【ライブレポート】サカグチアミ、新しい旅のスタート「私の曲だけどみなさんの曲です」

2026.02.05 13:30

Share

坂口有望からサカグチアミへ。1月30日、渋谷duo MUSIC EXCHANGEで、改名後初のバンドワンマンライブを観た。最新EP『名前』は、変わる決意と変わらぬ熱意をしっかり詰め込んだ、はじめの一歩だった。その思いを直接確かめられれば、今日のライブは大成功だ。

エレクトリックギターを抱えてフロントに立ち、すうっと息を吸い込んでおもむろに歌いだす。バンドがすぐにあとを追い、明るいアップテンポのシャッフルビートがはじける。『名前』からの1曲目「歌を歌わなければ」で観客のハートをぎゅっとつかむと、「好-じょし-」「XL」と代表曲連発でスタートダッシュをばっちり決める。お立ち台に駆け上がり、クラップを求め、「今日は最後までよろしくお願いします!」と呼びかける。アコースティックギターに持ち替えて「WALK」へ、ゆったりムードもいい感じだ。メンバー全員、オシャレなセミフォーマル風の黒い衣装で決めている。若さと大人っぽさが共存する、かっこいいバンド。

「カタカナになりましたサカグチアミです。最後まで全身全霊で歌っていきますし、終わるころにはカタカナのサカグチアミが、そしてあなたがあなた自身をちょっと好きになって帰ってもらえたら嬉しいです」

未音源化曲「裸」は、一番はアコースティックギター、二番はバンドと共に、自分自身を愛する大切さを真摯に歌い上げるスローバラード。続く「厚底」は複雑なリズム、エフェクティブなギターを添えたバンドならではのアレンジで、後半のノイジーな盛り上がりが凄い。アコースティックもいいけれど、バンドだと表現力の幅と感情の深みがぐっと増す。サカグチアミにはバンドがよく似合う。

「優柔不断な私は、毎朝私服を決める時にLINE占いのラッキーカラーを見るんです。普段はそこ以外は見ないけど、今日は大事な日やから見ようと思ったら、“下手にしゃべらないほうが吉”と書いてました(笑)」

滑り知らずのトークで盛り上げて、ここからはメンバー一人ずつとセッションしていく小編成コーナーへ。一番手はどんなときもニコニコ笑顔のドラマー、同い年の松浦綸で、曲はライブだけで聴ける人気曲「絆創膏」。サカグチがちょっとしたケガをした時に、松浦が実際に絆創膏をくれた時があったらしい。「これからも、絆創膏をくれる人を好きになるのかも」。ちょっとしたエピソードと、ウィンドチャイムやシェイカーを使ったアコースティックなアレンジが、恋の終わりの切ない情景を色鮮やかに浮かびあがらせる。

二番手はバンド内最年長、ベースのマサくんこと齋藤太陽(まさあき)。トークでは「サイコォウ!」という口癖を真似して笑わせつつ、一転して歌はどこまでも切なく愛しく美しく。曲は「サイレント」。鍵盤を弾きながら歌うボーカルに、もう一つの声のように寄り添うベースが優しい。最後は唯一の年下メンバー、ギターの西尾瞭(りょう)を迎え入れ、「好きな県は?」「大阪」「そんなメジャーなところじゃなくて」「じゃあ群馬」と、謎の質問コーナーを経て(群馬から来た人にピックをプレゼント、というオチ)、未音源化曲「サニーサンデー」を初披露。恋の喜びを照れながらもまっすぐに歌う、心あたたまるラブソング。嬉しいのになぜか戸惑いがにじむような、サビのメロディが秀逸。ライブの人気曲になりそうだ。

「ここからみんなで、私の大事な曲たちを演奏したいと思います」

遠くは山口、沖縄から。この日のために駆け付けたファンとコミュニケーションを取りながら、ライブは早くも後半へ。みなさん踊るなら今ですよ、と煽りながら、「あっけない」の軽快なリズムに乗ってステージを右へ左へ。「サイコォウ!」と合いの手を入れながらぐいぐい飛ばす。七色のミラーボールの下で「アンババババランス」を、ぐっとダークでハードなロックチューン「セントラル」を、そして『名前』の1曲目を飾った「黒蝶」を。音源のアレンジも良かったが、ライブで聴く「黒蝶」はその何倍もパワフルでエモーショナル。この日の黒い衣装は、この曲のためだったのかとふと思う。命の儚さと尊さをまっすぐに歌う、新生サカグチアミの象徴になる曲。まっすぐ前を見つめて歌う、凛とした表情がとてもいい。

「坂口有望として10年間活動してきて、第二章へ進むために名前を変えることにしました。すごく前向きな理由です。私はこうして目の前で歌を届けるのが一番好きですし、末永く音楽人生を送りたいなと思って書いた曲です」

私の曲だけどみなさんの曲です。あなたの名前を呼んでくれる人を、ずっと大切にしてください──同じ事務所の大先輩・奥田民生アレンジによる『名前』のタイトル曲を、タンバリンを叩きながら力強く歌う、その声を手拍子が支える。漢字でもカタカナでも、その名前を愛してくれる人がこれだけいる。最後の曲、『名前』からの「Life Goes On」の長いリフレインでは手振りと大合唱が湧きおこる。「なんか泣きそうやわー」と、泣き笑いの表情を浮かべながら歌い続ける。誰もが誰かと支え合う、優しい世界。

鳴りやまない手拍子に呼び戻されて、アンコールは2曲。中3の時に書いたという「空っぽの世界が僕はきらいだ」は、何年経っても色あせない青さと主張と純粋さを閉じ込めた曲で、いつ聴いても心ざわめくエバーグリーンな曲だ。そして嬉しいお知らせ、春のワンマンツアー「Mitsuke I tour」の開催と、ラブソングを集めたEP(リリース日未定)の報告に、待ってましたの大歓声が上がる。

「自分の曲がお薬みたいに作用して、ちょっとでも痛みが和らいだならいいなと思う反面、いつか自分の曲を聴かなくなるぐらい、幸せになってほしいです」

そしたらまた懐かしんで、ライブに戻ってきてください──そんな思いをそのまま歌詞にした「radio」を元気いっぱいに歌いきって、全17曲で1時間50分に及ぶライブは笑顔の大団円。『名前』で表現した等身大のバンドサウンド、歌詞に込めた決意表明は、ライブでこそ説得力をぐんと増した。可愛らしさと力強さを兼ね備えた歌声は、変わらぬ魅力としてそこにあった。次の予定がどんどん決まっていることも嬉しい。まだ見ぬ幸せの風景を探して一歩ずつ、サカグチアミの新しい旅が始まった。

取材・文◎宮本英夫

◾️<サカグチアミ「Mitsuke I tour」>

2026年
5月16日(土)愛知県・名古屋CLUB UPSET(開場17:30 / 開演18:00)
5月17日(日)大阪府・梅田シャングリラ(開場17:30 / 開演18:00)
5月29日(金)宮城県・仙台LIVE HOUSE enn 2nd(開場18:30 / 開演19:00)
5月31日(日)北海道・札幌PLANT(開場17:30 / 開演18:00)
6月13日(土)広島県・広島CAVE-BE(開場17:30 / 開演18:00)
6月14日(日)福岡県・福岡INSA(開場17:30 / 開演18:00)
6月27日(土)香川県・高松DIME(開場17:30 / 開演18:00)
6月28日(日) 兵庫県・神戸VARIT.(開場17:30 / 開演18:00)
7月4日(土)東京都・SHIBUYA WWW X(開場17:15 / 開演18:00)

▼チケット料金
自由 前売¥5,000 / 当日¥5,500(税込)

▼オフィシャルファンクラブ「Cheer Ami Club」先行
受付期間:1月30日(金)21:00~2月8日(日)23:59
受付URL:https://sma-ticket.tstar.jp/artist/sakaguchiami

◾️EP『名前』
配信:https://lnk.to/namae
特設サイト:https://www.sakaguchiami.com/2026/

▼収録曲
1.黒蝶
2.名前
3.Life Goes On
4.歌を歌わなければ