【ライブレポート】ザ・ブラック・クロウズの過去と未来が交差する夜、変わらぬ熱と進化の証し

4月14日、Zepp DiverCity Tokyoにてザ・ブラック・クロウズを観た。彼らの来日は2022年11月以来のことで、今回はオーストラリア・ツアーを経ての日本上陸となった。3年半ぶりの日本公演が東京での二夜公演のみというのは少しばかり寂しいところではあるが、このバンドならではの生々しくて自由度の高いディープなロックンロール・ショウは、いまだ健在というよりもさらに磨きのかかったものになっており、会場を埋め尽くした幅広いオーディエンスを心地好くシェイクし、スウィングさせていた。
去る3月に第10作にあたるニュー・アルバム『ア・パウンド・オブ・フェザーズ』がリリースされたばかりでもあるだけに、同作のプロモーションには絶好のタイミングでもあるわけだが、だからといってそれに徹するようことがないのもこのバンドの魅力だ。ショウの幕開けを飾ったのは1992年発表の第2作『サザン・ハーモニー』に収録の「ノー・スピーク・ノー・スレイヴ」。オーストラリアで行なわれた全5公演においても一度しか演奏されていなかった曲だ。

この事実からもわかるように、彼らは定型のセットリストに則りながらツアーを続けることがなく、毎回のショウがその日にしか味わうことのできない演奏メニューによるものとなる。もちろん誰もが聴きたいはずの鉄板曲の数々は網羅されているが、この夜の場合はデビュー作の『シェイク・ユア・マネー・メイカー』(1990年)から5曲、前述の『サザン・ハーモニー』から4曲、第3作『アモリカ』(1994年)から4曲、そして『ライオンズ』(2001年)、『ハピネス・バスターズ』(2024年)、最新作の『ア・パウンド・オブ・フェザーズ』(2026年)から各1曲という内訳になっていた。
しかしもちろん、それだけではない。ショウが中盤を過ぎたあたりでは『シェイク・ユア・マネー・メイカー』からのセレクトであるオーディス・レディングの「ハード・トゥ・ハンドル」のカヴァーに会場内の熱気が高まったが、その直後、フロントマンのクリス・ロビンソンはひとたびステージから姿を消し、彼からの指名を受けたリッチ・ロビンソン(G)が自らヴォーカルをとる形で「オー・スウィート・ナッシン」を披露。こちらはヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカヴァーだ。
さらにアンコール時、クリスはオーディエンスに「ザ・ビートルズは好きか?」と問いかけ、まさかのザ・ビートルズ・カヴァーが飛び出すのかと思いきや、それに続いた彼の言葉は「ザ・ローリーング・ストーンズをやるよ」。そこで炸裂したのはストーンズの「ビッチ」だった。あとから確認してみたところ、彼らがこの曲をライヴで披露したのは、なんとこれが史上初だった模様。しかしそれが、普段から当たり前のように演奏されている曲にしか聴こえないところにこのバンドならではの凄味を感じさせられてしまう。

ただ、当然ながらザ・ブラック・クロウズのライヴにおける最重要なポイントは「どんなカヴァーが飛び出すか?」ではない。1990年に地表のシーンに姿を現した当時から若さに見合わぬ成熟度を持ち合わせていた彼らの音楽は、あらかじめ時代を超越していた。つまり歴史と「あの頃に想い描いた未来」が同時にそこにあったのだ。そして、何が奇跡的かといえば、それから36年を経た現在、その音楽がさらに熟成されているだけではなく、まるで瑞々しさを失っていないという事実だ。この夜のオーディエンスの多くは、そんな彼らの音楽から感じられる生々しいグルーヴから、極上のエネルギーを享受したことだろう。筆者自身も、音楽を活力としながら日々を生きていくというのはこういうことではないか、と感じさせられた。
ザ・ブラック・クロウズの東京公演は、本日、4月15日も同じくZepp DiverCity Tokyoにて行なわれる。今回はオープニング・アクトとしてアメリカ産のシューゲイザー系バンド、ジ・アステロイドNo.4が出演しているが、彼らのステージも独特のムードを持った魅力的なものだった。ロックンロールの歴史を愛し、未来を信じているすべての人たちに、この機会を見逃してほしくない。
文◎増田勇一
撮影◎土井政則
当日券:https://www.udo.jp/news/2221







