本では比較的小さな会場での公演となるようなので、どんな公演になるのかと楽しみにしている。9月17日時点では大阪公演はソールドアウトだが、9月24日と25日の東京公演はチケット販売中のようなので、気になっている人には迷わず体験してほしい。

文・写真◎早乙女‘dorami’ゆうこ







