松崎しげるが毎年9月6日(96＝クロの日)に主催しているライブイベントが＜黒フェス-しげる祭-白黒歌合戦＞だ。毎回ジャンルも年齢層も幅広い出演者が話題だが、2025年も粒ぞろいのメンバーを集めて豊洲PITで開催された。同フェスのオフィシャルレポートをお届けしたい。

2025年も出演者は大御所やバンド、アイドルやマジシャンなど様々。親分の松崎しげるをはじめ、＜黒フェス＞皆勤賞を続けるももいろクローバーZ、重鎮の加藤登紀子、手越祐也率いるバンドT.N.T、ロックシンガー大友康平(HOUND DOG)、50歳でチャレンジしたオーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』ファイナリストの歌心りえ、WACK所属のアグレッシヴなアイドルグループASP、『トロット・ガールズ・ジャパン』参加メンバーで構成されたsis/T、HONDAとコラボしたサンリオキャラクターKuromi、マジシャンのGO、オープニングアクトにビジュアル系演歌歌手の花見桜こうき、今年もユニークな面々である。

また、豊洲PITの場外エリアでは 日本橋たいめいけんや焼き鳥 信玄などの有名店がスタンバイ。豪華なフェス飯も堪能できる。

開演時間は16:00。ほどなくフェスが開幕し、オープニングアクトとして花見桜こうきが白い衣装でステージに登場。「皆さん、こんにちは～！ まだ仕上がってないですよね？ バトンをつないでいきましょう！」と会場の一体感を高める。ムード満点の1stシングル「アイラブ東京」、西城秀樹の代表曲「ヤングマン」を歌唱。堂々としたパフォーマンスと華のある歌声で場内を温めた。

そして司会を務める伊津野亮と中村葵が登場。フェス本編のトップバッター加藤登紀子へつなげた。早いタイミングでの重鎮降臨にフロアが沸き上がる。松崎しげるとほぼ同期だという加藤登紀子は、開演前の囲み取材で「やっと呼んでもらえたわ！」と松崎に突っ込むひと幕も。オープニングナンバーの「百万本のバラ」は、社会情勢が盛り込まれたラトビア歌謡が原曲だが日本語詞は物悲しさもあるラブソング。フロアでは同曲に合わせて赤いペンライトが一斉に点灯した。これはモノノフ(ももいろクローバーZのファンの総称)の粋な計らいであり、会場全体で作り出す温かい空気は＜黒フェス＞ならではのもの。続く「サルダーナ」は脱走した競走馬がモチーフのユニークな楽曲だ。2025年は時間の関係で2曲のみとなったが、曲終わりのトークでは「来年はもっと！」と意欲をのぞかせた。

ガラリと空気が変わって、二番手のASPへ。黒を基調としたコスチュームでパンキッシュなナンバーを次々に披露。「NO COLORS」「BA-BY」など攻撃的なナンバーを次々と披露していく。＜黒フェス＞出演は2022年以来、2回目ながら、その激しいパフォーマンスがフェスを前半から盛り上げた。

sis/Tは、杏里の「悲しみが止まらない」、ラッツ&スターの「め組の人」など、若い世代にも人気の昭和の名曲を華麗なハーモニーで披露。2024年の初出場時はデビュー前ということもあって緊張気味だったメンバーだが、2025年は存在感を発揮。持ち歌である「DING DONGください」「愛のバッテリー」のメドレーによるラストナンバーでは、ダンサブルに場内を盛り上げた。

sis/T同様に『トロット・ガールズ・ジャパン』出身の歌心りえがステージへ。1曲目の「200倍の夢」からその歌声で場内を包み込み、2曲目には松崎しげるの盟友で2023年に惜しまれながら世を去った大橋純子の「たそがれマイラブ」、さらに本田美奈子の「つばさ」といったカバーを聴かせた。＜黒フェス＞初参戦の歌心りえは、松崎が審査委委員長を務めた『トロット・ガールズ・ジャパン』をきっかけに世に出たアーティストだ。MCでは松崎に感謝の言葉を述べ、ラストは同オーディションでも歌心りえの実力を知らしめたさだまさしの「道化師のソネット」へ。圧倒的な表現力と聴く人の心に寄り添う歌声が会場を振るわせ、＜黒フェス＞に温かい空間を作り出した。

インターバルでは、サンリオキャラクターのクロミちゃんが松崎とsis/Tにエスコートされてステージに登場。クロミちゃんとHONDAのコラボによって黒いバイクが作られたことが語られるなど、クロミちゃんと＜黒フェス＞の相性抜群の連携も、このフェスらしさのひとつだ。

中盤を引き締めたのはT.N.T。手越祐也(Vo)、kyohey(Dr)、Furutatsu(B)からなるロックバンドだ。ソロとして出演した過去はお茶目なMCで観客を沸かせた手越だが、今回はそのキャラを封印。最新デジタルシングル「Starting Over」をはじめ、3曲目には新曲「I Don’t Care」を披露するなど息をもつかせぬ全7曲の熱演となった。

開演前の囲み取材では「今年はロックバンドとしての参加なので、どう迎え入れてくれるのか楽しみ」と語っていた手越だが、その熱いステージにはモノノフも拳を振り上げ、演奏終了後に“T.N.Tコール”が起こったほど。手越祐也は「もうね……最高！」と観客に笑顔を見せた。

ロックに沸く会場の熱をさらにブーストさせたのが大友康平だ。大友色に染めて歌い切った和田アキ子の名曲「あの鐘を鳴らすのはあなた」に唯一無二の歌声が響き、圧倒的な本物の風格を漂わせる。そして、2025年にデビュー45周年を迎えたHOUND DOGの楽曲から「BRIDGE」や「ff」といった代表曲を連発。誰もが知る名曲には場内の合唱も。その声を受け止めながら終始パワフルなステージが展開された。

トリ前は、ももいろクローバーZ。＜黒フェス＞皆勤賞の彼女たちにとって9月6日は「クリスマスのような存在」だとのこと。また、松崎は囲み取材で「モノノフたちはどんな出演者も受け入れてくれて素晴らしい！」と絶賛していたが、フェス全体を盛り上げるモノノフはもはや＜黒フェス＞に必要不可欠だろう。そしてモノノフの声援が会場を支配した1曲目は、アッパーな「Event Horizon」。続いてドラマチックな「境界のペンたグラム」、さらに＜黒フェス＞のテーマソングのような「黒い週末」へ。百田夏菜子、玉井詩織、佐々木彩夏、高城れにの全力パフォーマンスが圧巻だ。後半のMCで百田は「残りはたくさんないんですけど…」と名残り惜しそうに語り、ラストスパートへ。「GODSPEED」と「走れ-ZZ ver.-」で最高のクライマックスを描き、会場中に笑顔を振りまいた。

大トリの松崎しげるの出番を前にマジシャンGOが登場。華麗なマジックで会場の空気を整えた。マジシャンGO曰く、タイムスケジュールを知らされて「僕の出番はももクロの後なんですか？」と焦ったそうだが、松崎はそれでも順番を変えなかったとか。適当に電卓に入れた数字を足していくとなぜか本日9月6日を表すなど、＜黒フェス＞ならではのマジックで幕間を楽しませてくれた。

そして御大・松崎しげるの登場だ。その1曲目は2024年秋に亡くなった友・西田敏行の代表曲「もしもピアノが弾けたなら」だった。「あの笑顔、あの表情や声が、甦ってくる」と歌い続けることの大切さを語った松崎。続く「夢に隠れましょ」は、西田と一緒に歌うために松崎が作った楽曲だ。ステージ上のビジョンにはレコーディング風景収録映像が流れ、まるで西田と松崎の共演のような演出となった。この後に松崎は、西田の故郷である福島が東日本大震災によって甚大な被害を受けたことに対する思いを吐露していたことを語り、「人は必ずまた立ち上がれる」というメッセージを込めた「スタートライン」を歌唱した。パワフルに歌うというより、語りかけるように届けることにフォーカスしたステージだ。ラストはもちろん「愛のメモリー」。魂の歌に包まれ、2025年の＜黒フェス＞も感動の中で幕を閉じた。

「少なくとも20回は続けたいよね」とはMCで松崎しげるが語った言葉だ。毎年9月6日に開催される＜黒フェス＞はまだまだ続く。

関連リンク
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