【ライブレポート】未完成ブレイブ、16歳のYUの未知なる可能性「心の変化とか成長の姿を描いている」

2025.10.27 17:09

Share

『MIKANSEI Project』第二弾アーティストのYU率いる未完成ブレイブが10月25日(土)、東京・原宿RUIDOにて<未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~>を開催した。16歳のYUが表現者として、人として絶えず進化しながら、未知なる可能性を感じさせた同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

大人でも子供でもない年代を生きる未完成なクリエイターの、今この時にしか生み出せない感情をそのままに届けるプロジェクトが『MIKANSEI Project』だ。その第二弾アーティストである未完成ブレイブが<2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~>を開催した。2025年春には、プロジェクトの中核を担うYUが高校に進学するなど、新たな世界へ一歩踏み出した未完成ブレイブ。ティーンエイジャーならではの瑞々しさと新境地で得た想いを煌めかせるだけでは飽き足らず、デビューからの2年間で磨き上げてきた実力を発揮し、フレッシュかつ成熟したステージを作り上げた。

暗闇に姿を現したYUは、今にも泣きだしそうな声で「Dawn」をポエトリーリーディング。喪失も希望も葛藤も内包した声が、儚くも力強く場内にこだましていく。オーディエンスの心を掌握しきると、ゲーム『泡沫のユークロニア』のオープニングテーマ「Dawn」へ。未完成ブレイブの神秘的な世界観を反映した逆光の照明は、パフォーマンスに込められる情報量を削ってしまうので、ともすれば不完全な表現になりかねない。しかし、YUは計算し尽くしたモーションと感情を捕まえた歌声で、器用に楽曲をみせていく。そして、本来であれば大きな役割を果たす表情を、想像力を掻き立てるエッセンスのひとつにしてしまうのだ。彼女の表現力と観客の感性が常に交差しながら、新たな色を見つけていくのが未完成ブレイブのライブでもある。

ノリのいいビートに乗せてクールなオーラを放った「心像」、ストーリーテーラーとして情景を描きあげる「花と嘘」。どんな曲でもテーマや心情や色に合わせて、即座に表現をチューニングしてしまう技量は圧巻だ。その後も透き通る声質が印象的な「青く染める」、軽やかなステップで魅了する「黒い砂浜」と持ち前のパフォーマンスを輝かせた。

「変わっていくもののなかで、変わらない想いを思い出させてくれる、そんな楽曲です」と告げ、デビュー曲の「DOKU」へ。ポエムを読み上げるときの抑揚も声色も温度も、おそらくこの2年間で変化してきたのだろう。かつての情緒を反芻するかのように言葉を編み上げると、その熱を引き連れたまま、歌とダンスで「DOKU」を披露。“DOKU DOKU”とリズミカルに体を揺らし、余裕たっぷりに展開されていくステージングは、しっかりと着実に進み続けてきたYUの軌跡を感じさせる。そればかりか、現在のYUが過去のYUを再演するような、不思議な空気を生み出していた。「輪郭線」でブルーのペンライトが左右に揺れると、いよいよライブも折り返しだ。

ここでゲーム『泡沫のユークロニア -trail-』のタイアップゾーンへ突入。オープニングテーマとなった「deep blue」では、一段と語り部のように物語が紡がれていく。“君がいる”と差し伸ばされた手の、なんと精悍なことか。華奢な体格からは想像のつかないエネルギッシュな歌唱が、会場を温かく抱きしめていった。エンディングテーマとなった「ありふれた夜に」では、祈りのように歌詞が刻まれていく。清廉で凛々しいトーンは、これでもかというほどの慈愛に溢れている。だからこそ、“何気ない今日も愛していこう”というメッセージが、寄り道することなく真っすぐに飛んできたのだろう。

「モニターで会場の様子を見ていたら、みなさんが来てくれていることに感動しちゃって。本番前に、めちゃめちゃひとりで号泣してました」──YU

MCでは本番前の楽屋でのエピソードを照れくさそうに明かしたYU。そして、渋谷ファッション&アート専門学校の学生に制作してもらったという衣装についても触れた。その衣装は、前回のクールでカッコいいスタイリングとは打って変わって、今回はまるでファンタジーから抜け出てきた魔法使い。最近のリリース曲がインスピレーション源となっているようで、緑とピンクのタータンチェックに紫のフリルがあしらわれたワンピースには、三日月のモチーフが取り入れられていたり、大ぶりのリボンがついていたりと、レトロポップな作風が反映されている。

「未完成ブレイブの曲って、YUの心の変化とか成長の姿を描いているんですけど、衣装も想いと合わせてコンセプトを変えていて、次の楽曲は今の衣装と合っているんじゃないかなと思います」──YU

との言葉から「月を歩けば」へ。吐息たっぷりに歌を聴かせてみたり、起伏をつけて遊んでみたり、音楽と楽しそうに戯れていく。飛び跳ねながら自身を解放する姿は、“ナンセンスな世界”で削られていた少女が“大きな一歩”を経て、自分なりに楽しむ術を見つけたことを謳うようだ。抜群のグルーヴで「夜の隅で」「迷いgirl」と乗りこなしてラストスパートをかける。

ダンスがキャッチーな「ヨウカイ」で熱狂を巻き起こし、未完成ブレイブの前身である未完成モノローグ「カルメン」を抒情的にセルフカバー。この期に及んで、まだまだ余力を残しているのだから、YUの底力は計り知れない。最後には未発表曲の「Hold on」をドロップし、重めのロックサウンドで華々しくフィナーレを飾ったのだった。

アンコールでステージに舞い戻ってきたYUは、いきなり『泡沫のユークロニア』のエンディングテーマである「生きて、愛して」を投入。ファンに対する感謝の気持ちをたっぷりと詰め込み、豊かに歌い上げていく。ラストでは、舞台上に用意された椅子に腰かけながら、羊文学「more than words」とASA「もう頑張らないで」をアコースティックギターの弾き語りでカバー。言葉以上の想いを手渡すと共に温かな優しさで包みこみ、じんわりと愛が染みるハッピーエンドで結んだのだった。

表現者として、人として、絶えず進化しながらも、いまだ未知なる可能性を感じさせるアーティスト、未完成ブレイブ。パフォーマンスが洗練されてきている一方で、活動2周年を迎えたばかりの高校1年生なのも、また事実。未知数のポテンシャルを秘めている彼女が、どのような物事に心を揺らし音楽へと昇華していくのか、楽しみにしたい。

取材・文◎坂井彩花

 

■<未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~>2025年10月25日(土)@東京・原宿RUIDO セットリスト
01 Dawn
02 心像
03 花と嘘
04 青く染める
05 黒い砂浜
06 DOKU
07 輪郭線
08 deep blue
09 ありふれた夜に
10 月を歩けば
11 夜の隅で
12 迷いgirl
13 ヨウカイ
14 カルメン
15 Hold on
encore
en1 生きて、愛して
en2 more than words
en3 もう頑張らないで

 

■「迷いgirl」
2025年10月24日(金)配信開始
配信リンク:https://mikanseibrave.lnk.to/mayoigirl
Lyrics & Music:Shun Aratame
Arranged:Naoki Tani
Label:asistobe

 

関連リンク
◆未完成ブレイブ オフィシャルサイト
◆未完成ブレイブ オフィシャルTikTok
◆未完成ブレイブ オフィシャルInstagram
◆未完成ブレイブ オフィシャルX
◆未完成ブレイブ オフィシャルYouTubeチャンネル